昨日はエンジン塾といって、私が所属する文化人団体エンジン01が毎月ゲストを呼んで行う勉強会。

第一部は、田原総一郎さんとエンジン出身の民主党議員岸本周平さんを呼んで森本敏さんが司会で、今後の外交や、政治情勢の予想を伺う。

これはこれで面白かったが、第二部に、イラク復興支援で群長を務めた自衛隊の陸上幕僚監部防衛部長の番匠幸一郎氏から話を伺う。

日本の自衛隊が現地でいかに評判がよかったか(どこの国にイラクの復興を任せたいかというアンケートでは日本が1位で、自衛隊員が一人も殺されなかったのは、そのくらいイラク人に評判がよかったからだそうだ)とか、オランダ軍やイギリス軍に守ってもらうというのも、その地域の管轄がオランダ軍やイギリス軍だっただけで、別に守ってもらわなくても大丈夫な軍備を備えていたことも、なかなか興味深かった。

おそらくは、日本の自衛隊も、ご多分にもれずマスコミに嫌われているため、業績が日本で報じられることが少ないということもあるのだろうが、中国や韓国に対してだって、世界で最も好かれている国をなんでこんなに嫌うのだと言いやすいところもあるのではないかとは思った。

ただ、へそ曲がりな私は、今回の番匠さんの話を聞いて、いろいろと感じるところがあった。

最初に自衛隊の歴史の話を聞いたが、当初は、朝鮮戦争で日本に進駐している米軍がからになったから、向こうに頼まれて作ったものだそうだ。

その後、冷戦時には非常に重要なポジションだったのが、冷戦終了後に軍縮の動きがあった矢先に湾岸戦争が起こって、これまで通り軍備が必要だという話になったという歴史だったそうだ。

そうだったのか?と我に返った。

大量破壊兵器がないのに、濡れ衣を着せてフセインを攻撃したのがイラク戦争だったが、湾岸戦争は、フセインが勝手にクウェートを侵攻したことになっている。

しかし、この戦争も、後になってみると、アメリカが黙認するようなサインを出していたからフセインが実行したという説がまことしやかに流れている。

実際、フセインはイラン・イラク戦争のときは、アメリカの支援のもとに闘っている。急にアメリカにたてつくより、親米国家としてやっていったほうが得だということがよくわかっていたはずだ。

フセインがアメリカにはめられたかどうかは断言できないが、あの戦争がなければ、冷戦終結で浮かれて、各国が軍備縮小の方向に向かったのは確かだ。当時、冷戦では勝ったが不況のどん底にあったアメリカ(私自身が当時留学していたからよくわかる)において軍需産業までダメになることは許されなかった。背景を考えると陰謀説はうなずける。

もう一つ面白いスライドを番匠氏が用意していた。イラク戦争も含めて90年代末から世界の先進国は軍事予算を増やしている。ヨーロッパで10年で約2倍、アジア諸国は3-4倍である。それなのに、日本だけ減らしているというスライドだった。

これも私はへそ曲がりなものの味方をしてしまった。結局のところ、予算を増やす必要があるほどの戦争と言えば、せいぜいあっという間に終わったイラク戦争とアフガン戦争くらいだが、その金は意外に無駄ではないのかもしれない。結果的に軍事予算が、若者の失業率を下げ、それなりの内需になっている。だから、軍事予算を増やした国のほうが、日本より多かれ少なかれ景気が良い。

子供の頃から安保タダ乗り論というのをさんざん聞かされてきた私にはこれのほうが意外だった。

要するに、安保条約のおかげで日本は軍事予算をあまり使わないで済んだから経済が発展したという話である。しかし、現実には軍事予算を使っていたり、増やしている国の景気のほうが、減らしている日本よりいい。要するに、軍事予算もバカにならない有効需要を生んだり、若者の失業を吸収している可能性が十分あるということを感じる結果になった。

国防は金持ちから増税する重要な口実になる。福祉のための増税を金持ちが反対しても非国民扱いされないが、国を守る金を金持ちが出さないのでは、非国民扱いされる。冷戦時に、この世論を背景にトルーマンは金持ちの最高税率を93%まで上げて、アメリカを一気に中流社会にすることに成功している。軍事費を増やすという名目で金持ちから税金が取れたら、金は回る。

もう一つ、さらに印象深かったのは、番匠氏によると、日本の軍隊は、まじめさや隊の規律、あるいは戦車の列などでもほとんどくるわずに停車させて、整列できるという。

これについて、徴兵でなく、志願のシステムだから、まじめな人間が集まってくるのかと番匠氏に聞いてみたが、そうでもないということだ。

さらに、では、今のふつうの若者でもトレーニングでそうできると思うかというと、可能性を否定しなかった。

徴兵制が、戦争にいかないにしても、日本のゆるみ教育、ゆとり教育を受けた若者の再教育にいいという主張をする人は少なくない。

でも、実際にそんなものかもしれないような気もしてしまう。

少なくとも、全寮制で規律正しく教育をするシステムを、元不良少年やさまざまな形で脱落した子供たちの再教育のために作ることは、徴兵が無理な日本では、重要な可能性のように思えてならない。