相続税を増税したほうが、今後の高齢社会の制度設計にいいというような話や、アメリカの金持ちが、相続税の減税に反対している話、相続税所が資産の半額程度を寄付する組織ができているような話を核と、過敏な反応をしてくる人が必ず出てくる。

もちろん、今後から、そういう人(人のことを勝手に呼び捨てにするな!こんな礼儀知らずの人間のメッセージを読む気もしない)のメッセージは拒否だが、その人によると、日本の税金が高いので、毎年7兆円も流出しているそうだ。

保守と言われる人が、こういう人間を売国奴と呼ばずに、むしろ同情しているのが不思議で仕方がない。

税金を払うのが嫌な人が多い国が国を守れないし、外国になめられるのは当然である。

アメリカ人は、冷戦時代には金持ちが93%もの累進課税にたえた。もちろん、外国に出ていったなどという話は聞かない。ついでにいうと、その頃に貧富の差が縮まり、中流が勃興して、自動車産業と家電産業が発展し、アメリカ世界一を盤石なものにしたのも日本ではだれも報じない。クルーグマンの訳書で初めて知った。こういうことを書くと情報操作だと書くバカがいるが、いろいろな情報が入って、その中から総合的な判断をするのがリテラシーで、特定の情報しか入らないほうがよほどの情報操作である。現実には大新聞、テレビも含めて、私の提供するような情報がほとんど入ってこない。金持ちに有利な情報が流れるのは資本主義の国だから当然だが、対抗情報が流れないのは北朝鮮並だ。

さて、本日は産経新聞を読んでいたら、お札を刷ったら株価が上がると得々と書いてあった。

お札を刷ったら、株価が上がるのは当然だ。極端なことを言えば、日銀がお札をどんどん刷って、日本中の株をどんどん買えば、株価は上がる。

しかし、お札を刷ると、当然、インフレも起こる。株価が倍になっても、物価が倍になれば、実際のところはチャラである。見かけの経済規模が大きくなるだけだ。

そして、もちろんそうなれば貨幣価値も下がる。すると当然、円安になる。

見かけ上は、円安になるし、株価も上がるし、経済も成長する。

しかし、それにおいつくだけ、たとえばインフレ率が20%になっても、賃金はそれだけ上がらないだろう。

結局、大衆は余計に貧しくなるだけだ。

基本的には、政治の仕事というのは、実体経済の成長率を上げたり、国民を豊かにすることであって、株価は一つのパラメーターだし、それが目的になる筋合いのものではない。バブルまでは日本人が日経平均やかつてのダウ平均などは、一部の投資家しか知らない数字だった。それがいつの間にか景気の指標になっている。しかし、株価というのは金持ちに増税すると下がるように、金持ちの意向を反映するものだ。要するに金持ちや企業から貧しいものに金を移転しようとすると株価は下がるし、逆をやろうとするとマーケットは歓迎して株価が上がる。株価を基本に政治をやろうとすると、必ず、貧富の差は大きくなってしまう。それだけならいいが、そのおかげで消費はますますシュリンクするのである。

ついでに言うと、日本の場合は、日銀がお札を刷るだけでなく、実際に株を買うくらいのことをしないと株価も上がらないだろう。

要するに、お金がないわけではない。個人金融資産は1400兆円もある。金が回らないことのほうが問題なのである。

ここに相続税100%論の意味がある。

相続税が高いのが嫌で外国に移住したい人は移住すればいい。これにしても、法の運用次第で、日本にある相続財産は日本の課税対象にできる。

せっかく金を稼いだのに、子供のために晩年、言葉の通じない国で、まずい料理を食い、親戚や友達も遊びに来ない状況でもいいのなら、なんのために財産を作ったというのだろう。

金というのは使うために稼ぐという当たり前のことが忘れられているから、日本が今の状況になっているのではないだろうか?

貯めるために稼ぐのなら100兆稼いでも年収1000万円くらいの人と同じレベルの生活しかできないだろうし、貯金通帳の記号をみて幸せになるのなら、その数字が架空のものでも実際は同じことだ。

実際、メッセージの主のように外国に7兆円も流れているとすれば、日本の相続税収は年間1兆円かそこらなのだから、実勢レートの異様に低い相続税をおそれて外国に逃げるというのは、まさに妄想的な恐怖感情そのものである。おそらく外国にお金を逃がすコスト(精神的なコストも含む)のほうが払うべき相続税より安いくらいだろう。

ただ、確かに西欧諸国では相続税廃止の国も多い。高い税金を課して残った金から税金を取るのは、2重課税という考えもあるのだろう。

でも、日本のように人々が金を使わない社会、とくに高齢者が金を使わない社会で、高齢者が金融資産のかなりの部分をもつ構成になっていて、さらに親から相続を受けるときには子供が60にもなっている国では、やはり相続税は、世代間の負担の緩和のための重要な税収だと信じる。

外国では、パチンコのような駅前ギャンブルがないとか、アルコールにもほとんどの国で広告規制がないとか、外国がやっているいいことはまねしないのに、外国が相続税を廃止したから日本もやろうというのは、日本人の民度の問題が問われていると私は信じる。