また、いくつかメッセージをいただいた。

年収1800万円以上の人の教育について語ったら、500万円でも金持ちではないかという意見をもらった。

さすがにそこまで日本の階層分化が進んでいるとは思っていないが、確かに非正規雇用の人からみると、正規雇用であるだけで金持ちということになるのかもしれない。

私の金持ちイメージは年収1億円以上、いわゆる億万長者だが、アメリカだとミリオンダラーというのは中途半端な収入のようだ。

資本主義は、「私利・私欲の追求は悪である」という明確なエトスがないと成立しないというメッセージももらった。確かに、アメリカでさえ寄付文化はあるし、ヨーロッパに似たような考え方はありそうだが、そういう意味では、真の資本主義の国はなさそうだという気もする。

さて、昨日、相続税の増税について述べたが、私自身は、階層の固定化を防ぐという以上の意味は、高齢者の消費の活性化にある。

とにかく、個人金融資産の8割もが60歳以上が占めるこの国では、60歳以上の人が金を使ってくれないと経済は回っていかない。

で、前述のようなエトスがないのなら、「税金にとられるくらいなら」という負のインセンティブをつけないと金なんか使ってくれないのではないかというのが私の結論だ。

今の世の中で、消費税を上げて、社会保障料を上げる形で、高齢社会の財源論を考えていれば、若い時代は生活が苦しく、歳をとれば、金を使わないのに金に恵まれた状態になる人が大半になる。

退職金をもらうのも、親の財産を相続するのも60歳以降なのだから、彼らが金を使わないと金が回らない。

若い世代の不満も強くなり、高齢者が医療を受けることや年金をもらいながら遊ぶことにも不満がつのるので、ますます高齢者は金を使いにくくなる(公務員は、俺たちの税金で食わせてやっているというのと同じ理屈で、高齢者は俺たちが食わせてやっているという発想になり、彼らが少しでもいい暮らしをすると腹が立って仕方なくなるし、医者にかかるのも金の無駄という論議をする人まで出てくるだろう)。

現実に親の財産を当てにする人たちの中に、高齢者が金を使うことに邪魔をする人をたくさん知っている。

たとえば、老夫婦が世界一周の豪華客船での旅行を計画すると、もったいないという理由で反対する子供がいる。どこがもったいないのか?要するに自分の相続財産が減るのをおそれての話だろう。同様に親の面倒をろくに見ないくせに、親が独り身でいても、再婚に反対する。再婚相手は少なくとも面倒を見る気があるはずだ。

相続税が100%になれば、少なくとも、子供がそんな馬鹿なことを言わなくなる。

そして、何に期待ができるかというと、高齢者が「税金を取られるくらいなら」と金を使ってくれることだ。

これは馬鹿にならない。

昔、中小企業の社長たちは、「税金に取られるくらいなら」と金を使った。接待費などいかがわしい金も多かったが、金は回った。本当は全額税にとられるわけでないから、経費を使わないほうが金が残るのだが、税金を払うのがそれだけ嫌なのだろう。

この心理を景気回復に使うのだ。

高齢者が金を使えば高齢者向けの産業も興る。これは、日本の競争産業にもなりえる。

また、相続税が高くて、消費税や社会保障料が安ければ、若い世代が高齢者を嫌う度合いもずっと減る。

いろいろな意味で相続税の増税は日本をまともな国にするはずだが、金持ちだけでなく、ちょっとした資産のある人はみんな反対するのだろう。

そういうケチが蔓延するから日本の景気はよくならないし、ものを買わない国と見られているから、ジャパンパッシングが起こって、ものを買ってくれる中国に外国がなびく。

日本の愛国者はそれを嘆かわしいと思わないのだろうか?もっとも日本の右翼は愛国といいながら、税金を払わないケチ右翼だから信用できないのだが。


要するに私はお金を稼ぐことを悪いと思っていない、使わないのが国のためにならないと言いたいのだ。