廣済堂の健康人新書から、『家族がボケる前に読む本』というのを出した。これは、自信をもってお勧めできる認知症にまつわるさまざまな知識や、認知症になった後に知っておいてほしいことをまとめた本だ。私くらいの年代で、親が80前くらいの人は一応読んでいただけると幸いである。

昨日のブログで、もう少しましな処遇のできる施設をもっと作るべきということを書いたら、特別養護老人ホームの入居者で精神的、身体的に改善する人がいるのかという質問をいただいた。

高齢者医療の難しい問題として、若いころのように完治というのは確かに少ない。認知症の場合は、進行が遅いことはあっても認知機能が改善することは原則的にない。

ただ、初期認知症にうつ病が合併しているようなケースでは適切な医療と介護で劇的に改善することがある。ただ、通常は抗うつ剤が必要なので、特養だけでよくなるかは多少難しいかもしれない。しかし、よい介護を受けると認知機能がよくなる人は確かにいる。

とくに不穏や問題行動については、介護がよいと劇的によくなることがある。ただ、そういう人がホームを出て家に戻った時に、おちついたままでいられるかは難しい点もある。どうしても、いろいろなことができないのを見ていると家族がいらいらしたり、冷たくあたることは珍しくないからだ。わざと虐待をするわけではないが、結果的に不穏の原因になってしまうことがある。

身体機能はそれこそ介護次第で、車いすに乗れるようになる、杖歩行ができるようになることは珍しくない。

総じて日本の特別養護老人ホームは、マンパワーと予算がないのによくやっているほうだと思う。だから、いったん入居すると長く生きてしまうから順番待ちが解消しないというパラドックスが起こる。

それともう一つの問題は、あまりに足りないので、よくなって自宅に帰ると、また入居するのに順番を待たないといけなくなる。そういうことで特養入所が既得権のようになって、亡くなるまで出ない人が多くなる。施設が十分足りていれば、施設と在宅の選択が可能だが、施設が足りないために、在宅が難しい家庭で施設待ちをする一方で、在宅でもいいと思っていても施設に入りっぱなしというおかしなことが起こっている。

さて、この時期はいろいろと合格通知をいただく。こういうものは、曲がりなりにも教育の仕事についている人間としては、いついただいても本当に嬉しい。

昨日も書いたようにアメリカに行っていたので、週刊誌を昨日目にするが、東大合格者数については」ものすごい変わりばえのしない結果だった。日比谷が伸びたことが注目されているが、確かに公立という選択肢が出てきたことは、格差社会の中では望ましい現象だ。都立高校の無料化とセットにして、貧乏な人でもある程度塾や予備校が利用できれば(本当は緑鐵――こっちのほうが安い――を勧めたいが)、
6年一貫校とそん色のない結果が出せるだろう。

ただ、本年は一般的に地方の公立高校が急進していたが、その勢いが止まった感もある。問題を易しくすると(本年は数学がそうだった)、公立高校にチャンスが出るのは確かだが、それに合わせて名門一貫校側が対応すると、結局、6年かけて受験勉強をする学校のほうが再び有利になるということだろう。

実際、今年は灘から理Ⅲに21人も入っている。問題を多少易しくしても、理Ⅲレベルの高得点を取ろうとすると、一貫校型の対策が必要となるのだろう。

やはり格差解消はなかなか難しい。ゆとり教育をやめてもらうのがいちばん地方にチャンスを与えるのだが。

ところで、本年は明治が早稲田を受験者数で逆転したそうだ。

これはすごいことだが、受験生も見るところを見ている。

明治はかなり就職などの面倒見もいい。早稲田は相変わらず、金もうけ主義で教育軽視だ。

また明治は地方でも受験できるようにしたらしい。確かに九州の受験生で、東大に入れるような人がお金がないので九大を受けるなんてことが珍しくなくなっているらしい。

早稲田の人にはそんな感覚もわからないのだろう。

早慶ダブル合格では、圧倒的に慶応に行く人が多くなったし、もう少し危機感を持てないものなのか?