本日も激励のメッセージやおほめの言葉をいただき、機嫌がよい。

批判メッセージを開けようとせず(特定の人からきたものだけだが)、この手のファンレターのようなメッセージだけ開けようとするのは、自己満足と言われそうだが、もともと原稿料がタダで書いているブログで自己満足さえできないのなら悲しいし、不機嫌なときはろくなことを考えないので、このスタンスを通すことにする。

「以前予備校の授業で日本史の講師がゆとり教育の真の目的について語っていました。
その講師によると、当時の文科相(名前は忘れました)が『天才は100人に1人いれば十分。あとは寛容で実直な人間でいてくれればいいのだ。』と言っていたそうです。
これについて和田さんはどう思われますか?」

というメッセージをいただいた。

おそらく、これは、『機会不平等』(斎藤貴男著)に載っていた、斉藤氏と三浦朱門氏(ゆとり教育時の、教育課程審議会会長、後文化庁長官)とのやりとりのことだろう。

寛容で実直といったか、勤勉で実直と言ったかわからないが、三浦氏の考え方では、これまでの教育は「できん子に力を注ぎすぎた」とのことで、ゆとり教育というのは、できない子を救うためではなく、教師ができない子に手をかけないで済むように、相当なバカでもわかるレベルに落としたということらしい。その代わり、できる子を限りなく伸ばしたいという意図があったらしい。

私自身、ゆとり教育論争の真っ最中に、文部省側のゆとり教育のスポークスマンとされた寺脇研氏と対談したことがあるが、その際に、寺脇氏は、ゆとり教育は規制緩和だと言い切った。

これまでの学習指導要領は、この内容の通りに教えろという、学校を縛るものだった。

ところが、2002年からのゆとり教育の学習指導要領は、最低基準であって、ここに書かれている内容さえ教えれば、それ以上は何を教えてもいい。

これは、三浦氏の言説と一致する。

できない子には最低基準を、できる子には上を何を教えてもいい。

たとえば、昔は難関大学の入試問題であれ、名門私立中学の入試問題であれ、学習指導要領の範囲内で教えないといけなかったのが(それに違反する学校は多かったが、形式的に始末書などを書かされたようだ)、2002年度以降は何を出題してもよくなった。

結果的に、才能のある子がいくらでも伸びるようにはならなかった。

ほとんどの学校で最低基準のはずのゆとり教育のカリキュラムを標準として使用したからだ。

すると、逆に、たくさん教えればもっと伸びたはずの「天才」「才能のある子」が伸びるチャンスをかなり奪われた。

では、どういう子が伸びたのか?

一つは、たまたま通っていた学校が、ゆとり教育以上のことを教えるという意欲ある学校だった子だろう。たとえば、かつて陰山英男先生を校長に迎えた尾道の土堂小学校のような学校だ。

でも、そんな公立学校は、ほとんどなかった(全体の1%くらいだろう)。

あとは、私立の学校、中高一貫校、塾だけは教える内容をむしろ増やしたりしている。

要するに、それが利用できる都会の子と金持ちの子だけが、「伸びるだけ伸ばしてもらえた」のだ。

そして、三浦氏のいう99%の子供は、知識社会といわれる、知的レベルが高い人以外の職場のない21世紀型社会で職にあぶれる。

アメリカでさえ、大量の失業者が出るのを恐れて、基礎学力重視の、できない子対策に90年代から力を入れたし、イギリスの教育改革もその形をとった。

日本は政治家も文部官僚も、世界を見る目がなかった。

寛容で実直な人は食べられないのが今の世の中だ。

そして、貧乏をするうちに、人間というのは、寛容さを失うことが多い。

日本は世界のうちで圧倒的に格差が少ない国だと主張する人からメッセージをいただいた。

統計上、それに近い話があるが、少なくとも貧困率は高い。

また、松下幸之助が一生かかって稼いだ金を5年や10年で稼げるようになったし、最高税率も88%が50%になっている。

この間も医療の世界の大物の人から、80年代には、日本の上場企業の社長の平均年収は1600万円で、医者の平均年収と同じだった話を聞かされている。ちなみに今は4,5000万円。手取りでいくと4倍くらいになっているそうだ。

なのに寄付が減っているのに、格差が減ったからだというのはどう考えても納得できない。

まだまだ格差が十分大きくないというのなら、私はそう思わないが、間違いではない。

しかし、昔と比べると格差は確実に増えているし、金持ちのもつ資産もずっと増えている(土地が過大評価されて、資産が非常に多く見えていた人はいるが)。

一つだけ言わせてもらうが、私も多くの成功した起業家にあっているが、初期の動機が、子供に継がせるためという人は一人もあったことがない。

成功してから、子供に継がせたいということに考えがシフトする人はいくらでも見たことがあるが。

相続税が100%になると起業する人がいなくなることは人間心理を考えるとあり得ない話だ。

普通の発想なら、外国に逃げて恥をかくか、名誉を残すためにどうするかを考えることだろう。

後者が一定の割合でいれば、寄付は増えると私は信じている。

「能力が無い奴が受け継いだ財産なんて、頭いい奴に吸い取られて早晩無くなるのがオチなんだから
余計な事する必要ないと思いますが 」

という意見ももっともだが、私が知る限り、何百億、数千億の財産を受け継いで、頭いい奴に吸い取られた例は、みんな外国の頭いい奴に吸い取られて、日本の国益にならなかったことも伝えておきたい。