昨日はメッセージをたくさんいただく日だった

クルーグマンの本で、ケインズのdepressionの定義が出ていたと教えて下さった人がいる

その人は、その定義が人間のうつ病と似ているという

実は、私も似たようなことを考えていた

1999年に書いた『「こころ」が変われば景気がよくなる』(朝日出版社)という本で、不景気もうつ病もdepressionという話をしたが、ちょっとした不景気はrecessionというし、単なる鬱気分ならblueとかgloomy程度の言葉が使われる

両者とも本格的な治療が必要だが、悲観的な思考パターンを変える認知療法的な発想が使えると書いた

結果的に、マスメディアは、それ以降もずっと悲観的思考から脱却できず、その本が出て、もう13年も経っているが、日本のdepressionは治っていない

治療が必要なのに、放っておいているからだ。その本を出したときに、自民党政府がした治療というと金持ちの大減税だった。結果がどうなったのかは前に書いたとおりだ

日本の金持ちの悲観的気分が治っていないのに、減税で金だけ持たせても、投資や消費に回るわけがない

このメッセージの主は、通り魔事件を間接自殺という考えも教えてくれた

「さらに怖いのが、Depressionが日本にとどまらず、世界に拡散していることです。失業率がなかなか下がらないアメリカで日本のような『間接自殺』が起こらないと言えるでしょうか」(引用終わり)

と指摘されておられるが、実はアメリカではとっくの昔から起こっていて社会問題になっている

それがsuicide by copと呼ばれる、銃などを乱射して、警察に殺してもらうという自殺の手法だ。むしろ、日本がアメリカ並みに格差社会化して、そのようなものが伝播してきたと考えたほうがよさそうだ(大阪の小学校でおきた大量殺人事件の前からアメリカではあった)

もう一人、昨日のブログに対して、尖閣は日本の固有の領土で、「なぜ和田先生はまるで尖閣が中国領みたいな言い方をされるのでしょうか?
これじゃあ日本が中国の土地を買って日本領だというかのような書き方です。」(引用終わり)という批判をいただいた

文筆業を長い間やっているが、このような誤解を受けるのは、私の筆力のなさゆえなのだろう

私は、竹島であれ、尖閣であれ、日本の固有の領土という立場をとっている(北方領土については負けて取られた土地だと考えているが)

しかし、それが危うくなっているから、わざわざ買おうという話になっているのだろう

ただ、買ったところで、固有の領土は固有の領土だし、逆に中国の人の考え方は変わらないよという意味で書いただけだ

私が言いたかった問題は、このメッセージの主の書いておられるように、「なぜか日本だけは文化人などが堂々とテレビなどで尖閣も竹島もくれてやれ的な言い方をする人が多いのが不思議です。」(引用終わり)という空気が、あと10年、20年後にはもっと強くなり、本当に取られることを心配しているということだ

今の金持ちが、従業員にまともな給料を払わず、政府も生活保護をばしばし打ち切り、消費税も20%まで上げれば、日本の内需は確実にしぼむ。増えるのは金持ちの貯金通帳に記載される桁の数だけだ

しかも金持ちは、自分たちのぜいたくな生活を守るために、そうでないと雇用が守れないということを言って、中国にものを買ってもらいたがる

実際、尖閣中国漁船衝突事件のときは、中国の不買をおそれて、財界は早く矛先を収めろと政府に圧力をかけたとされる

私が言いたかったのは、中国の不買を恐れないですむように、日本の経営者は自分たちの給料を削ってでも、従業員に金を回して、内需を拡充しろということである(このあたりのことは、拙著『経営者の大罪』を読んでほしい)

アメリカだって冷戦時代は最高税率93%だった。国を強くしたければ金持ちが我慢しないといけない

その当時、税金が高いと言ってアメリカを逃げだしたら、売国奴と呼ばれたのだ

ところが、今の日本では、税金を上げるとキャピタルフライトが起こるという言い分が堂々とまかり通っている

愛国とは、私有財産より国の独立のほうが大事だという考え方だと言いたかったのだ

さて、生活保護について、女性セブンという雑誌の取材を受けたので、子どもの教育が大事な時期なら年収1000万円でも親に送るのが大変だということを私は答えたのだが、同じ記事で、右翼の論客とされる漫画家の先生は、親をみるのが当然で、親に生活保護を受けさせながら、子どもを塾に行かせるのは贅沢(知り合いに塾に行かずに東大に行った人が何人もいるというのが論拠だそうだ)という意見だった

確かに、塾に行かずに東大に行く人はいるが、今の公教育では、塾や私立に行けないのは明らかに不利である

祖父母が貧しい子どもたちの教育機会が奪われれば、それだけ国力だって落ちるだろう

そうでなくても韓国や中国や台湾に子どもの学力は負けているのである

日本の右翼の人たちは、わけのわからない道徳を押し付けたり、武力が強ければいいと思っているようだが、今のご時世経済が強くなければ、北朝鮮のようなはったり国家になってしまうということがなぜわからないのだろうか?

右翼は北朝鮮を嫌うが、大衆が貧しい国は北朝鮮のようになってしまう

北朝鮮を批判していて、パチンコ屋から金をもらっている(日本の右翼政治家にはそういう人が多いようだ)のだから、日本も北朝鮮のようになるのに肩を貸したいのかもしれない

私は生活保護にはいろいろな効用があると最近思えるようになってきた。生活保護があるおかげで、貧乏人の子どもが親の面倒を見る代わりに、自分の子どもを塾に行かせることもできるとしたら、将来の国益になるはずだ

たとえば廃品回収業などは、今は儲からないからずいぶん減った

でも、彼らにその仕事を続けてもらって、収入が生活保護より少なければ差額を生保から払えば、仕事が続けられるだろう。そのほうが官が廃品回収をやるよりずっとコストが安い

伝統芸能などで食べれない人も生活保護で面倒をみれば、伝統を絶やさないですむ

映画産業で働く人や芸能人だって、食べれないなら生活保護を受けられるようになれば、その仕事をやめないですむ(10年で打ち切りくらいにしないといけないだろうが)

そうすれば、芸術に補助金の少ないこの国でも、娯楽産業が生き残り、海外に売れるようになるかもしれない

福祉の現場が官製ワーキングプアだとしても、給料が生活保護以下なら差額を生活保護で補えば、福祉の現場の人手不足も補える

生活保護は人に頼る人間を作る側面は確かにあるが、それがあれば、いろいろな仕事が続けられるというメリットだってあるのだ

そういうとすぐに財源論を言いだす人がいるが、99年の金持ち減税をやめれば、その程度の金はすぐに出てくるし、あまりあるくらいだ

もちろん、そのほうが国の消費が増えて、中国にペコペコする必要もへる

たとえば月給10万円の人が生活保護を受けていないとすれば、生活保護に落ちたくないから、月に8万くらいしか使わないかもしれない。ところが生活保護を受ければ収入は13万円になる(もとの仕事をやめなければ3万円が税金から払われる)が、貯金をすると生活保護が取り消されるので、13万円の消費をしてくれることになる。要するに税金を3万円つぎこめば、5万円消費が増える

生活保護の経済効果を本気で考えるいい機会だと思うのだが、誰も論じず、生保たたきにあけくれるのが不思議だ