昨日のブログの続きだが、日教組支配と新学力観が結びつくと怖い。

先日、話題にした宮川氏が山梨の教育がダメな点として挙げたのは、不登校が日本一ということだった。

私は、この不登校や校内暴力の増加が、実は内申書、とくに文部科学省が新学力観というものを持ち出して以来の内申書と強い関連をもつと考えている。実際、これらが、とく中学生の間で、急激に増え始めたのは、93,94年ごろからだ。

この新学力観のおかげで、ペーパーテストで満点をとった子供でも、最悪の場合、25点しか内申点がつかなくなってしまった。要するに、意欲や態度、表現など教師の主観でつけられる点が全体の75%、ペーパーテストだけでつけられる点が25%になった。子供たちが教師の目を常に気にしないと、地元の名門進学校や、公立の学校に行けないということになった。これは、優等生や家が貧しい子には死活問題である。

かくして、その採点方式が採用されて、1年、2年と経つうちに校内暴力、生徒間暴力がとくに中学生の間で顕著に増えていった。それに1年から2年のタイムラグで不登校も増えていった。これは、新学力観による心理的ストレスのほかに、学校が荒れているのが怖いというのが不登校の重要な要因だということも示唆している。

それが山梨で一番多いという。要するに、組合が強い分だけ、組織が強い分だけ、教師に穏当な内申点をつけさせる力が働かないのか、あるいはそういう風に親や生徒が思っているということだろう。

もちろん、これは右翼が教師の圧倒的マジョリティである県でも、ある宗教の信者が多い県でも同じことが起こりえる。しかし、これについては100%近いマジョリティになることはほとんどないだろう。

改めて新学力観の怖さを感じたが、それが2002年のゆとり教育ではさらに強化され、今回のゆとり見直しの学習指導要領でもほとんど変わっていない。唯一変わったのは、たとえば京都の堀川高校では内申点を入学時にみないと謳っているし、急伸した日比谷高校でも内申が悪くても入れる枠を残しているという程度である。要するに内申が悪いが勉強のできる子を私立に取られまいという工夫は始まった。しかし、高校無償化と不景気で、どうしても公立高校に行きたいと思う、親も子も、先生の顔色を3年間伺っていないといけない現実は何も変わらない。ゆとり教育以上の大問題だというのに。

さて、テレビを見ていたら、児童虐待をどう防ぐかというような話をやっていた。児童相談所のスタッフ不足を論じているところから見たので詳しいことがわからないが、次のコーナーでは、それを見抜くことに腐心している医師たちの姿も映されていた。しかし、見つけたところで、児童相談所にアメリカのような強制力がないのなら、せいぜい説諭で終わって、逆に子供が裏でよけいに虐待されかねない。アメリカのようにその疑いがかけられたら逮捕されるとか、あるいは近所が知っていて通報しないと罪になるとか(これも州によるようだが)、でもない限り、医者が見つける努力をしても結果が空しいように思えてならないのだが。

さらに虐待の連鎖を止めるためのカウンセリングの名医として斉藤学氏が紹介されていた。

前にもふれたアダルト・チルドレンということばをはやらせて、親に勉強しろと言われただけで、「見えない虐待」でアダルト・チルドレンになるなどというようなことを言って、日本中に自称アダルト・チルドレンを乱造し、多くの精神科医から抗議を受けて、週刊誌で二度とアダルト・チルドレンとは言わないと宣言した医師だ。

今回も、虐待する親はほど100%自分も子供時代に虐待を受けていると断言し、VTRでは、カウンセリングで虐待をしなくなることが強調されていた。

いい加減なことを言うような人でも臨床ができることはあるし、斉藤氏がその手の名医なのかもしれない。

しかし、アメリカでさえ、それがうまくいかなくて虐待の連鎖が止まっていないのも事実だ。

私にはカウンセリングで虐待を止める腕があるというほどの自信はない(ある一定の比率でなら治せるだろうが)。私が名医と言えなくてもスタンダードレベルとしても、そんなに虐待をカウンセリングだけで治めることができるとはとても思えないし、精神科医の数や力量、そして時間のなさを考慮しても、精神科医や臨床心理士の力で虐待の連鎖が止められるとはとても思えない。

まして、今や日本の精神科の医局で精神療法が専門のところは一つもない。ろくにカウンセリングを習わずに精神科の医者になる人間がゴロゴロいるのである。

虐待の連鎖を止める、現実的な、おそらく最良の方法は、子供を施設(この言葉の語感が日本ではとても悪い、チャイルト・ケア・アンド・エジュケーションセンターとでも呼ぶか?)で育て教育することだ。10万人分で十分だろうから、数千億円で、将来の犯罪を減らし(アメリカでは人工妊娠中絶が合法化してから15年ほど経ってから少年犯罪が激減し、約20年後に凶悪犯罪が激減したことは統計上はっきりしている)、税金や社会保障料を払える大人になれる子供を確実に増やすことができる。

アメリカでは母親が産後6週間で復職してもほとんど子供に知的、情的に問題が生じないという統計が出ているが、それはチャイルド・ケアセンターの質がいいことが条件になっている。

母性に頼るより、質のいい施設のほうがまともな子供になるし、日本の社会に害を減らし、社会に役立つ人間を増やす(こんなことを書くと、そういう視点だけで子供を見るなと言われそうだが、子供だって大人になってからの時期のほうが長いことだけは確かだ)。

何度も言うが、国が本気でそういうことを考えるなら、私は彼らが受験で成功するのに協力することは惜しまないということだけは、あえて宣言したい。