とある患者さんに、医者へのお礼のことを相談された

私自身は、自費診療という形をとったり、お礼をもらわないのが当たり前の保健診療に勤めていることもあって、お礼は原則的にもらわないし、医者以外の稼ぎがあるから、お礼の必要もないが、基本的には、「お礼」賛成論者だ

これを『ここが変だよ、日本人』という番組で言ったら袋叩きにあったし、そのほか、中山治という私の批判者(この人は、属人思考がダメで属事思考をせよと言っている人だ)が、こんなことを言っている人の教育理論を信じられない証左だと本で書いていた(正確な引用でないが、おおむね、そういうことを言っていたはずだ)

私がお礼に関して賛成論なのは、おおむね二つの理由からだ

一つは、金持ちが高く払うことになるということがある

赤ひげにせよ、武見太郎にせよ、貧乏人からは金をとらず、金持ちからはたくさん金を取ったとされている(本当かどうかは知らないが)

今は、貧乏人でも2割も負担させられ、およそタダとは言い難いが、日本のように金持ちでも保健診療を使う変な国では、お礼くらい払わせないと悪平等になってしまう

ただ、ここで大前提になるのは、お礼を払う金持ちがいい医療を受けられるかどうかだ

何をもっていい医療というかはわからないが、お礼の力で手術の順番を早くしてもらうとか、入院予約を早くという程度のことはあるかもしれない

ただ、お礼などを使わなくても、政治力で、そんなことを可能にするゴリ押しの人もいる

一つだけ言えることは、お礼を払わなかったからと言って手を抜くような医者は、まずいないということだ

訴訟が珍しくなくなってきているし、自分の腕の評判を落とすようなことをわざわざやるとは思えない

高額のお礼をもらうと多少のプレッシャーを感じるかもしれないが、どっちにせよ、社会的地位の高い人の手術などの場合、失敗したら強い弁護士が出てくるだろうし、いろいろな批判も受けかねないので、お礼に関係なしにプレッシャーはかかる

要するに、金持ちが「お礼を払えば、いい治療が受けられる」という幻想をもつことに意味があるのだ

逆に言うと金がないならお礼をする必要などないということは強調しておきたい

もう一つは、医者が腕を上げるインセンティブがないということがある

腕がいいほど、お礼がもらえるなら、医者のインセンティブにはなる

ただし、日本の場合、腕がいいほどお礼が多いのでなく、肩書が高いほどお礼が多いという問題はある

ようやく、ネットなどで、医者の力量の評価がされるようになってきたから、もう少しまともなお礼のシステムになるかもしれない

実は、医者というのは、勉強するほど金がかかる

私のように副業をやっていたら別だろうが、バイトも禁止、薬屋の接待も禁止などということでは、勉強する余裕などとても出てこない

勉強して腕がよくなれば、お礼がたくさんもらえるというのは、悪いことと思えない

それにしても、お礼のはずなのに、前に渡したがる人が多いのはどういうことなのだろう?

これでは、賄賂と思われても仕方がない