あてになる投手がろくにいなくてボロボロの広島の救世主に高橋健が頑張っている。

こういう投手は本当に抑え向きだ。昔の大野のようで、こういう渋いピッチャーをみていると、どうせ金のあるチームしか優勝しないのはわかっていても、野球を見る気がしてくる。

それでも41歳だ。大野は43歳まで現役を続けたが、いい新人もとれないだろうし、ろくな補強もできないというチームの事情以上に、本当に頑張り続けてほしい。

私は高橋建より9歳も年上なのに中年の星と思ってしまうのはどういうことだろうかとふと自嘲してしまう。

昔、『野球狂の詩』というマンガがあった。

水原勇気なる女性投手が出てきてからは、旧来型のヒーローもの(この場合はヒロインだが)のマンガになってしまったが、岩田鉄五郎という50歳くらいのピッチャーをとりまく、東京メッツという弱小チームの話はペーソスあふれるものだった。

私が応援しだしたころの広島カープは、ボロボロの弱小球団だったが、別当といういかにもインテリの監督(実は、それまでは左門豊作が好きで、大洋のファンだったので、別当につられてファンになったという変わった経過がある)が入ることで、優勝を争うようなチームになった。結果は最下位だが、確か優勝したチームと6、7ゲームくらいしか離れていない激戦の年だった。

別当という人もある種、野球狂の詩に通じるところがある。1000勝監督でありながら優勝経験がない。慶應出のインテリ監督で、HOYAのメガネの宣伝に出るくらいメガネの似合う監督だった。弱いチームの監督ばかりを引き受け、そこそこ戦えるようにするが、やはり選手層の薄さは否めない。

翌年は森永という、頭の悪そうな監督がきて、ダントツの(この表現はおかしいが)最下位に戻るのに、翌年に赤ヘル旋風で優勝する。(森永が監督のときに嫌気がさして、まったく応援しなかったので、強くなってから応援した現金な奴と思われていた節がある)

若々しくて、走って、守ってという感じのチームは、これが本当の野球なのだという感じをもった。

広島の選手でありながら国民栄誉賞をとった衣笠という人がいる。連続試合出場が世界記録だそうだが、ファンから見ても、自己チューとしか言いようのない記録の作り方だった。

87年にこの記録を作るのだが、86年の打率は2割1厘、長い間1割台だったくらいだ。こんな選手を出し続けないといけない(控えにいい選手もいたのに)広島の事情を考えず、記録ができると持ち上げる、広島以外のファンにむかついたことがある。

そのうちに、フリーエージェントやドラフトの逆指名が始まり、カープが暗黒に戻る。まだ衣笠がごり押しで出続けていたころは強かったし、余裕もあった。

そして、弱くなり始めの頃に大野が老体(といっても今の私より若いのだが)に鞭を打って、一人気を吐いていた。連敗のときに、大野が出てくると、それが止まる。

どうしようもないチーム状態の中、この手の超ベテランに頼って、なんとかビリを免れる。

今年は勝率3割とかを覚悟していた(そうなるかもしれないが)だけに、本当に高橋建がありがたい。

今日はどういうわけか高橋の活躍をみて感傷にふけってしまった。

どうせ、今年もカープは優勝争いに参加できないだろうし、フリーエージェントを廃止して、ウエーバーをやって、アメリカのように金満チームから貧乏チームに分配金がくるなどの制度が重ならないと二度と優勝なんてことがないから、野球を見るのはやめようと何度も思ったが、こういう選手がいると、ちょっと魅かれてしまう。

私にとっての、『野球狂の詩』なのである。