JALが経営危機で、国土交通省にぺこぺこしている社長の姿が可哀相だとある文化人の方だ言っていた(とくに辻元副大臣が、あまり評判のよくない旅行の代表だという意味も含めて)。

確かに、従業員の待遇がよすぎることや、組合が強すぎることは事実だ。しかし、いっぽうで国策で好きにいじられ、それが赤字を膨らませていたことも事実だ。

たとえば、98年くらいだったはずだが、今でもいわくつきの亀井静香氏が、JALが人件費を削るために契約社員を導入しようとした際に、社員に待遇の差があれば安全が守れないなどとわけのわからないことを言って高賃金体質を守ろうとしたことがある。

契約社員だって命は惜しいし、実際、正社員にしてほしいというインセンティブもあるから、事故やトラブルのときに、しっかり対応しないとは考えられないが、亀井氏にとってはJALが高待遇であることのほうがメリットがあったことは事実だ。

実は、妻が地方のゼネコンの娘だったから、実際に声をかけられたのだが、少なくともフライト・アテンダントが(とくに地方の人の)憧れの職業だった時代には、高い競争率の中で、地元の有力者枠は確実にあったようだ。

こういうコネを運輸族といわれる政治家が握っていたのだろう。

当然、いくばくかの(おそらくはかなり多額の)謝礼が動いていた可能性もある。JALがつぶれるなどということが予想されなかったから、いい縁談も多いし、仕事をやめなければ数億円の生涯年収が保証されるからだ。

つまり、組合が強い以上に、JALはどうせつぶれないし、国が金が足りなくなると守ってくれる会社として、高給優遇にすることに政治家もメリットがあったのだ。この会社に入れるコネがありがたく、それを政治家が仲介してもらいたいと思わせる会社にしておく必要があったのだろう。そうでなければ、ありえないような理由で亀井大臣(当時)が、JAL社員の契約社員化にあれだけ強く反対する理由が見当たらない。

結果的に、JALの社員の高コスト体質が続き、それが今に響いている。

ついでに言うと、給与面以外での待遇も破格だった。パイロットはハイヤー通勤、フライトアテンダントもタクシーで成田入り。社員本人や家族が割引やタダでJALを使える権利があったのだが、建前上は繁忙期を避けるとか、あいているときだけビジネスやファーストということだったのだが、それが有名無実化して、繁忙期でも平気で家族までビジネスやファーストで旅行していたらしい。

しかし、このような特権階級にしておくのは、組合だけでなく、自民党の人が地元の名士に恩を売るのにも使えたということなのだろう。

ついでにいうと、政治家の圧力で、地方の赤字路線も廃止できなかったり、赤字の飛行場に高額な使用料を払わせられたり、こんなので競争力を保つのは無理だし、景気が悪くなり、競争にさらされるとたちどころに経営が立ち行かなくなるが、政治家のせいでぼろぼろの会社になっても、会社がダメになると政治家にぺこぺこさせられる。

確かに可哀相なのは事実だ。

さて、昨日ラジオを聴いていたら、手嶋龍一氏が鳩山政権下での北方領土問題の話をしていたが、私もうっかり見落としていたことがあった。

北方領土からは日本人が追い出され、旧ソ連人、ロシア人が今住んでいる。

ということは、もし返してもらったとして、二つの問題が生じる。

一つは今住んでいるロシア人をどうするのかと、もう一つはあの島に住む日本人がいるのかということだ。

確かにアメリカが沖縄を返した際は、米軍基地の費用の半分をもたせるというメリットもあったが、それ以上に日本人が住んでいたという事情もあった。

ロシア人をロシアに返すことが現実に可能なのか?逆にそのまま住ませるとして、日本国籍を与えるのか?あるいは今の在日の人みたいな永住権を与えるのか?そうすると、彼らが自由に日本を動けるようになるが治安の問題はないのか?

日本人の側の問題として、あんな寒くて何もないところに住みたい人はいるのだろうか?もちろん、島から追い出された人もいるだろうが、追い出されて64年も経っているので、戻りたいという人は殆ど生きていないのではないか?

実は千島は日本人にとっては厳寒の地だが、ロシア人にしてみればシベリアと比べてはるかに住みやすい土地なのである。日本人で住みたいと思う人はあまりいないだろうが、ロシア人にしてみたら、住んでも良いのはそういう背景もあるだろう。

ロシア人を追い出す追い出さないはともかくとして、返してもらったのに住む人がいなければ、やはり国際世論の非難を受けるだろう。たとえば、千島に自治権や、カジノを作る権利などを与えて、住みたいと思わせる方策も考えないといけない。

日本人がほとんど住んでいなくて、ロシア人だけ住むような土地になったとして、今度は住民投票で独立を求められたらどうするのだろうか?

今の国際的な流れだと、自治や独立は認める方向になっている。

独立のメリットは小さくない。たとえば天然ガスの採掘権を日本に5000億円で売れば、住民が5万人くらいしかいないだろうから一人1000万円も入ってくる。漁業権だって売りに来るかもしれない。

ロシアとの関係を考えたら、頑張ったら返してもらえるかもしれないが、その後のことを何も考えていないようなところが怖い。