「このような東電いじめや給料削減により、東電では、優秀な技術者・管理職の退社が後を絶たないようです。
(仕事上、東電と付き合いがあったので) 知り合いの方で、MBAホルダー、世界に通用する電力研究者、原子力技術者が、何人か、東電を退社されました。
東電の優秀な方は、原子力や系統制御技術など、電気事業分野のグローバルなリーダとして、世界の電力会社を牽引し活躍されていました。しかし、幼稚な日本の社会が、彼らを、追い詰めているようです。
優秀な方々から、年間500名、東電を自主退社されていると聞きました。
 東電を追い詰めるということは、日本の国の力、そのものをそぐことになると気がつかないのでしょうか。
このような、日本社会の幼稚化が、心配でなりません。」(引用終わり)
というメッセージをいただいた

その通りと思う

エネルギー会社というのは、その国の命運を担う会社でもある

一社独占の弊害が問題にされているが、一社独占のような状態になっているから強くなったサムソンのような例もあるし、最近の日本の経営者は、競争させると値下げ競争しかしないから質を下げるということもある。コストに余裕がないと、新規の電源開発とか、電線の地下化なども一向に進まないし、電力の原料とも言えるものの安定的な買付もうまくいかないだろう

日本のマスメディアは、自分たちのルサンチマンや気分で、勉強や受験をたたいて、日本人の学力を落とした。90年代には学力で韓国や台湾に抜かれ、今ではITなどの分野で彼らに勝てないという結果を招いた

国力を何も考えないくせに、自分たちの気に入らない意見をいうとテレビに出さないという言論規制、世界中がアルコールの広告規制を始めたのに、のうのうとやり続けて金儲けに走るモラルのなさなど、独占の弊害は、電力会社よりむしろテレビ局のほうがひどい

おそらく、本日くらいから、拙著『テレビに破壊される脳』(徳間書店)(誤解が多いタイトルだが、テレビに脳のソフトが破壊されるのは確かだと思う)が発売される

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%81%AB%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E8%84%B3-%E5%92%8C%E7%94%B0%E7%A7%80%E6%A8%B9/dp/4198633479/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1338504465&sr=1-3

大ベストセラーになりながら、類書のオファーがほとんどこなかった(そのくらい出版社はテレビ局の顔色をうかがっているということだろう)『テレビの大罪』の続編として書いた本なのでぜひ読んでほしい

さて、昨今の生活保護報道を見ていて痛感するのは、日本が消費不況なのに、まだまだ働かざる者食うべからずという発想が蔓延していることだ

セブンアンドアイホールディングスの鈴木会長と以前対談したことがあるが、彼に言わせると90年代の半ばに、人類は生産が消費を抜いたとのことだ

実際、人類の進歩の歴史というのは生産性の向上の歴史といっていい。産業革命だってIT革命だって、その範疇だろう。生産性が上がるときに人類の人口も増えている

世界中の宗教で勤勉を求めるのだってその流れだ

しかし、もし生産が消費を抜かしたとしたらどうだろう

これまでは生産性が上がると世界人口が増えた

今は、少なくとも先進国(アジアを含む)でむしろ人口が減る予定だし、高齢化も進んでいる

放っておくと消費はもっと減ってしまう。

これまで通りに生産性を上げることにやきもきしていると、需給ギャップはますます広がって、ますます豊作貧乏のようになってしまう

しかし、日本の経営者たちはそれに気づかず、生産性神話に縛られ、消費を増やすことより、コストカットと生産性向上だけを考えた

そんなことが20年も続いたから、日本人の賃金が17%も減った。そうでなくても消費不足なのに、よけいに内需を削ることになる

アメリカを手本にしたようだが、そのアメリカでさえ、この20年で賃金は20%は上がっている

さらに自民党政権が、生産性を上げるために、人々のモチベーションを上げるためにという名目で99年に金持ちの大減税をやった

結果的に生産性は上がらず、格差は拡大し、内需はよけいに落ち込み、財政はどんどん借金まみれになり、自殺は一向に減らない

この悪政を民主党が引き継いだのは情けないが、今回の生活保護の追求でも、自民党は貧乏人に金をもたせることがよほど嫌だということが露呈した

自民党はケインジアンの政党ということになっていたが、ケインジアンなのは公共事業が好きということで、所得の再配分が好きという話ではない(それでも昔の自民党は厳しい累進課税もやっていたが)

ヒトラーは極悪人かもしれないが、1938年までは戦争より、ドイツの経済を立て直したことは確かなことだ。ハイパーインフレでぼろぼろの経済を、たった8年でヨーロッパでもっとも豊かな国を作った

アウトバーンを3年に1000キロ(東京ー大阪の倍だ)作ったことで知られるケインジアンだが、その中で特筆すべきは人件費をその費用の46%をあてるように法制化したことだ

公共事業というのは大衆に金を持たせるためにやる。すると消費が回復するから経済も回るという当たり前のことをやったのだ

今のような生産性過剰の時代には、公共事業で生産をする必要はないのかもしれない

需給ギャップを埋めるのにいちばん楽なやり方は、働かないで金だけ使う人間が増えればいいということだ

そういう点では、高齢者や生保の受給者というのはありがたい存在なのだ

仮に不正受給であったとしても、役場がきちんと貯金通帳を監視していれば、預金をすれば生保打ち切りなのだから、100%消費に回る

それだけでも十分ありがたいのだ

今回の一件で、生保を申し込むことを遠慮する人も増えるだろうし、何より怖いのは受けてはいけない、受けては子どもに迷惑がかかる、受けるのは恥だ、なかなか受けられないと思う人が増えて、さらに大衆の貯蓄傾向が上がることだ

これではさらに消費が落ち込んでしまう

ヨーロッパだと、失業しても病気をしても、志保を含めたセーフティネットが充実しているのであるだけ使うというのが当たり前になっている

だから消費が回る

オランドのような人に期待が集まるのも、頭がおかしいからでなく、経験的に社会保障を充実させたほうが、経済が回ることを知っているということもある

生産性過剰の消費不況なのだから、古い頭を捨てて、ベーシックインカムとか、所得税や法人税を上げて、むしろ経費を大幅に認めるとか、消費を本気で増やす政策を真剣に考えるべきだろう