最近のニュースで気になったことをいくつか

高速の無料化で通行料が減って、沿道の店が売り上げが10分の1になったところもあるそうだ。

これには二つの問題がある。

一つは、本来必要性があって道路を作ったのに、通行料が高すぎて通らない車が多すぎたということだ。利用者にメリットがないのなら高速を作ることで儲かるのは土木業者だけだ。まともな価格設定とか、どのくらいの利用があるかを考えなかったほうがおかしい。

もう一つは、こっちのほうが大きい問題だが、ストロー効果を何も考えずに日本では道路や鉄道が作られるということだ。新幹線の駅を作ったり、高速のインターを作ったりして喜ぶ人は多いが、たとえば東北新幹線ができて以来、仙台以外のすべての街はかえってさびれてしまった。宇都宮の人は東京に当たり前に買い物にいくし、盛岡や福島、郡山の人は仙台に買い物に行く。

高速道路や新幹線は強いものをより強くし、弱い者はより弱くするのに、これを歓迎するのは本当に馬鹿げている。金沢も日帰りが可能になるとどれだけさびれるかを考えているのだろうか?

高速が高いから我慢していた人も、タダならばそれを使う。ストロー現象も含めて、高速や新幹線ができると、その周囲がさびれるのは運命だ。昔は鉄道ができると反対した時代があったらしいし、そういう人間が頭が古いと揶揄されたものだ。

しかし、時代が変わると、むしろ新幹線や道路を作るのに反対するほうが、むしろクールだ。

もう一つ気になるニュースは、本年度の11月から司法修習生の給費制が廃止されて貸与制になるので、それに反対する運動が今頃になってあちこちで起こっていることだ。

法科大学院を作ったころとセットになって作られた法律が今頃になって利いてきたようだが、民主党政権になっても、この部分をいじらなかった。

しかし、法科大学院の授業料の高さとかを考えると、そうでなくてもお金がないと弁護士や裁判官になれないのに、その上、修習中に借金が増えるシステムになっている。

法科大学院の場合は、司法試験に受かるかわからないのに、莫大な金額の投資になるので気の毒だが、司法修習の場合は、お金を借りたところで、確実に弁護士や裁判官になれるからいいではないかという考えもあるだろう。

ただ、私もアメリカで経験するが、学生時代に金を借りていると、すぐに返すために、金になる仕事につきたがるし、金にならない仕事を嫌がるのは確かだ。

アメリカの場合、メディカル・スクールの授業料は高く、ほとんどの医学生は莫大な借金をする。レジデント時代の給料は安いので、それを終えてから本格的に返すのだが、そのために高い収入を得ようとするのが当たり前になる。アメリカで貧しい人のための医療をする人が慢性的に足りないのはそのような背景もある。

日本でも、金持ちしか弁護士がつかないとか、貧しい人間につく弁護士は二流ということになるとそうでなくても金持ちの横暴がひどくなる。

神野直彦氏の『「分かち合い」の経済学』を読んだのだが、その意見にすべて賛成するわけでないが、一つ重要な見落としに気付かせてくれた。

今の莫大な財政赤字と借金があるから消費税を上げろという論議が喧しい。

しかし、この赤字を膨らませていった原因はくだらない公共事業投資もあるが、90年代からの金持ちの税金を下げ、法人税を下げて税収が減ったことが大きな要因だった。

そうしないと景気が悪くなると大衆は信じ込まされたが、GDPは成長した形をとったが、大衆の給料は下がり続けた。

金持ちの減税のためにできた借金を金持ちの税金を上げることなく、消費税で賄えという。

これを黙っている大衆もどうかしているが、大衆にニュースをわかりやすく伝える主がベストセラーで金持ちになる国では、金持ち増税の世論を作るほうが無理だろう。

私だって、80年代にまで所得税が戻ったら、年に数千万税金は増える。今、わけあって莫大な借金をしているから返せなくなるかもしれない。

でも、金がある人間に金がたまっている限り、日本のほとんどの問題は解決しない。

本が売れても金持ち増税を訴え続けるので、ぜひ『テレビの大罪』を買ってほしい。