カープファンになってよかったことは、市場原理、競争原理、規制緩和グローバル・スタンダードのペテンがよくわかったことと、弱者に対するフォローがなければ競争の機会均等も得られないし、競争自体が活性化しなくなるということがわかったことだ。

選手の自由とか、規制緩和とかいって、逆指名とか、フリーエージェントを採用して、結果的に強いチーム、金のあるチームが余計に強くなり、そうでないチームはどんどん弱くなる。

おそらく今の日本のように経済も生産性も低くなった国が、同じことをやれば、欧米に、あるいは中国にさらに負けていくだろう。中国などは、自分たちは弱いと開き直って、鼻から自由競争のルールに入ろうとしない。人民元の切り上げも微々たるものだし、弱い国ほど損だと言って、CO2の排出規制も守ろうとしない。

地方と都会の関係だってそうだ。今のまま、地方分権をやったとして、たとえば消費税0とかいう県ができたり(みんなその県に買い物に行く)、カジノもポルノも売春も解禁した県ができるくらいの「自由化」があればともかくとして、自由競争は弱い県を余計に弱くする。

でも、全体として競争が活性化し、経済が活性化するという人もいるが、あまりに差がつくと、下のほうの人間は努力しなくなるというのは往々にして見られる現象だ。実際、カープは、戦力の差を練習で埋め、都会のチームが打てる、守れるという選手を取っていくのに対して、守備では負けない、藻類では負けないという形で、素質の部分を練習で補うチームだった。いくら頑張ったって、戦力的に勝ち目がないと思ったせいか、最近のカープはかつてほど練習をしないのだろう。エラーで負ける試合がやたらに多いし、少なくとも、走る、守るのチームではなくなった。

本当にできのいいバッターやピッチャーにとって、相手が弱すぎるとやる気がなくなったり、試合をやっていてもつまらなくなるということも起こる。高校野球のようなチームと試合をやりたくない名選手は次々と大リーグに出て行ってしまう。

結果的に競争原理と規制緩和が野球をつまらなくして、視聴率だって落ちる一方だ。

どうせ、自由競争とか規制緩和というのなら、ドラフトもなくし、フリーエージェントもいつでもできるようにすればいい。前田健太だって来年いきなりフリーエージェントでとれるという話になる。

そうなれば、巨人が120勝10敗くらいで、6月位に優勝が決まって、そうでなくても落ちている視聴率がもっと落ちる。あるいは、よそのチームの投手がぼろぼろのせいで、ホームランを90本くらい打つ選手も出てくるかもしれないし、4割どころか5割バッターも出てくるかもしれない。そういう記録がたとえば王や落合の記録を塗り替えたということになるのだろうか?

それでも、嬉しいのがジャイアンツファンだ。彼らは1番から9晩まで、全部よそのチーム出身だって、外人だって、ジャイアンツという記号を応援しているから幸せだ。

もう一つ、カープファンとして気づかされるのは情報操作だ。

大リーグが、放映権もリーグ管理、金満教団が貧しい糾弾にお金を渡すシステム、完全ウェーバー方式のドラフトが採用されていることは、ほとんど報じられず、フリーエージェントはグローバルスタンダードという情報だけが意図的に流される。

消費税が高いのは当たり前のように報じられるが、それは医療も教育もほとんどタダのヨーロッパの話だ。医療費も教育も高い(それでも義務教育は日本より安いくらいだ)では、もちろん10%もいかない。また法人税が日本だけ高くて国際競争力に劣っているというが、日本より安いヨーロッパは企業が莫大な社会保障費を払っていることも報じられない。そしてそれをあまり払わないアメリカは日本に近いくらい法人税が高い。

要するにプロ野球は、日本のマスコミと財界のペテンの縮図である。実際、財界というのは、巨人ファンしかいないといっていい状況なのには驚かされる。そういう発想の人ばかりということだろう。

増税より、支出を減らせ、ムダを減らせという話が出ると、ほとんどが公務員の人件費が高い、公務員が多いという話になる。

実際は、公務員の数は、人口当たりでアメリカより少なく、ヨーロッパより軒並み少ない。

給料だって、民間が下がった(その代わり企業の利益は増えた)だけで、たとえばヨーロッパと比べて高いわけではない。おそらく公務員の給料が5%下がったら、民間も5%下げろという話になっていたちごっこになるだけだろう。

議員定数や議員の歳費を下げるのは、確かに政治家の人材レベルを考えると妥当な話だが、あまりに節約できる金が少ない。100億か200億減らしても焼け石に水だ。

実際、日本人は国家予算が、一般会計だけだと信じ込まされているが、その4倍もの特別会計がある。
たとえば、2009年の特別会計は歳入が370兆、歳出が355兆円である。

また、特別会計も一般会計もさまざまな重複があるので、純計というものでみれば、その規模が半分になってしまう。この重複の正体がよくわからない。つまり、いろいろと数字が自由にいじれて、実際の金額がよくわからないようになっている。さらに、この特別会計については、財務省も国会も事実上ノーチェックの金なのだ。

役人たちは、公務員批判は甘んじて受けるし、給料が高いという批判も受けるだろう。しかし、そういうわかりやすい情報を流しても、370兆円もある特別会計の情報は流さない。

多少の犠牲は払っても、ホンチャンの権益は譲らない。この情報操作能力がすごいわけである。

日米の昔の密約が公表されたが、あれも本当の肝心な部分は公表されていないらしい。適当に出してもいいものを公表すれば、公表したことになる。マスコミにつっこみ能力がないから、それで報道機関の役割を果たしたことになるのだ。


日本中で、広島に住んでいる人(こういう人は、逆に疑いの能力をもてなかったり、カープファン以外の人に押しつけがましくなることも珍しくないようだが)以外に、カープファンがせめて10倍くらいに増えてくれれば、世の中のペテンがもっとわかるようになると思うのだが。

と、ここまで書き終わったところで、たった今、外国人による生活保護の不正受給の疑いで、「民主党政権では日本は解体する」というメッセージをいただいた。

ご心配の気持ちはわかるが、こういう(特別会計と比べると)微々たる無駄のニュースを意図的に流すのが、役人のやり方だ。

実際、生活保護費にしても半分以上が医療扶助だということは誰も伝えない(賢い読者の方で、それを伝えてくれた方はいるが)。

貧しい者同士が足の引っ張り合いをしても、微々たる無駄しか削れない割に、福祉がどんどん削減され、その上、無駄を省いてもやはりお金が足りませんでしたということになって、増税までされる。

弱い立場にいるほど、貧しい立場にいるほど情報操作に敏感にならないといけないというのが、カープファンとしての私の教訓だ