本日は午前中、金沢で昨日の研修会の続きを聞いて、それが終わって東京に帰って、寿司を食べる予定だ(最近の数少ない楽しみの一つだが、予約がとれない)

で、小松から適当な時間に東京に帰る飛行機がない(本当に儲からないと思ったら不便を考えないところが現在の飛行機業界の在り方を反映している)。

結局、富山経由で帰ることにしたが、それでも時間があまるので富山ブラックのラーメンを食べようと思い、大喜という店に行くことにした。

ここは昨日紹介した岩本屋とはまったくコンセプトが逆の店で、ラーメンの大と小の2種類しかなくて、トッピングも生卵のみ。カウンターには胡椒もおいていなくて、食べる前に向こうで胡椒をかけてくれる。

味のほうはチョット濃い目の醤油味で、意外に後を引く。麺はやや太めのしっかり麺。薄切りのチャーシューがいっぱい乗っているが、これがチャーシューメンなのだそうだ。

ものすごくおいしいわけではないが、もう一度食べたくなる不思議なラーメンだ。


運転手さんのご厚意で待ち時間をタダにしてもらって、そのまま富山空港にきた。金沢と比べて空港に本当に近いいい街だ。

さて、働きながら医学部を目指すビジネスマンの人から向精神薬と自殺についての質問に答えたつもりだったが、もう一つの質問は抗ガン剤についてだ、

抗ガン剤が使われすぎて、アメリカでは代替医療によって死亡率が下がっているという情報に基づくものだ。

残念ながら、私はガンについて語れるほどガンの専門家ではない。

ただ、いっぽうで、ガンの専門家の知り合いが意外に多い。東大の緩和ケア部長の中川恵一氏は、大学時代からの数少ない友人(大学にロクにいっていないので友だちが少ないのだ)だし、対談で平岩正樹さんのお話を伺ってガンの薬物療法の現状もかなり聴いた。

抗癌剤については、いくつか感じていることがある。

一つは、現状はまだ画期的な薬が少ないこと。

莫大な金をかけて個人輸入をしてもらって保険の利かない抗癌剤の治療を受けても、平均すると1週間から1カ月しか寿命が伸びないそうだ。

これは確かにコストパフォーマンスが悪すぎる。

要するにものすごい画期的な抗癌剤が出るまでは、過度な期待はできないし、私自身も飲む気にならない。

いっぽうで、ガンの薬物療法は日本はきわめて遅れているらしい。

本当に効く抗癌剤の国際標準では死亡率は5%くらいだという。

基本的に手術で取れない患者さんが対象だから死期が早まる人が5%くらいいても、あるいは無理な手術をすればもっと手術死亡率が高いから、5%くらいは覚悟すべきだという考え方に基づいているのだろう。

抗癌剤の場合、多くは正常な細胞にも何らかの影響があるので、そのくらいの死亡率の薬でないと本当に効く、かなりの数のガン細胞を殺すという風にはいかないらしい。

ところが日本の場合、イレッサ(これがいい薬とか本当に効く薬なのかは私には評価できない)のようにちょっと死者が出ると、たちどころに認可されなくなる。

これでは本当に効く薬は使えないということらしい。

ただ、もちろん、その死亡率を少しでも減らしたいのは当然のことだ。だから、抗癌剤の選択を患者の病状を聞きながら、じっくり考えて行いたいのだが、日本では外科医が片手間でやっているし、実際、こういう処方を考える技術料は通常の処方料(かぜ薬や高血圧の薬を選ぶときの処方料)と同じだそうだ。

ということで薬物療法の専門医がほとんどいない。

ここまでが中川氏と平岩氏の受け売りなのだが、抗癌剤については、日本でももっと輸入すべきとか認可を早めるべきという意見と、このメッセージの主のようにむしろ使うのに慎重なほうがいいのではないかという考え方があるが、現在の条件が悪すぎることが意外に考慮されていない。

とにかく日本では、がん治療が外科医に独占されすぎているのだ。

たから薬物療法も放射線治療もまともに普及しない。

しかし、大学医学部では教授会には放射線科の教授は一人しかいないのが通常だが、外科の教授は10人近くいることが多い。がんの薬物療法医が教授会にいる大学はない。アメリカでは当たり前の乳がんの乳房温存療法を広めようとした放射線科医の近藤誠氏が、徹底的に外科系の教授から排斥され、さらにこの治療が普及したのはアメリカに遅れること15年もかかっている。

大学病院を解体して、新しい医者のトレーニングシステムを作らない限り、日本でまともな(もちろん、それなりによく頑張っている医者もたくさんいる)ガン治療医が養成されるのはものすごく遅れることだけは確かなようだ。

国立がんセンターでさえ、がんに関係のない脳外科の医者が理事長になるなど、政治(もちろん医者の世界での政治だが)で医者の世界が好きにされるのだから。