産経新聞を見ていると、櫻井よしこさんが、日本は歴史問題に関して、田中角栄以来36回も謝罪をさせられているという話を読んだ。

確かに日本人としては悔しい。

菅首相の談話については、韓国などでは「相変わらず足りない」とさえ言われているそうだ。

しかし、私は、これからもっと「謝罪しろ」機運が高まるし、日本は謝罪せざるを得なくなると見ている。

一つは、歴史というのは客観でなく主観に基づいて判断されることがある。

中国にせよ、韓国にせよ、とんでもない日本の残虐非業を記した教科書を使って教育を行っている。

ところが、残念ながら、戦争から年月が経過するにしたがって、戦争の真実を知っている人がどんどん年老いて死んでいく。終戦時5歳くらいの子供であれば、実質、戦争については教科書で教えられた通りのものになってしまう。日本軍が教科書で書かれていたほど残虐でないと知っている人は終戦時15歳以上の人だろうからそれがもはや80歳になっている。彼らが教科書で習ったことを疑うことがない限り、彼らの謝罪要求機運はどうしても高いものとなる。

もう一つ、彼らがいくら謝罪要求をしても、こちらがしっかり証拠をそろえたり、あるいは政治家が毅然としていればそれでいいかということが危うくなってきているという問題がある。

要するに、昔は日本が中国製品を買ってやっている客だったのが、今や日本は中国のほうが日本のものを買ってやっている客になっているし、日本の資本家がケチで人件費をけちるために中国に工場を作らざるを得なくなっているという問題がある。

たまたま、2、3か月前のVOICEを読んでいると財部誠一さんの記事で面白いものを見つけた。

財部さんがサムスンの幹部から直接聞いた話だそうだ。

「サムスン製の携帯は日本の部品を使い、日本の技術を応用しているから、頑張っても日本製の85%のクオリティーの製品しかつくれません。しかし、われわれは日本の定価の75%で販売することができる。この10%こそがサムソンの優位性です」

われわれは、75%の定価なら85%のクオリティでも満足できる客を相手にするのか、100%のクオリティなら高くても買う客を相手にするのかを本気で考えないといけない。

値段を追いかける以上、賃金は安いほどいいし、生産拠点を日本から外に出すことになる。

しかし、中国にも韓国にも切り札がある。北朝鮮に工場を作ることだ。中国の10分の1、日本の100分の1の人件費の国がそばにあるのだ。

日本人は、それができない。いまだに東西冷戦時代の発想から抜けきれないからだ。

いい加減、くだらない価格競争をやめて、日本人に高い人件費を払う代わりに、高いクオリティの商品を作ってもらい、高いブランドイメージを保つことと、外需より内需主導の社会に戻さないと、いつまでたっても中国にヘイコラしていなければならなくなる。

そうしないと中国のお客様(彼らは中国の歴史教科書を学んで卒業しているのだ)に商品を買ってもらえなくなる。

しかし、日本製品が彼らの憧れであれば、むかつくけど彼らの商品を買う。われわれがアメリカに原爆を落とされても、あるいは反米運動が盛んな時期でも、アメリカ製品に憧れていたころはアメリカ製品を買うのが夢だった。アメ車にせよ、アメリカの家電にしても、クソ高かったのに買ったものだ。

ところがアメリカの資本家が強欲になって、一般のアメリカ人が貧乏になると、日本ではすっかり反米運動が収まっているのに、誰もアメリカ製品に見向きもしなくなり、強制的に買わされる武器が主力の輸入商品になった。

ついでに言うと、アメリカの資本家が強欲になったのは、冷戦が終わり、累進課税がゆるんでからだ。トルーマンのころは最高税率はなんと93%だった。手元にたくさん残るようになると資本家は郷役になるのである。

前に、中国とフランスが核実験をした際に、日本でも中国製品とフランス製品の不買が起こった。当時の日本人は今ほど貧しくなかったので、中国製の安ものについてはけっこう不買は広がった。しかし、フランスにいくらむかついても、ビトンもシャネルもエルメスも売れた。ワインブームが始まったのもその後だ。

ほしいものを作れるなら、国が嫌われてもものは売れる。

日本の資本家が目覚めて、日本人に高い給料を払って、製品のクオリティを高め、内需を増やし、日本人の消費者の要求水準を高めないで、安売り競争という国際競争力にこだわるなら、内需がどんどんしぼむし、外国(とくにアジアの国)が憧れるようなものを作れないから、慢性的に中国に媚を売らないといけない。

それを日本の保守論陣の連中は気づいているのだろうか(正論の上島さんは私には同意してくれたが)?

日本の資本家がアホである限りは、歴史に戻って、累進を大幅に強めたり、法人税を思い切り高くとって、人件費を抑えても損だと思わせるしかない。

こんなことを書くと、そうしたら日本の会社はすぐに外国に逃げていくという。

LVMHがアフリカの会社だったり、リシュモンが南米の会社で、誰が高い値段でその商品を買うだろうか?

そんなにブランドイメージを大事にしない会社は北朝鮮に本社や工場をおく会社に負ければいい。

ついでにいうと、日本国に税金を払うのが嫌で逃げていく会社やその社長を日本の保守論陣の人間はなぜ売国奴と言わないのだろうか?

資本家がケチであれば、国の誇りなどは守れない。




価格競争を