消費税5%分の増税で得られる収入、12兆円程度の金なら「天下り補助金12兆円の廃止、もしくは自治体との二重行政でまったく存在意義のない地方整備局・農政局の維持費12兆円など、官僚利権の一角を崩すだけで簡単に捻出できると存じますが」という親切なメッセージをいただいた。

私自身も、そんな話はいろいろな方向から聞いている。それがすべて削れるものなのか、本当に必要な金額がどのくらい混じっているのかについてはまったく判断できない。

実際、こういう景気のいい数字は、民主党も昨年の衆議院の選挙の前には言っていた。20兆円ねん出できるという公約である。それが、18日の仙谷氏の談話では、せいぜい2兆円という話になっている。事業仕分けもはでに見えるが、微々たる金額しか無駄は削れていない。

それが調べてみると本当に削りにくい金だったのか(官僚の説明を聞いての話だろうが)、それとも民主党にとっても利権だったのかは闇の中だ。

佐藤優氏や鈴木宗男氏が問題にし、野中広務氏が月5000万円といった官房機密費ですら、民主党政権になってもまだ明細を明らかにしようとしない。自民党に3億円も持ち逃げされているのだから、小沢氏や鳩山氏が叩かれていた際に、おいしいカウンターパンチになるはずなのに、表にできないということは、小沢氏や鳩山氏の金の問題以上に胡散臭い金である。しかも、それがマスコミに流れているのが明らかになっている。そしてマスコミは、この問題にはずっと口をつぐんでいる。

もちろん、彼らが官僚に取り込まれたのか、利権のおいしさを知ったのか、それとも、いろいろなことをネタにやくざやマスコミに脅されたのかもわからない。

いずれにせよ、この国で金の流れを大胆に変えるのは、それくらい難しいことなのだろう。若いころから性欲もなく、奢ってもらうことも含めてお金には完全に潔癖で、しかも、やくざ命を狙われても平気というような人ですべて大臣を固めるくらいの政権ができない限り、日本の改革は難しいのかもしれない。

さて、このような問題意識を強く持って、日本の改革を望んでいる人に波頭亮さんがいる。

その波頭さんの新刊『成熟日本への進路』の冒頭で、面白いアンケート結果が紹介されていた。

「自力で生活できない人を国が助けてあげる必要はない」と思う人の比率が日本は世界一だったという。なんと日本人の38%がそう答えたそうだ。アメリカですら28%で、先進国で(発展途上国でもそうだそうだが)この問いにYESと答えた人が10%を超えた国はない。中国でも10%弱だったそうだ。

アメリカは国が助けない代わりに、寄付額は世界一。日本は貧困による自殺率が世界一。そして、日本では寄付をしない金持ちが断罪されるどころか、寄付税制がないせいになっている。アメリカの金持ちが寄付税制で得られるメリットよりはるかに多額の寄付をしているのも報じられず、寄付をしない金持ちがバカにされることも報じられず、寄付をしない金持ちが日本ではセレブとあがめられる。

ヨーロッパでは当たり前の児童手当が、たった26000円配るだけで、無駄の権化のように断罪される。

金持ちのありようを批判すると、批判メールが膨大にくる。

日本は相続税が高いせいで、京都の町屋がぼろぼろになったとかいうが、評価額を考えると京都の町屋を一軒継いでも、今ならおそらく相続税がかからないくらいだろう。むしろ兄弟の平等相続(これも賤しいから町屋を守るために相続放棄をしないのだろう)や、バブル期に異様な地価になった(これも金持ちの仕業である)のが町屋がぼろぼろになったのに、誰もそうは思わない。

日本の金持ちの洗脳力は世界一だ。おそらくヨーロッパなら暴動が起きていたり、共産党政権ができているかもしれない。

先進国でいるためにはある種のルールを守らないといけない。ギリシアが破たんしたのもEUに居残る条件に合わなかったという要素も大きい。

日本は先進国と思われたいために、さまざまなコストを払っている。

クジラを捕りたいのを我慢しているのも、核兵器を作らないのもその一つだろう。

それどころか、日本はこんなに金のない借金まみれの国なのに、集団的自衛権に金を使ったり、あげくには国連の安保理の常任理事国になろうとしたりしている。

そこまでして、先進国でいたいのだ。

でも、アメリカが例外なだけで、先進国というのは、貧しい人を放置してはいけないことになっている。(アメリカですら、カトリーヌの際は、アメリカにこんなに貧困が残っていたのかと多くの市民が驚き、これでは先進国と言えないという声が出たそうだ)

不愉快かもしれないが、税金で貧しい人を助けるのは先進国に残りたい祭の条件なのである。

それが嫌なら、先進国から「いちぬけた」をすればいい。

シンガポールは野蛮国といわれても、自国の治安を守るために、むち打ち刑を残している。

先進国をやめれば、貧乏人を放置しても、貧富の差がいかに大きくても、マスコミが金持ちのための意見を流し続けても、北朝鮮のように周囲からバカにされるだけで、それ以外の実害はない。

金持ちの皆さん、「もうそろそろ先進国をやめましょう」とおっしゃったらいかがですか?

途上国では、奴隷さえ残っている国もあるのだから、あなたがたの本望でしょう。

北朝鮮でさえ滅ばないから、そうなっても日本は滅びませんよ。

それにしても、大新聞とテレビで貧しい人の味方のところが一つもないというのは、やはりすごい国だ。勉強のできない奴の味方の新聞やテレビはいくらでもあるのに、これも金持ちがバカ息子に跡が継ぎやすくするためにも、国民の愚民化のためにも重要なのでしょうね。