先日、自転車事故について書いたら、お年寄りや貧しい人の交通手段としての自転車の事故が増えているのでなく、携帯を使いながら(メールも含む)、ヘッドフォンステレオを聴きながらとか、ひどい場合は、ブレーキのない競走用の自転車の公道走行のための事故などが多いという情報を追加していただいた。

多分そうだろう。

妻の事故(側面からぶつけられたのに――車の傷の跡からそれは明らかだった――こちらの責任にされた事故)でも、自転車の女性は携帯を打ちながらだった。そして、事故について向こうが悪いのに、文句を言うかと思うと、ケラケラ笑いながら携帯でしゃべりだしたのに、警官が来ると、急に泣いて見せたという(妻の証言が事実とすればだが)。

証拠がはっきりしているのに、それでも、妻の前方不注意扱いで警察は決めつけたのだが、この際も勝手に警察が作った調書のようなものに、署名捺印させられたそうだ。

だから、今回の村木さんの冤罪のようなことはしょっちゅう起こるのは当然だ。

自転車に対する取り締まりが急に厳しくなったのも、そういうことへの反感があったのかもしれない。だとすると、悪いのは自転車でなく、警察のはずなのに、ここでも警察がのさばる構図ができてしまう。

さて、話は変わるが、村木さんの裁判で、弁護人を務めたのは弘中惇一郎弁護士だった。安部英被告や三浦和義被告を無罪にした敏腕弁護士だが、言っていることは常に筋が通っている。

彼の著書、『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』はぜひ読んでほしい。彼の主張や著書の内容がすべて正しいかは、私には判断できないが、この本に書かれているような情報が、一切マスコミから出なかったということだけは確実な事実である。

村木さんの件だって、当時のテレビマスコミは検察の流すままに、リーク情報は垂れ流したが、弁護側の主張はどこも取り上げなかった。

なぜ、自己批判ができないのだろう。

実は、この弘中さんとのつきあいは長い。

私が脳死反対運動をしていたころからだから、25年以上になる。

そして、このときに、フライングで脳死判定をしたこと以上に、深尾という人間が、やったこともない、それどころか、学んだこともない脳死膵移植を行って、手術後、一人の人間の社会的生命を抹殺し、その一年後に本当の命を奪ったことを知った。

弘中さんは、依頼者である被告人が、右の人でも左の人でも正しいと思えば、全力で弁護する。私の左翼時代からの知り合いの数少ない一人だが、左でも右でもなく、自分が正しいと信じるかどうかで動く尊敬できる人だ。

ときに鑑定や意見書を頼まれるのだが、私のようなものでいいのかと思うと同時に、これだけ立派な先生から依頼されるのは名誉なことと思う。

ついでに言うと、依頼者が貧しい時は、裁判に勝つまでの間は費用を立て替えたりしているようだ。私の鑑定についても、こっちで立て替えとくからみたいなことを言われた記憶がある。

彼自身は、名門の出のようだが、法科大学院やあるいは修習生の給与廃止などで、貧しい人の味方の弁護士が減るのを心から心配している。

さて、別のメッセージで、利益を出しても、法人税を高くとられるなら、「リスクを負って新たな事業に挑戦したり、会社の拡大をしなくなってしまうのではないでしょうか?」という質問をうけた。

では、利益を出しても、株主が高額な配当を要求して、高い金をとられるなら、会社は新たな事業に挑戦したり、会社の拡大をしなくなってしまうことはないのだろうか?

たとえば会社が100億円儲かったとして、そのうち経営陣がいくらとって、残りを経常利益にするかが経営陣が決めることだ。法人税が高ければ、社長がそれだけたくさん取るという選択肢がある以上は、法人税がいくら高くても、会社を利益体質にしたいのは当然のことだ。

たとえば外国企業がある国に進出するかどうかを決めるのは、法人税が高いかどうか以上に、その国で利益が出るかで決めるだろう。

この国では売れないし、人件費や家賃が高いから利益が出ないと判断すれば、法人税が0でも、その国に進出はしない。(もちろん、タックスヘイブンとして、本社をおくという考え方もあるが、アメリカ政府などはそれを許さない方向になっている)

しかし、その国で、その会社のものが売れて、利益がたとえば年に100億円でると計算できれば、法人税が90%でも進出するだろう。それでも10億円の金が儲かるからだ。

商売というのはそういうものである。

金持ちの理屈に騙されてはいけない。

ついでに言うと、アメリカでは、法人税が今よりずっと高い時代のほうが自動車会社も家電会社も隆盛を誇っていたし、日本は税金が高い時期は、利益を出すと損なので、経費をなるべく使った。それによって日本人の賃金水準が大きく上がる代わりに、日本製品は高くても売れたり、今のように外需にびびり、円高のたびに株価が暴落することもなかった。

むしろ、法人税を上げて、設備投資や事業投資について、原則的に経費として認めるほうが、はるかに企業が拡大路線に走るかもしれない。

今は、会社が内部留保を貯めこみ、ろくに投資をしないから、経済が回っていない。

企業であれ、個人であれ、どうやったら金を使わせることができるかは、さまざまな可能性を考えないといけない。

もちろん、質問の主の心配の起こる可能性もゼロではないことは付け加えておく。