驚いたこと(そういう可能性もあると思っていたが)に、昨日のメッセージの主は、「僕はこれでも東大の経済に在籍していて学部3年次に会計士の論文試験に合格している。」(引用終わり)とのことだった

その後の文章で、この人の価値観では、別の大学から東大の法科大学院の既習に現役合格する人間が「できが悪い」(経済の人間にはわからないだろうが、法学部にいれば、どのくらい入るのが難しいのかは多少はわかるはずだ)と断じている。この人がものすごく、どこの大学に入るかが大事で、それ以降の教育なんかはどうでもいいと考えている人間であることも分かった。ためしに未修でもいいから、東大のローを受けてみたらいかがだろうか?

今のご時世、日本では会計士で生き延びていくのは難しいから、東大の肩書より、ハーバードのビジネスにでもいくほうが(最近、慶應からそういう経路で、ものすごい社会的成功者になった人にあったが、びっくりするくらい腰が低かった)、よほど社会ではものを言う肩書だろうし、どこかの監査法人に入れば、予想外に上下関係が厳しいこともわかるはずだ

私もとある監査法人の雑誌に連載をもっていたこともあるし、そこで出会う会計士はみんな腰が低かった。日本でトップの監査法人のトップと対談したことがあるが、とても物腰のやわらかい、私のような若輩者にも低姿勢な、仁徳を感じさせる人だった。

それと比べて、3年で会計士に合格しようと思うと、ここまで社会のことがわからない人間になったり、まともな口のきき方ができなくなるのかと思うと、びっくりした。1年くらい送れてもいいから、まともな社会性を持った人のほうが、生き延びる気がする

実際、前にも書いたが、浪人経験のある人のほうが、社会で上手に生き延びるし、医学部を出た人を見ても、いろいろな形で勝ちぬいている人が多い

私は、受験生当時、1年でも早く、映画監督になりたかったから浪人はしたくなかったが、今、思うと浪人経験をすれば、もう少し社会性が身についていたかもしれないと思う

前に、日本で、飛び級を認めたら、受験勉強以外のことを勉強しなくなる懸念を書いたが、この学生の口のきき方や社会に対する認識を見ていたら、ますますその信念が強くなった

もちろん、私は、「あんた自身は客観的定義に基づく社会的成功者と言えるのか。恥ずかしくてとても言えないだろう。水道橋博士といい勝負ではないか」と言われるように、社会的成功者とは思っていない。水道橋博士のほうが収入も多いし、影響力も大きいかもしれない

ただ、テレビ局に嫌われても、どうにか生きていけるし、本も出せるし、好きなことも言える。

おそらく、なんらかの陰謀で、医者の免状が取り上げられても食べていける自信はある

映画を作るためには、どんな人にでも頭を下げるし、まともな敬語も使う

そういう生き方が好きなだけだ

私は偉い人になるより、自由に生きるほうを選んだだけである

この人も、持ち前の「できの良さ」で社会を生き抜くのかもしれないし、大学の受験勉強の後は資格試験の受験勉強ばかりやって、社会のことがまったくわかっていないために、頭を打つのかもしれない

ただ、組織に頭にきて、自分で生きるということになった際に、ある程度、社会に関する知識や教養のようなものがないと生きれないことを老婆心ながら心配しただけだ

さて、いっぽうで、社会に出た人からこんな嬉しいメッセージをいただいた

「高校時代から和田さんのファンです。
私は現役、一浪と慶応を目指しましたが、もとがバカなのと早くラクになりたいので
結局、都内の私大に進学しました。
近頃は和田さんの思考は自分の血肉になってきたと勝手に自負しています。
おかげさまで、職場でも重要な立場をまかされるようになりました。
東大や早慶上智の社員より立場は上になりましたが、他社との交渉後の会話や昼食会
または飲み会などの席では、気が引けます。バカとブスは東大、少なくとも早慶あたりは行っとくのは、真理です。私の考えでは、東大なら三浪、早慶なら二浪くらいまでしても十分のちにペイできる気がします。」(引用終わり)

こういう謙虚さが、この人が社会で成功してきた秘訣なのだろうし、(持たなくてもいい)負い目があるから頑張れる気がする

学歴コンプレックスをエネルギーに出来る人と、そのせいでいじけた人間になる人がいるのは、私が観察する限り事実だ

私が、受験勉強法の本以外に勉強法の本や、大人のためのメッセージ本を書き続けているのも、どちらかというと前者の人を応援したいからだ

私は、学歴至上論者ではない

ちゃんと勉強をすることに意義があると考えているし、大学に入ってから、社会に出てからの勉強が大事だと思っているから、教授になったとたんに勉強しなくなる東大教授がクズだと思っているのだ

ただ、だからといって、高校生、受験生のときに勉強しないでいいわけではない

やはり基礎学力があるほうが、あとからの勉強に有利だ

そう思っていると、たまたま、いつもメッセージを下さる方から、私は大学を出てからも努力していると嬉しい言葉をいただいた

実際、受験のときより、留学中の3年間のほうがよほど勉強をしたし、今は映画の勉強に忙しい

(内藤誠監督に戴いた『偏屈系映画図鑑』はとても面白いし、教養あふれる本だ。昔の、高学歴時代の映画監督は、実によく勉強していると感心した)

そのメッセージでは、「東大までの人になるな」というある種の励ましも伝わってきた

くだらないクズ男にかかずらわっているより、自分の勉強を続けたい