今朝、新聞をみると、武富士の長男の脱税事件で、最高裁が二審の判断を破棄して追徴をしない方向になりそうだという記事が出ていた。

この事件は、1年間の間、子供を香港に200日ほど住ませて、その年の間だけで1600億円もの金を親が子供に贈与したというものだ。海外在住の日本人が海外の財産の贈与を受けた場合は非課税という当時の法律を利用したらしい。

こんなやり方が許されるなら、たとえば金持ちが子供に財産を相続させる際に、アメリカ法人か何かの社長にして、アメリカに住んでいる間にドドドと財産を渡すことができる。アメリカ法人に資産を大量に回して、そこの株を贈与すればそれでいいことになる。

高裁は、いくら香港にいる時期が長くても生活の拠点が日本にあったし、前後の年を考えたら、脱税目的で香港に居住していたと認定しているし、香港でも保有資産がろくになかったということで、一審判決を覆して1600億円の申告漏れを指摘し、1330億円の追徴課税処分の判決を出した。

ところが最高裁でこれを見直すという。

私は法律が専門でないから純粋な法律論はわからない。

ただ、一審と二審で判決がわかれたということはどちらの解釈も可能ということだろう。

そういう際に、この手の裁判なら、ある程度国益だとか、国民感情なども勘案するのが最高裁の仕事ではないのだろうか?

武富士と言うと、つい最近5000億円以上の負債を出して倒産した会社だ。

多くの銀行がそれで損をするし、一方で、過払い利息も返されなくなる可能性が大きい。

ところが、この武富士創業者の贈与を受けた金というのは、もとはというと法定利息よりたくさんの利息をとった金を貯めこんだものだろう。

いっぽうでは金を借りていた庶民や善良な銀行がなき、一方では、会社から個人に資産移動をしたにもかかわらず、それが脱税にもならず、追徴金も返されようとしている。

1300億円などという金は事業仕分けでもほとんど出てこない金だ。削減総額の5分の1にもわたる金が国から個人に戻される。それも最高裁判所の判断のもとに。

それどころかどこかの新聞報道で読んだが、武富士が更生法で綺麗になった際に、武井一族が買い戻すという話もある。その原資に子の金が使われるだろう。

借金を踏み倒された側はいい面の皮だ。

1330億円の追徴は大金だが、所得隠しが1600億円だから、これを払っても個人に270億円残る。日本の場合、アメリカのように脱税の懲罰的追徴がないから、それでも金が残るシステムになっている。それなのに、その1330億円も課税しないというのが最高裁の判断なのだろうか?実際は、これだけの巨額脱税をしたら刑務所に入るくらいが筋でないのか?

保守と称する人たちも軍備を増強しろと言いながら、国に金を払わない人間、脱税する人間に甘い。

国に金がないのにどうやって軍備を増強しろというのか?消費税でやれということか?多くの国は軍備の増強の時期に累進課税を厳しくしたりしているというのに。

最高裁判官は、法曹界や学識経験者から内閣が任命することになっていて、直接裁判ではない。

検事や裁判官だって定年間際になるとお金持ちになるし、弁護士の偉いさんだってそうだろう。学識経験者にしても、貧しいものの味方から選ぶように思えない。(下級審のほうが、貧乏とは言わないが、まだ給料が少ないので、多少一般の感覚に近いのかもしれない)

そして基本的に高齢者のために、自分の相続のことも考えているだろう。

こんな裁判官たちは、相続を有利に進めようとするワルの味方になるのは、心理的に納得できる。

もちろん国民審査でNOとは言えるが、NOのときしかチェックしないシステムなので、みんな通るだろう。

司法まで金持ちの味方では、この国の将来も暗い。

ところで大坂のラジオでは、高所得者のタレントは、税金が高いのがばかばかしいので仕事をセーブしているとのたまった方がいるというメッセージをいただいた。

紳助にしてもみのもんたにしても、あれで仕事をセーブしているのならすごい話だが、日本の金持ちは累進課税のもっと厳しかったころは、もっと働いていた気がする。少なくとも、私個人の経験では、税金が高いからばからしくなって仕事をやめた金持ちのことは知らない(海外に移住した人はいるが)

ただ、金持ちが働くのがばかばかしくなって、働くより使う気になってもらわないと(欧米では老後金を使うために稼ぐのが原則だ)、日本の景気は改善しない。

しかし、今回の武富士事件のように、金を使うより、次の代に残すのは正しいと言わんばかりの判決がでる(実際は、そういう公算が強いだけのことで、まだ決まったわけではないが)。

マスコミも、裁判官もみんな金持ちの味方で、さらにこの国の将来は暗い。