自民党も民主党も政権公約では、消費税を上げて、法人税を下げるという。

さて、これで企業の競争力を高め、財政を再建するということになっているが、果たして本当だろうか?

中途半端な消費税の増税では財政再建はほど遠い。

10%にするということは5%のアップだから、税収としては10兆から12兆の規模だ。国の赤字が50兆円近い上に、消費税を上げることで、国内消費は落ち込むことや、後述のような理由で企業の利益がしぼむ上に法人税まで下げるから、税収の落ち込みはさらにひどくなる。結局5%消費税を上げても、抜本的な財政改革とか、道路を新規でつくらないとか、思い切った大ナタを振るわないと40兆円以上の国債を発行する状況には変わりがない。つまり、それでも毎年40兆円ずつ借金が増えるのである。

つまり、財政を本気で再建するには、消費税を16~20%増やさないといけない。つまり消費税率20%以上の社会にしないといけないのである。

アメリカの消費税が多くの州で8%前後ということを考えると随分な税金だ。

ヨーロッパは軒並み消費税が20-25%だが、医療費はほとんどの国でタダ、教育費も大学までタダ、失業手当も手厚いし、保育園も介護施設も充実している。児童手当も日本の子供手当など屁のように思えるくらい手厚い。たとえば、フィンランドでは、過疎地だと、学校に通うタクシー代まで国が払ってくれるし、大学生になれば給与奨学金もかなり出るし、家賃補助も手厚い。

しかし、日本は、これまでの政権の借金を返すために、20%以上の消費税を払って上記のサービスは一切ない。

どんな金の使い方をしてきたのか?

ということは、これからの高齢者がさらに増え、年金や医療費の負担増があるのに消費税を20%にしても足りないのだ。

もちろん、これだけ福祉もなく、教育費もかかる状況で消費税を上げられれば、ますます消費が冷え込む。

さらに、企業にとってもつらいことも多い。

たとえば内税で10万円のテレビが消費税が10%になると104762円になる。

昔のようにメーカーが価格統制できた時代と違って、家電量販店のほうが力関係が強ければ、当然、5%とまではいかなくても3%くらいの値下げ要求はくるだろう。売り上げの3%コストを減らすというのは、利益の30%くらいのコストになる。法人税を10%程度引き下げてもらっても、そんなものは吹っ飛んでしまう。もちろん、それでも多少は値段が上がる上に、福祉もよくならないのでは、消費そのものも減るだろうし、結局のところ利益を出さないと法人税減税のうまみが得られないのが、利益そのものが出なくなる危険が大きい。

勢い、ますます日本の製造業は外需頼りの構造になっていくだろう。すると、中国に頭が上がらなくなるし、為替のリスクが非常に大きな状況が続く。

消費をするほど税金をたくさん払うことになる消費税の発想では、内需は絶対に増えない。

結局のところ、金を使っていない金持ちから税金をとるか(金を使っている金持ちから税金を減らせるように経費を大幅に認めて、累進課税を厳しくするという手がある)、相続税を大幅増税するしかないはずだ。1年間の相続財産が約80兆円だと考えると、半分税金にできただけで、消費税を1円も上げなくても、財政は健全化するし、お金を残すと税金にされるなら、消費のインセンティブになる。

金の海外移転のリスクについては、そこに税金をかける方法やチェックする方法はいくらでもあるだろう。それをすることで第三国経由で北朝鮮に行く金も止められる。

問題は、民主党も自民党も、中途半端な消費税増税と、法人税の引き下げを公約にしていることだ。

この選択肢のなさが日本の最大の病理といえる。