私に臓器移植の親族優先提供の問題についての意見を求めるメッセージを下さった方から、さらに詳しいメッセージをいただいた。

いずれにせよ、データを求めて深く考えるというのは、すばらしいことだし、私も勉強になったことを伝えたい。私に批判や嫌がらせのメッセージを下さる人は少なくないのだが、そういう人の多くが、あまりに表面的(たとえば、飲酒運転が悪いとか、犠牲者が出ているのは当たり前のことで、ほかの違反との罰則のバランスやそれが現実にどのくらいの犠牲を出しているかなど、もう少し深い資料をほしいのだが、そういう批判が少ない)なものが多く、この人はよく勉強していると言うのが少ないのが残念だが、この手のよく勉強した方からのご意見は本当に嬉しい。

また、どういう風の吹き回しか、あるいは入学試験の発表シーズンなのかわからないが、感謝のメッセージもかなりの数でいただいて、とても機嫌がいい。

昨日は、勝沼で林真理子先生とワインゼミナールの対談。

ワインの話だけでなくいいたいことを言わしてもらった。

サンフランシスコは飲酒運転の取締りが厳しいが、ナパまでいくと、まったく取締りがなく、次から次へのテイスティングができるように、勝沼もワイン特区として、飲酒運転の取締りをしないくらいのことができたらいいのに、みたいな話までさせてもらった。

やってみたら意外に事故が起きないのなら、実験としては面白い気もする。

第一、食事時にビールを飲むのと、二次会、三次会まで飲んでぐてんぐてんになるのとが、ほとんど見つかったときの罪が変わらないのはどう考えても異常だ。日本人はどうして、満点でないと0点という思考パターンから脱却できないのだろう。

いずれにせよ、それだけ言いたいことを言わせてもらっても、勝沼の人はとても暖かく、人情味のある人ばかりだった。あげく、林先生には、代々木上原の久遠というおいしいおすし屋さんでご馳走になってしまった。本当にありがたい限りだ。

さて、ひょんなご縁から中原英臣先生と知り合いになって『数字のウソを見破る』というご著書をいただいた。数字が好きなこともあって、本当に面白い本なのだが、その中で多少異論があるのは、実は少子化対策の部分だ。

確かに保育園の待機児童が25000人もいるのは、重要な問題だが、この問題が解決したからと言って、そんなに子供を産む人が増えるのかに疑問があるからだ。

ただ、この数字はむしろ別の意味で驚きの数字だった。保育所の定員は現在219万人もあるという(これは利用している人の数より多いそうだ)それに対して、待機者は25000人。1%強の数字である。

それに対して、介護離職者(介護のために仕事をやめた人、主に女性)はなんと15万人。特別養護老人ホームのベッド数は約40万ベッドに過ぎず、待機者の統計もはっきりしたものがないが、5万とも10万とも言われている。

親の介護のために仕事をやめる人の数の多さという点では、保育園がなくて仕事が出来ない人の6倍以上のようだし、高齢者が増え続け、要介護者も500万人といわれているが、特養ホームの数は保育園の数の5分の1もないのだ。

しかし、保育園がないので、仕事が出来ない人は、年齢的に子育てが一段落したら復職できることが多いが、親の介護のために仕事をやめる人は50代、60代という年齢を考えると、親が逝去した後、復職できる見込みはきわめて小さい。

しかし、こんなに不遇な介護離職者や施設がないために介護に困っている人のために共闘してくれる男性はきわめて少ない。保育園がないので仕事ができない人と共闘する男性フェミニストはすごく多いのに。

要するにフェミニストを名乗る男性は若い女性が好きなだけで、中高年の女性が好きでないということだろう。女性が性の対象でないとかいいながら、若くない女性とは共闘する気がないのだ。

この現状にむかついて、介護のためにこれまでのキャリアを無理やりに捨てさせられる女性について映画を作ろうとしたら、どこも金を出してくれない。けっこういいシナリオも出来ているのだが、(作ったらどこかの映画祭では――日本の評論家にわかってもらえるかはわからないが――賞をとる自信もあるし、いろいろな介護者の団体も知っているので、損をさせない自信もあるのだが)見向きもされない。

日本には中高年の女性の味方はいない。

私はぜひその味方になりたいのだが、金がない。