北京市の当局が、反日デモや暴動に対して、「別の形で愛国の情熱を示してほしい」というお達しを出して、事実上、デモを取り締まる意向を示したらしい

これによって、デモは鎮静化するようだし、暴徒化したものについては、「愛国無罪」ではなく、警察に捕まることになるのだが、別の形の愛国の情熱のほうが、もっと怖い気がする

たとえば、尖閣を中国のものとみなさないのなら、日本製品を買わないぞという不買運動が起こったとしよう

日本の経団連あたりは、日本経済や日本の雇用を守るために、尖閣くらいやってもいいのではないかと言い出すかもしれない

問題は、それを学習させることだ

日本人は不買で脅せば、なんでも言うことを聞くという話になってしまう

本来、日本の財界人が、国際競争力神話にだまされたおらず(私の『経営者の大罪』を読んでほしい)、強欲でなければ、中国になど買ってもらわなくてもけっこう、うちの国は輸出はGDPのたかだか10%、従業員の給料を増やして内需で対抗するという話になるのだろうが、日本の経営者は従業員に給料を払うのが大嫌いな人間ばかりなので、これは無理だろう

スポンサーの顔色を伺うマスコミも論調が急にしぼむのではないか?

もう一つの愛国心の示し方は、尖閣を日本が買うのなら、日本の企業を、愛国心を示して買おうという中国企業がいっぱい出てくるということだ

たとえば、シャープを中国企業が買う

中国企業が買占めを始めたり、今の株価より高い値段で、TOBを行ったりすれば、日本の株主は、国より私有財産のほうが大事なやつばかりだから(マスコミもそういう考えかただし、教育までそういう論調である)、すぐに中国企業は目標を達成するだろう

パナソニックも、ソニーもそうやって買われるかもしれない

そして、これらの会社では、昇進試験や入社試験に、歴史の問題が出るようになる

「尖閣は歴史を踏まれるとどこの領土になるか?」

もちろん、愛国より、自分の昇進や入社のほうが大事な人間は、みんな「中国」と書くだろう

日本の労働組合も経営者に従順で、高い組合費をとっていても、絶対ストをやらないからおとなしく引き下がるはずだ

これについても、怒りでネットに書き込む人はいても、日本のテレビでは、広告費をもらうために、そのことはおそらく取り上げられない

韓国がパチンコを廃止しても、どこのテレビ局も取り上げないのと同じ構造だ

いずれにせよ、中国は不買運動をしても(韓国もするかもしれない)、日本人はしないから、なめられっぱなしになる

マスコミも愛国より、金が大事、自分たちの年収1500万円のほうが大事な国だから

そうならないように、株を買い支えよう、多少、高くてもソニーやパナやシャープを日本国のものにするために、損を覚悟で買い支えるような愛国的な金持ちも日本にはいないだろう

日本の場合は、株価が下がるとすぐにパニック売りが起こる。アメリカなら、9.11のときもリーマンのときも、株価が3日ほど下がると、このままではアメリカ経済がダメになると、愛国的に買い支える金持ちがいる

愛国心の差が、今の日本とアメリカの株価の差ともいえる

損をしてでも、国を守る覚悟が日本の金持ちになく、私有財産を大事にするという金持ちだらけの国では、中国の経営者たちが、、「別の形で愛国の情熱を示した」とたんに、日本企業はひとたまりもない

ついでにいうと、外国に企業が買われるのを禁止する法律を作る気配もない

もちろん、民間の不買運動も、中国企業による買収も、政府がやったことでないから抗議もできない(暴動を取り締まってくれとは言えるだろうが)

日本人が、この問題で、同じような形で愛国の情熱を示せない限り、勝ち目がない気がするが