空前のユーロ安だそうだ。

ギリシャ不安が落ち着きそうにない、ユーロ不安も落ち着きそうもないということもあって、当分はユーロ安が続くだろう。

それでおたおたしている日本企業の姿が報じられているが、これをチャンスと思わないのが日本の経営者のバカさ加減だ

ヨーロッパにはずっと使えるブランドがうなるほどある

優良企業を安く買えるチャンスなのに、日本企業は買おうとしない

そういう日本の経営者のバカさ加減が見きられているので、日本株は円高になるとボロボロに下がる。借金まみれで本来なら将来暴落するかもしれないので、見きられないといけない円のほうは買われているのに、日本株のほうには投資しようという人はいない

ついでに言うと、日本の経営者が外国に引き抜かれたという話を聞かない。スポーツの選手であれ、技術者であれ、能力があれば、語学が少々下手でも引き抜かれるが、日本が外国から経営者を引っ張ってくる話はあっても逆をしらない。偉そうに日本国で儲けて、本を書いたりする経営者だって、外国の人間からみると、安売りで儲けているノータリンにしか見えないのだろう。本国のセブンイレブンを立て直した鈴木氏くらいではないか?

昔話になるが、20年ほど前にパリに旅行にいったときに、ビデオカメラのテープがなくてあわてて買おうとしたら5000円近く取られた

日本のカメラをふくめて日本製品が日本の値段の倍近くで売られていたが、それでも庶民の垂涎の的だった

日本製品にブランド力が残っていたらユーロが下がっても値上げは可能だ

今はユーロが下がっても、ブランド力で韓国などの製品に負けるので、値上げができない

もはや、日本製品は「高いけど、いいもの」ではなく、マレーシアや中国で作れる安ものとなった

これも無能経営者たちのためだ

私がアメリカ留学中に驚いたのは、日本製(マレーシア製も多かったが)のテレビやVTRが日本の3分の1くらいの値段で売られていた。ただ、よく見ると、3-5年くらい前の型のものだ。日本でS-VHSが売られているころに、その3世代前の2ヘッドのデッキが売られていた

要するに、日本製品は型落ちでも売れたので、安売り競争をする必要がなかった

国内に高くてもいいものを買ってくれる消費者がたくさんいたので、大量生産して安くなってからとか、型落ちになってから、外国に輸出していればよかった

日本の経営者が無能なために、外国では賃上げを当たり前にやっているのに、日本だけ賃下げを続けた結果国内市場をぼろぼろにした報いだ

このようなことをまとめて、6月1日発売ということで『経営者の大罪』という本を出した

その中で私が強調したかったのは、「人件費は無駄な経費という発想の刷りこみ」から抜けられない経営者が日本をダメにしたということだ

実は、ソニーであれ、パナであれ、売上高にしめる人件費の割合は1割にすぎない。広告費であれ、材料調達コストであれ、流通経費であれ、そういうコストのほうが削減余力はある。人件費を削ると、よそも同じことをするので、市場がしぼんで、自分たちの売り上げに影響する。いちばんカットしてはいけない経費を安易にカットするから、今の日本経済のていたらくと、日本企業の体たらくがある

さらに、そんなことをやっていると、優秀な人材がこないし、社員の愛社心がそがれる。すると、はるかにコスト削減が困難になる

昔の日本の経営者は偉かった

おそらく元祖はフォードを勃興させたヘンリー・フォードのようだ

彼は、ベルトコンベアで車の大量生産を可能にし、モータリゼーションの時代を作ったとされるが、それ以上に特筆すべきは、従業員の給料を3倍にしたことだ

それによって、よそもまねをせざるを得なくなって、車を買える消費者がアメリカにものすごい勢いで増えた

日本も加工貿易国から、中流の分厚い先進国に変容できた、つまり外需頼りから分厚い内需を持つ国に変容できたのは、昔の経営者が自分たちの給料をがまんしても、社員にたくさんの給料をはらったからだろう

もう一つ賢い制度と思ったのは、ボーナスだ

確かに、儲かったらボーナスが増えるが、赤字でもボーナスが出ないなんて話はない(今のノータリン経営者はそれをするようだが)

要するに給料の払い方を月刊均等でなく、年に2回たくさんもらえる月があるという感覚だろう

これも、自動車であれ、高級家電であれ、高いものを買う原資になった

東電のボーナスをボロクソに言う人が多いが、日本型の賃金支払いシステムをこんな形で否定していいのか、庶民は自分で自分の首をしめることになっていいのかと思ってしまう

国際競争=価格競争というバカな思い込みのおかげで内需が弱い国になったので、円高が続く限り、日本企業の赤字が恒常化する危険もある。そのときに、赤字ならボーナスを出さなくていいというのがコンセンサスになると日本人はさらに賃下げにあって、よけいに内需がへこむ

私がいちばんおそれるのは、日本製品のブランドイメージもさることながら、日本という国のブランドイメージがおちることだ

豊かで頭のいい人の多い国ということで、日本製品は高くても売れた

現に中国の中流以上では日本製品を高級品と思っている人はまだいる

でも、インドや中国市場に参入するために、わざわざ価格を下げてブランドイメージを下げている

しかも、メイドインジャパンでない形にして、日本製品は3流国でも作れるように思われる

インドや中国だって、5年後、10年後には今の賃金が倍どころか3-5倍になると予想される

そうなったときに、ヨーロッパ製品でなく、日本製品を選んでもらわないといけないのに、日本のバカ経営者たちは安売りばかり考えて、ブランドイメージを落とし続ける

日本の豊かさを保って、将来、日本がブランドであり続けるのか、今の目先の競争に追われて、内需を壊し続けるのか

日本の経営者たちの馬鹿さ加減が、いつ治るのかを見守り続けたい