今年は本の出版ペースが落ちているが、今のご時世売れなければという意識がけっこう強いので、かなり本気で作っている。

『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』もそういう気合の入った本の一環だが、今年、私としては、どうしても多くの人に読んでほしい本を準備してきた。

それが新潮新書の第二弾、『テレビの大罪』が明日発売になる。明日はおそらくかなり大きな本屋さんにしか置いていないだろうが、今週中にはほとんどの本屋さん(今はそれでも小さな本屋さんにこの手の本がいくことはほとんどなくなったが)に並ぶはずだ。

本屋になければぜひamazonででも買ってほしい。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%BD%AA-%E5%92%8C%E7%94%B0-%E7%A7%80%E6%A8%B9/dp/4106103788/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1281363801&sr=1-1

実は、本書は、当初『テレビという殺人鬼』というかなり過激なタイトルをつけていた。

しかし、いつの間にか『テレビの大罪』という穏当なタイトルに変えられたから売れるかどうか心配で仕方がない。帯でも「テレビの無見識のために、年間数万人の命が奪われている」くらいのことを書いてほしいと編集の人に頼んだのだが、これも『「教育を論じる元不良」「政治を語るタレント」「自殺をあおるキャスター」いったい何サマだ?』というありきたりのものになっている。

しかし、私が言いたかったのは、テレビが確実に多くの人を殺しているということだ。

たとえば、テレビがボロクソにいろいろな偽装問題を騒ぎ立てるが、建築偽装であれ、食品偽装であれ、たった一人も死んでいない。

しかし、タレントがウエストサイズを偽装して、それをまだものを知らない思春期の女の子がまねをすることで、大量の拒食症を生んでいることは否めない事実だ。

この飽食の時代に100人もの女性が、それによって、餓死も含めて死んでいる。

そのほか、テレビの現実を無視したキャンペーンが、医療崩壊を招いたり、地方の娯楽を奪ったりしていることを具体的に解説してみた。

ここでは、私が常日頃問題にしている、東京目線、テレビ目線の飲酒運転撲滅キャンペーンへの批判も載せている。

そういえば、私の大嫌いな森喜朗の息子が酒気帯び運転で逮捕されて、県議を辞職したそうだ。

でも、いくら森喜朗が、「知育より体育だ」といって、文教族のドンとして日本の教育をゆがめてきたからといって、その子育てが悪かったとか、ザマ見ろという気にはとてもなれない。

報道でしか事件のことはわからないが、朝の10時半にコンビニにくるときに、勢いよく乗りつけて、車止めを越えて店に突っ込んだという風に報じられている。

この時間帯で、酒気帯び(酒酔いかもしれない)ということは、おそらくは朝まで飲んでいて、ちょっと仮眠した後で、おなかでもすいてコンビニに買いに行ったか、一晩どこかで過ごして寝起きにコンビニによったのか、あるいは本当にアルコール依存で連続飲酒をしていたかというところだろう。

私の場合は、相当な二日酔いでも運転が下手になることがない(今のところ)だが、でも、休みの日などは(彼のつっこんだのは7日土曜日の朝だから、金曜日の夜に深酒をした可能性が強い)、二日酔いのまま運転することもある。通常は、家族を駅に送ってと言われて、「あいよ」という感じだが、さすがに私の家から駅までは検問はやっていないが、万が一接触事故でも起こして、機械で調べられたら、そういう反応が出るかもしれない。

要するに、事故を起こしたことは問題だが、飲んだ翌日の朝に、ちょっとコンビニに車を出すことが、そんなに悪いこととは思えない。彼だってバカじゃないから、お酒を飲んだまま夜に運転したというのと話が違う、午前10時代の話である(地方だと正月でもないのに、朝食と一緒に酒を飲むことがあるのだろうか?)

また仮にアルコール依存症であったなら、罰するより治療のほうが大事だ。

ということでアルコール依存症を治療すべきなのに、政治家やタレントにレッテルを貼ってはいけないというテレビ局の「配慮」のために、アルコール依存症の危険について報じないこともこの本で書いた。

我々の診断基準は、本当に廃人同然になってからアルコール依存と診断するのでなく、これ以上ほうっておくと、まずい結果になりやすいところで診断する。血圧が高いから必ずしも、早死にしたり、脳卒中になったりするわけではないが、ほうっておくとその確率が高まるから治療するのと同じ原理だ。

お酒を飲んで素っ裸になって、警官と喧嘩するなどということが、「お酒を飲めば誰でもよくあること」ではなく、ほうっておくと危険だから治療を勧めるのは当然のことだ。

ちなみにアルコール依存症は自殺も含めると万単位の命を奪っている。

そのほか、世界中の先進国の中で、日本だけが国連やWHOの自殺報道のガイドラインを守らず、世界の先進国(ロシアは入らないものとして)の中で、自殺が最も多いという現実も書いておいた。

テレビを批判するタネとしても、飲み屋で話題にするタネとしても、けっこう使えると信じている。

ぜひご一読を。