アーク出版から『「自尊死」のすすめ』という本を出した

本の内容には自信があるが、若干誤解のあるタイトルではある

私が言いたいのは、「緩和余生」のすすめのようなものである

どういうことかというと、最近の安楽死とか、終末期医療にまつわる論調でも、寝たきりとか、高齢者が衰えたり、意識がほとんどない状態になってから、胃瘻や点滴などは可哀想だからやめようというものが多い

でも、現実には、そんな状態になったときには、もう当の患者さんのほうは、痛みもほとんど感じなくなっているし、意識もはっきりしないことが多い

要するに周囲が可哀想に思ったり、医療費がもったいないというだけの話だ

私がもっと可哀想に思うのは、50代、60代で、血圧が高い、血糖値が高いと言われて、薬を飲まされたり、甘いもの、しょっぱいものを我慢させられている人たちだ

もちろん、そのほうが長生きができたり、死亡率が下がるということはあるだろう

だから、まだ子どもが大学なりに通っていて、自立できていない場合は、たとえ10%の脳卒中になる率が6%に下がる(血圧160くらいの人が、薬を飲まなかった場合と飲んだ場合の6年後の比較ではそうなるというデータがある。ただし、薬を飲まなかったとしても90%の人は脳卒中になっていないし、飲んでいても6%の人がなることも見逃してはならない)としても、血圧の薬を飲むのが子どものためというものだろう

でも、子育てとか社会的責任を果たした後であれば、それは自己決定に任せていいのではないかというのが本書の趣旨だ

血圧の薬や血糖値を下げる薬は、高齢者の場合、多くの場合だるくなることが多い

低血圧のときにだるいという経験をした人ならわかるかもしれないが、人間というのは、血圧が高い時のほうが頭はしゃきっとしているものだ

だから、薬を飲み忘れた日にすっきりしているなどという人は多い

頭がしゃきっとした20年の余生を選ぶか、頭のぼんやりした30年の余生を選ぶかくらい自己決定でもいいのではないか?

自分の好物をがまんする30年の余生より、好きなものを食べる20年の余生のほうがよくないか?

という問いかけである

ところが、最近になって、薬の副作用とか、免疫力の問題なのか、血糖値やコレステロール値などはちょっと高めのほうが、むしろ下げないほうが長生きしている、死亡率が低いなどというデータも出ている

日本では、まともな予後調査や追跡データがろくにないから、医者のいうことなどあてにならないのだ

実際、あれだけ薬物療法が重視されていたうつ病だって、製薬会社の接待が禁止になったとたんに、軽症のうつ病では薬はかえってよくないというガイドラインが出るようなご時世だ(昨日のブログ参照)

一生懸命節制して、それが長生きにつながらないのなら目も当てられない

私には、自分がだるくないように薬を選び、あるいは飲まないで、好きなものを食べるほうが、よほどましな余生だと私には思えてならない

ご興味をもたれた方は拙著を読んでほしい