ブログは長いほうがいいという好意的メッセージのほかに、金持ちが悪というより、既得権益が悪いとか、宗教法人のほうがもっとひどいというメッセージもいただいたし、また、「お金を貯めこむ事しか知らない日本人ばかりでもなければ、弱い日本人ばかりでもないですよ!一部の日本人を、全日本人が…的な書き方やめて下さい。」というメッセージもいただいた。

確かに一生懸命に働いたり、特別に才能があったり、時代のニーズにあって金持ちになるわけだから、金持ちが悪いとは思わない。既得権益や宗教法人、あるいは景品交換のような実質非合法なバクチをやるパチンコ屋、脱税をする人など、もっと悪い人はたくさんいる。

ただ、「お金を貯めこむ事しか知らない日本人ばかりでもなければ、弱い日本人ばかりでもないですよ!」というのは、正しいのだが、「一部の日本人を、全日本人が…的な書き方やめて下さい。」というのはちょっと本意でない。

たとえば、受験競争が厳しかった頃、子供の自殺は先進国で唯一減っていたのに、マスコミが大々的に取り上げて、受験勉強がメンタルヘルスに悪いという風に統計数字と逆の報じ方をしたのは「やめてください」といいたくなるが、「お金を貯めこむ事しか知らない日本人ばかり」でなくても、世界中の金持ちの中でいちばん金を使っていないのが日本人であることや、欧米と比べて寄付が少ないのは統計ではっきりしている。弱いというのは何をもって弱いのかは難しい。平均寿命はむしろ長い。ただ、子供たちの学力や仕事が続く期間などを生きる力の重要な要素と考えると弱いかもしれない。

私は基本的に、一人大悪人が出たからと言って、日本人がおかしくなったとは思わないが、統計の数字で出ていることについては、そう論じてもいいと思っている。一部の人を一般化するのはよくないが、統計数字をもとに語るというのは私のスタンスだ。

さて、北海道で泊まったら、毎日新聞が部屋にきた。勝間さんが、階層固定を防ぐために、相続税をあげるべきという提言をしたら、相当の賛否がきたらしい。

私も相続税の増税論者だが、これで階層の固定が治まるとは思っていない。親が80台まで生きる時代だと子供が50台になっているので、通常は親が目が黒いうちに社長になれる。親の会社に入って、年収5000万円くらいもらえば、20年間で10億円くらいの収入は入る。

ただ、たとえば私が言うように相続税を100%にできれば、親の後をついで社長になっても、親が死ねば大株主でなくなる。有能な社長なら会社に残れるが、無能だと追い出される。そのほうが健全だろうと言いたいのだ。

日本という国の異常さの一つに、確かに親の収入が多いほど、子供の学力は高いのだが、それは親の年収が1800万円くらいまでで、それを超えると学力が下がってしまう。要するに金持ちは安心して、それにあぐらをかいて子供に勉強をさせなくなってしまう。

また、世界中の先進国で、小学校で大学の付属に入れば、国を代表する名門大学にエスカレーター式に上がれるなどというわけのわからないシステムのある国はない。

相続税の増税が階層固定を防ぐというより、パラドキシカルにいうと、金持ちがもう少し子供に勉強をさせるようになるだろうから、バカ息子が財産をすって零落するソニーや旺文社のようなことが減るだろう。すると、よけいに階層固定の方向に向かうかもしれない。

しかし、努力をしていないと金持ちになれないという、金持ちでい続けられないというイメージを国民、とくに子供たちがもつことには意味がある。

私は金持ちが悪いとは思っていない。ただ、日本の金持ちの消費性向が低いこと(つまり、金持ちに金を持たせても投資が盛んにならないし、消費不足が解消されないこと)、小学校から大学の付属に入れるような教育の手抜きをすること、そして若い頃は、自分が豊かになるためや、新しいビジネスを興し、国のためになるように思って起業しても、歳をとると子供に財産を残すことばかりを考えて、寄付もしないで、相続税の増税に反対することが、好ましくないと思っているだけだ。

ブッシュジュニアが相続税を廃止しようとしたとき、ジョージソロスやビルゲイツの親父など、そうそうたる金持ちがアメリカの活力をなくすと大反対をした。オバマは相続税の増税と、基礎控除額を大幅に引き下げたが、日本ではほとんど報じられていない。

自分の財産がどうなっても、国のほうが大切という金持ちがいないことに、日本の金持ちの卑しさを感じる。

卑しくない金持ちは尊敬するが、卑しい金持ちはなんぼ成功のときはすばらしい人であっても、現時点では尊敬できない。