香山リカvs橋下徹の論戦で、ネット上のコメントでは、、「精神科医が政治を語るな」 「精神科医が政治を語る暇があったら患者の一人でも診察しろ」 「精神科医が政治の場に出るのはオカシイ」 「精神科医が診察もしていない橋下徹を語る資格などない」 「精神科医は自分の仕事さえしていればいい。政治に余計な口出しをするな」 「政治は政治家に任せるのが当然」というコメントが並べられ、それはおかしいのではないかというメッセージをいただいた

香山リカ氏については、テレビに出ているだけあって、パチンコで救われる患者もいるというような発言など、いくつか疑問点はあるが(ただし、私もそういう人はゼロではないとは思う。ただ、犠牲者のほうが圧倒的に多いから、それで救われる人が仮にいたとしても、やはりパチンコの換金は禁止すべきだと精神科医としては思うし、その人が大金持ちでないのなら、お金のかかるパチンコではないもので救われる道を探してあげるのも精神科医の仕事だと思うが)、それは精神科医としての論争点であって、政治的なスタンスについては、発言は自由だと思う

基本的に私は職業に貴賎はないと考えている

基本的に、どんな人間でも政治を語っていいというのが、民主主義の基本的スタンスだろう

ただ、影響力の大きさということはあるし、マスメディアでの発言には責任(ブログだってそうだが)は持つべきだろう

一般庶民が酒場で政治を語るのなら、大した影響がないから、好きに愚痴だってこぼしていいだろうし、人の悪口だって許されるだろう

しかし、メディアで、たとえば勝谷氏のように、私の人格否定の発言をするのなら、それに対して責任をもつべきだろう

弁護士に聞くと、名誉棄損すれすれとのことだが、アメリカでなら、民事訴訟の要件には十分なり得る

ネットで反論すればいいというのも、日本の場合はネットに対するテレビメディア、マスメディアの影響力が大きすぎる

現実に、ネットの会社がこんなにテレビで広告を打つ国も、ブログの人気順位がみんなテレビタレントが上位を占める国もこの国くらいである

パチンコ容認派の精神科医はテレビでコメントを求められるが、パチンコ廃止派の、帚木 蓬生氏のような人は、立派な臨床家である上、さまざまな文学賞も受賞されているが、テレビのコメンテーターとして呼ばれることはない

私のようにキー局のテレビで(大阪の良心的な関西テレビのような局をのぞけば)コメンテーターとして呼ばれることのない人間の立場で言わせてもらうと、自分の影響力を考えない無責任な人間に、(マスメディアでは)政治を語ったり、人格攻撃をしてほしくない

「明日か明後日自殺する人のblogです
警察などにも連絡してipを開示してかれを拘束するように何度もメールしましたが無駄でした
blog読む限り間違いなく本気で自殺は決行されるでしょう
(略)
http://blog.livedoor.jp/zar2012/」(引用終わり)

私も、この方が自殺される危険は大きいと考える

「死ぬ、死ぬ」と言っている人間は死なないというのは、まったくの嘘で、通常の人よりはるかにリスクが大きいというのは、私の尊敬する精神科医の高橋祥友氏の話であるが(この人は無責任な発言をしたくないことで、原則的にテレビは自分から断っているそうだ)、精神科医の常識である

精神保健福祉法という法律で、自傷他害のおそれがあるときは強制入院させることができるという規定がある

通常は、警察が市民からの通報を受け(警察官は、その疑いのある者の通報義務がある)、精神保健指定医2名の診察が一致した場合、都道府県知事または政令指定都市の市長名で入院させることになっている

どう考えて、疑いはあるはずだから、警察が通報義務を怠っているのは問題だ

このメッセージの主は、連絡した警察の名前を覚えておいて、万が一亡くなった場合には、当該の公安委員長なり、マスコミなどに知らせるべきだろう

しかし、こういう話を聞くと、本当に精神科医は無力だと思う

自分の患者さんについては、この23年間(最初の1ケース以来)自殺が出ていないのが自慢だが、こういう話にはいかんともしがたい

でも、自殺は、みんな自己決定と思っているが、高橋氏もいうように、完全に死ぬ気の人はいないし、そこで踏みとどまればしっかり生きていける人が大多数だ

みんなで見守って、一人でも自殺を減らすべきなのに、警察がこの体たらくである

やはり私は警察は民営化にすべきだと思う

民営なら、人の命がかかわっていたら、もう少しちゃんととり合うだろう

それにしても、生活保護以上に、まともに仕事をしない(パチンコの換金も取り締まらないし、非合法黙認が多すぎる)警察に税金を払うのがもったいなくて仕方がない