おそらく、ほうぼうの人がブログで書いていることだろうし、ネタとしてはとてもありきたりのことだが、山中教授がノーベル賞をとった

ノーベル賞というのは、ある研究が、後々、素晴らしいものだと後世の学者に評価されて取るものだから、2004年ごろの研究(対象の論文は2006年のもののようだ)で、ノーベル賞受賞にいたったのは、ものすごいスピードだ

ただ、科学が進歩すると、こういうことは増えるのかもしれない

島津製作所の田中さんが取った時も思ったが、現役の研究者が賞をとると、お金も集まりやすくなるし、その研究が進む。研究の金集めの難しい日本のような国では、こういうことが増えると、結果がありがたいものになる

何十年も前のバリバリの研究者だった頃の研究でノーベル賞を取った人は暇なので、よけいなことをする

日本人はノーベル賞を取った人のいうことは、自分の専門外でもすごいと思う単細胞な人が多いので(政治家にもそれが多いし、官僚はそれを利用しようとする)、研究ができなくなってから、肩書だけもらうとろくなことにならない

江崎玲於奈という人は、自分が東大を出ているくせに、詰め込み教育だから日本はノーベル賞が出ないと言った

そして教育に関してはろくな実績もないのに(彼の弟子ですごい人がいるのだろうか?彼が学長をやった大学の教育がよいと言えるのだろうか?)、教育改革国民会議の座長になって、ゆとり教育の旗振り役になった

実際、田中さんにしても、山中さんにしても、現代化カリキュラムといういちばん濃密なカリキュラムを小中学校時代に受けさせられ、共通一次試験で5教科7科目も勉強しないといけない世代の人間だ

私自身、共通一次試験は、数学や物理などに突出した人間を名門国立大学から排除することになるろくでもない試験と思っていたが、こういう試験世代から、この手のユニークな人間が出ていること、そして村上春樹氏がとれば唯一の例外になるが、文学賞も含めて、すべて国立大学(に準じる学校もふくむ)出身ということを考えると、受験勉強で意外にいらない科目はないのではないかとも思ってしまう

実は、私はiPS細胞を作ったということは、ものすごい発送の転換だと思っている

ES細胞の開発が盛んだったころ、みんなが受精卵に着目していたのに、今大人になった細胞をもとに戻すという発想を思いついた(ほかにもそういう人がいるらしいが、さらにたった4つの遺伝子をいじるというものすごいシンプルなやり方で達成したということも含めて)ことはものすごい頭の柔らかさだ。受験勉強をしていても、頭が柔らかい人間は柔らかいのだ

山中さんが教育に対して余計な発言をすると思えないが、過去の人が取るのと比べると現役の研究者が取ることは、その研究環境を飛躍的によくする

この国の国益を考えると本当にありがたい

実際、オリンピックではスポーツ選手ばかりが取り上げられ、震災の後のボランティアでは芸能人ばかりが取り上げられて、子どもたちが勉強のできる人間に憧れなくなったらどうしようと思ったが、一過性にでも勉強ブームが起こるのは嬉しい

また、山中さんは親孝行で80歳の母親に報告したという話もしている

ついでに授賞式にも同行させてあげてほしい(体の具合が悪くなければ)

というのは、野球で甲子園に出て、母親を呼ぶのも、オリンピックに母親を呼ぶのも美談とされるのに、東大に合格して、武道館でやる入学式に母親を呼ぶとマザコンと呼ばれるからだ

ノーベル賞で母親が呼ばれたら、さすがにどこのマスコミも美談扱いするだろう

そういう点で世の教育ママを励ますことになる

さて、実は山中さんは、日本人のノーベル賞学者で、初めての医学部出身者だ(利根川氏は京大理学部)

いちばん偏差値の高い人間を集めながら、そして臨床もろくにやらずに研究ばかりやっているのに、ろくな研究がでないのが日本の大学医学部である

実は、基礎医学の分野ではそうでもないらしい

確かに日本のレベルが先進国のスタンダードとまではいかないが、ランセットやネイチャークラスの雑誌の日本人の論文の比率は4%くらいだそうだ。ところが臨床医学の最高峰のニューイングランドジャーナルだとそれが1%程度

日本の場合は、外国に例がないくらい大学に残る医者が多いし、入る学生の学力レベルは高いし、その上、国民皆保険のおかげで症例もずっと多い

それなのに、この体たらくは何だ

まさに大学の医局は賢い人間をアホにするシステムそのものだ

私は大学病院というのは臨床と教育の場にして、本格的に金をつけた研究所をたくさん作るべきだという考え方だ

山中さんの場合は、アメリカ留学後の大阪市大の研究環境があまりにひどかったらしいが、その後、運よく奈良先端科学技術大学院大学でポストを得て、いい研究ができたらしいし、実際、ここで事実上iPSを産み出したという

研究費で思い出したが、誰に聞いたか忘れたが、山中氏の研究費が2007年から5年で70億円ついたらしいが、その後のあてがなくて、金に奔走していたらしい

国も国だし、確実にもうかるのに、投資しようとしない日本の企業や金持ちはケチな上にアホとしかいいようがない

だから、きちんと金をつけた研究所があれば、日本だって捨てたものではないはずだ

IT,FTの次はBT(バイオテクノロジー)と言われる

金をかけていない割に日本はいい線をいっていて、現在開発中のアルツハイマーの治療薬だって世界に先んじているようだ

野田総理が受賞の記者会見にパフォーマンスで電話をかけて喜んでいたようだが、人気を取り戻したいなら、今年の内核機密費は全額山中氏の研究費に譲るくらいのことは言えないのか?

その上で、自民党時代のひどい機密費の使い方(毎晩銀座で飲み歩いている総裁候補もいたようだ)をばらしたら一気に人気が回復するだろう

もっとも、その金で接待を受けたのが当の民主党なのだろうが

あまりに連想することが多かった受賞だった(明日も続く)

ところで山中さんはエンジン01のオープンカレッジにも来ていただいたことがあるし、彼と親しい研究者(その人が京大に引き抜いたらしい)とも親しくさせてもらっている

私の知るいろいろなニュースソースで彼を悪く言う人がいない

マスコミは、ノーベル賞を受賞などしたら、誰にでもそうであるかのようにいい加減なことを書くが、研究者や文化人は足の引っ張り合いが当たり前の世界だ

そういう中で、うそを書かないこのブログで、私が悪い評判を聞かないというのは大したものだ

そういう点でも、嫉妬をしてしまう一人である

私が相続税100%論を書くと金持ちへの嫉妬という人がいるが、金持ちより、この手のすごい頭のいい人のほうによほど嫉妬するというのも本音だ

私が金持ちに嫉妬していると書くような下種には一生わからないだろうが