小沢氏がついに民主党の代表選に出ることになったそうだ。

小沢氏が総理になって何をやりたいかはともかくとして、パワーと官僚機構への激しい恨みをもっていることは確かなようだ。あるいは、民主党からの離反者や自民党からの同調者を集めて、政界再編になる可能性もそれだけ高まる。一つの方向性としてはそんなに悪い話とは思えない。もちろん、負けたらもっと政界再編の可能性が高くなるという意味でも余計に注目度が高い。少なくとも、以前の自民党と違い、無風選挙のような状態が続いたことを考えると、はるかにましな話だ。

できることなら、以前の自民党の総裁選のような全国で、選挙運動をしてほしいが、小沢氏のパーソナリティから考えてそれがなさそうなのが残念だ。

さて、昨日、政治家になりたい人の政治家になる方法をあれこれと考えたわけだが、たとえば、松下政経塾に入るのと、政治家の秘書になったり、公募に応募するのではどちらがなりやすかという疑問がある。

確かに松下政経塾は卒業生242人中、国会議員が38人という数字で、いちばんの近道に見える。

ただ、相談の主が運よく東大を卒業できた場合のことを考えてみよう。

松下政経塾は、周りは東大卒だらけだし、そのほかの大学をトップクラスで出た人たちの集まりだ。その中で上位15%に入らないと国会議員になれないというのは、かなりの激戦だ。

一方、政党の公募候補のほうは、松下政経塾を出たライバルもいるだろうが、選挙区によっては東大を出ているだけで選ばれる見込みもある。比例区の下位などに名前を載せてもらうことだってあり得るだろう。

要するに、ものすごい競争に勝ち残ることより、自分でも勝ち残れそうな選挙区や公募政党を探すことが重要なポイントになる。もちろん、本番の選挙で勝つこととは別問題だが、これについては、風に期待するしかない。実は、東大の医学部を出て、ハーバードも出て、司法試験にも受かってというものすごい秀才が選挙区選びのミスで、2回落選の憂き目にあってしまったそうだ。おそらく何らかの形で復活されるとは思うが、党の内規では、2回落選すると公認が得られないという。

これだけの能力と、情熱があっても、選挙区の選び間違いはかなりのダメージになる。逆にいうと、そういう戦術性をもてば、ただの東大卒くらいでも意外に政治家が転がり込んでくるかもしれない。

さらに政治家の秘書である。なんやかんやいって、秘書が地盤を継ぐというルールはまだ残っているし、世襲批判がおこってなおその傾向は強まるだろう。

ところが、どこの政党関係者や政治記者に聞いても、今は秘書の人材不足が如実だという。

松下政経塾を出たエリートが議員秘書などをやろうとしないという問題もあるのだろうが、東大をでて議員秘書をするなら、議員秘書という種族の人が、公設秘書や私設秘書を含めて国会議員秘書だけでも数千人はいるのだろうが、その中ではきわめて目立ったエリートになり得るのである。

要するに同じ東大を出ていても、周りが東大卒ばかりだと、ただの人(そういう点では東大医学部を出て東大病院に入るのは、好き好んでただの人になるようなものだ)になってしまうが、創業以来初の東大卒などという会社で、利益をものすごく出している会社に入ると最初から幹部候補生のこともありえる。経営者や政治家には東大卒嫌いな人もいるが、それが好き、とくにそういう人間をいつか自分の部下や子分にしたいと思っている人間は大勢いる。

そういう人を探すと、「ただの東大卒」にもチャンスが生まれるはずだ。

世の中というのは、自分の価値というのは多くの場合、絶対的な価値でなく、相対的な価値で決まる。

並の上くらいの美人がモデルクラブに入っても、ただの売れないモデルで終わる可能性が高いが、少し落ちるルックスの人が司法試験(新司法試験)にうかれば、「美人過ぎる弁護士」と言われるだろう。

二流の大学を出て、学生時代売れないモデルをやっていても、市会議員に当選すれば、美人過ぎることになって、国会議員になれる可能性も高まる。売れないタレントが川柳作家や歌人になれば、美人ともてはやされて、財界人や公益法人のトップのバックアップでうはうはの生活をしている人もいるということを聞いたことがある。

私も二人の娘を持つ身だが、お前らのルックスで、「美人過ぎる」と言われるにはどうしたらいいか考えろとしょっちゅう言っている。

人間の価値というのは、その世界での相対的なものと考えている。実際、私も東大医学部合格という受験生にしか通用しないような価値で、50面をさげて生きていけるかを考えて生きてきた。

相対性の理論というのは、本物の相対性理論よりは実社会で役に立つ理論のようだ。