共産党の宣伝がさっぱり有効でなかったことを書いたが、昔から保守政党と比べて、革新政党と言われるところはプロパガンダが下手である。

たとえば、昔の美濃部都知事という人は、老人医療費の無料化をやったが、そのせいで病院が老人のサロンになったと叩かれ、膨大な赤字を作った人とこきおろされた。

病院が老人のサロンになったというのは、病院の待合室の高齢者が元気だったからなのだし、待合室の患者さんが増えたからだ。

これは要するに高齢者が急に病気になったということでもないし、仮病を使って病院にたむろしたというわけではない。要するに、高血圧や糖尿病の患者さんが医者に来るようになったということだ。彼らは外見は元気な高齢者とほとんど変わりない。それが薬をもらいにきただけである。待合室で元気でほかの患者さんと談笑するのは当たり前だ。もし血圧の薬をもらいにくる高齢者がいかにも病気のようで元気がないとしたら、その医者が藪医者で薬を使いすぎていることにほかならない。血圧は高い時は元気だが、下げすぎるとたちどころに元気がなくなる。

それまでこういう患者さんが医者に来ていなかったとすれば、無料化の効果は非常にあったことになる。こういう患者さんが医療費を惜しんで薬を飲まなかったから、以前は平均寿命は低かったし、また仮に脳卒中で死ななかった場合は、亡くなるまで入院ということになるので、そっちのほうが医療費がかかってしまう。

美濃部さんのせいで高齢者が長生きするようになって、それで迷惑だというのなら、そういう風に堂々と言えばいい。あいつのせいで、高齢者が血圧の薬をもらうようになって、死にぞ来ないが長生きして、年金財政も医療財政も逼迫したと言えばいいのだ。そういう勇気のある保守政治家やマスコミの人はいないで、代わりに、医者に来る必要がない人が医者に来て、遊んでいるという出まかせのプロパガンダを流した。

さて、美濃部さんが赤字を作ったというのも実はうそで、高度成長期の東京都は富裕自治体だった。よその自治体がまねをして老人医療費をタダにするのでよその自治体を赤字にしたという批判ならあてはまるが、都の財政をめちゃくちゃにしたというのも嘘である。確かに赤字になった年もある。それは第一次オイルショックで税収が減ったせいで、福祉のやりすぎのためではない。

むしろ次の都知事はその20倍、2兆円ほどの借金を作った。

今のお台場の開発など、公共事業への投資のためである。

それがもとが取れたのかどうかはわからない。ただ、公共工事で作った赤字は騒がれないのに、福祉で作った借金はその20分の1でも大騒ぎをされるのはどういうことだろう。

今回も民主党は子供手当その他でばらまきと言われた。民主党が消費税を上げてもばらまきに使うだけだと自民党は攻撃した。

しかし、自民党の公共事業はばらまきではなかったのか?結果的に900兆もの借金を作り、40兆円もの税収不足や毎年国債の償還と利払いで20兆円もかかっている。

プライマリーバランスを消費税で賄おうとすると現行のろくに福祉もなく、教育費や医療費もヨーロッパと比べ物にならないくらい高い状態で、18%の増税をしてプライマリーバランスがとれる状況だ。
民主党のばらまきによるものはそのうちくらい1%だろう。国債の利払いだけで、消費税4%が飛んでしまう。

今の財政赤字は自民党が作った借金のせいで社会保障や給付のためではないとどうして民主党は言えないのだろうか?

社会保障というのはかかるように見えてかかる金は知れている。それに比べて公共工事のほうがはるかに金がかかるし、借金のタネになる。

自民党が作った借金は自民党が返せとか、そのおかげでどれだけ自民党の専業政治家が立派な家に住んでいるのかというのをどうしてプロパガンダできないのだろう。

後、今後の救貧対策や予算配分を考えると、実は貧しい人に月に20万円の金が入るようにするのに、直接給付のほうが、そのために工事をするよりはるかに安上がりである。

お金がない以上は、ばらまきのほうがよほど安く上がるのである。

それにしても、自民党は800兆円も借金が膨らむほど公共工事をして、そのインフラは今一体いくらで売れるのだろうか?

売れるものを売るのも借金返済の一つの手段なのだが、これも話題にあがらないのは、官僚の情報操作の一環なのだろうか?