ブログに寄せられたメッセージは一通り目を通しているが、最近、メッセージが増えてきて、全部にお答えできていない。時間の都合もあって、ブログの中で答えるようにしているために、ほかの読者が読んでも役立ちそうなことを優先しているし、また一度答えた人より、これまであまり答えていない人を優先していることもご理解いただきたい。

さて、ときどき、メッセージをいただくインテリ・ケアワーカーの人から、介護現場での見取りの実情のメッセージをいただいた。私自身も浴風会という老人施設に付属する病院にいたし、今も有料老人ホームの精神科コンサルタントをしているが、とくに身寄りのない人のみとりは、介護職員の仕事になる。しっかりやっている姿をみると頭が下がるし、ぞんざいだとかなりがっかりする。

ついでにいうと、確かに介護のプロはいる。認知症の高齢者などは、スタッフが認知症の高齢者の対応がうまいかどうかで、問題行動などはかなり違うし、その元気さも違う。

ただ、一般論からいうと、介護保険のおかげで、デイサービスもふくめて、認知症高齢者に接する介護職員が増えたこともあって、だいぶ扱いがうまくなっている。それと比べると在宅だと、つい腹を立ててしまう人がまだまだ多い。施設介護は少なくとも、認知症の人には必ずしも不幸とは言えない。

医者は相変わらず認知症のことを、とくに生活の場や施設などでろくに診ていない人が多い。とくに大学の先生方はそうだろう。私のように月に6、7回くらいしか臨床をやっていない人間でも、老年精神医学の世界では、大学の専門家を称する連中に負ける気がしないのは、現場を見ているし、ケアスタッフときちんと話をしているからだ。彼らの書く教科書や雑誌の寄稿文は何十年前の話をしているのかというものが多い。脳の伝達物質や変性のメカニズムの仮説(もちろん、ただの仮説である)はころころ変わるし、そういうことには詳しいが、ほんとうに臨床ができない。現実に親がぼけておろおろしている専門家を私は知っている。

実は、一昨日は、私がいちばんメンバーのよさで楽しみにしている、21世紀文明構想フォーラムの勉強会でレポーターを行った。

今後の高齢社会の対策で、前期高齢者には雇用を、後期高齢者には、高齢者向けの薬物投与のエビデンスを集めて、合理的な治療での医療費削減と、施設介護政策の充実を、そして財源論としては、60歳を超えて親の遺産を相続する時代には若い世代に消費税や社会保障料の負担をさせるより、相続税を財源にすべきという提言をデータをあげてレポートした。

この中で、いちばん簡単に実現できるのは、特別養護老人ホームを100万ベッド用意することだ。スタッフ50万人の人件費で、年間2兆5000億円(一人500万なら官制ワーキングプアも生まれない。しかし、日当計算で、道路工事の旗振りの半分の予算だ)、建設費用7兆円、土地取得は小学校の跡地などを当てるという風にすれば、すぐにでも可能だ。もちろん利用者の負担もあるので、全額税というわけではない。

道路に年間15兆円使っている国だということを忘れては成らない。

これによって、在宅介護がしたい人はともかく、施設介護が選択できるので、介護保険創設の精神にも合致している(保険だからサービスが選択できると謳われていた)

ところが現実の施策は、2012年までに療養病床を25万ベッド減らす代わりに、3年間で11.5万ベッドの介護施設を増やすという話だったが、結局8万ベッドしか増えなかった。

毎年要介護者は増えているが、それ以上に問題なのは、支える世代の急速な減少だ。

前も書いたが今の要介護高齢者を支えている世代は、団塊の世代である。1947年の出生率は4.5、要するに4-5人兄弟が当たり前だった。それが10年後の1957年生まれは2.0人になる。子どもの数が減ると在宅介護が難しいのは当たり前だ。

舛添某は親の介護で政界デビューしたが、厚生労働省の在宅介護政策をいじることはできなかった。

医療費や減らす研究や相続税の増税はすぐにはできないだろう。でも、特養を増やすことは政治ですぐできることだ。特養の建設は、ベッドもテレビも売れるので、道路を作るより経済波及効果は大きいし、介護スタッフにちゃんとした給料を払えば雇用対策にもなる。

民主党は、その程度のことができないのだろうか?