小さい頃にまともな教育レベルを得ていない人間が大人になってからリカバーできないようなことを書いたら、それはどのレベルかというようなことを質問を受けた。

確かに言い方がちょっときつかったかもしれない。

実際は、たとえば日本の教育レベルの高かった80年代なら、高卒でも十分高い教育レベルと私は考える。当時は、高卒の人でも新書クラスの本をちゃんと読んでいたし、電卓を使わずに計算をしていた。

でも、今の3流大学は相当あやしい。実際、大学生でろくに新聞を読まない(読めない)人も多いようだし、早慶レベルでも5人に一人は分数の計算ができない。沖縄のある私立大学の調査では、小学校2年生の計算を小学校2年生と同じ速さと正確さでできる大学生が2、3割しかいなかったという。

まともに読み書きと計算ができるレベル、多少は社会科や理科の知識があるレベルのつもりで書いたのだが、今はたぶん高校卒業生の半分がそのレベルに達していない(昔なら中卒でも8割くらいはOKだったのだろうが)。これでいいのかということだし、このレベルだと、かなりその後の逆転は困難だ。

そういう点で、すべての人に、将来勉強のやり直しがきくレベルの基礎学力をつけるというのが、教育政策のあるべき姿と私は考えている。

さて、同じく教育について、ハーバードやオックスフォードが私立なので、日本も国立大学を民営化してはどうかというメッセージをいただいた。

実際は、今は国立大学法人という独立法人となっていて、国立というより公社のような形になっている。

その方もいくつかの予想をしていたが、私も、その人の悪いほうの予想の通り、今の日本の私立大学のていたらくを考えると、現状、国立大学を私立にするのは大変危険だと考えている。

経営を優先するあまり、昔から経済学部だというのに数学のない入試を導入してきたのだが、今では、学生数を確保する為にAOや推薦の入試を使っているので、かなり低学力の学生も入れてしまう。入試もほかの大学に受かることで辞退することを見越して、定員の2倍くらい合格者を出すので、半分以上の大学が無試験同然だ。

推薦やAO,あるいは付属校を増やすことを早慶レベルの学校までやっているのだ。さらにこの10年くらいの間に、早慶、MARCHのすべての学校で定員を増やしている。

日本の大学は、欧米の名門大学のように寄付を集めたり、資産運用をしたり、大学からすごい研究を出して金儲けをするより、生徒を金儲けの手段にしているから、たとえば東大が私学化、民営化したら、授業料を値上げしたり、定員を増やして水ぶくれさせたり、入試を多様化すると称して入りやすいように見せて受験生増やしをやろうとするのが落ちではないか?

むしろ、大学運営の問題点を改善すべきだろう。準公務員で、実際、クビの心配もなく定年まで身分が保証されるから、確かに教員も事務職員もさサービスが悪い。また給与も働きに応じたものになっていない。教授などは、40前後で教授になったら定年まで身分が保証されるので、ろくに勉強しない人間も出てくるし化石のような授業や研究をする人もいる。

確かに、こういう人たちは私立なら追い出されるだろう。こういう人を一掃できるような大学の経営委員会などを各校で設置を義務付けるというのもいいだろう。

あるいは、教授会で教授を決めると、自分よりできの悪い人を教授にして、身分の安泰を図ることが多いので(一時の東大の教育学部はそうだった)、欧米の大学のDeanのようにできのいい教授をスカウトできる仕組みやスカウトすることで評価される大学の学部長的な人がいるのも重要だ。

要するに現行の国立のよさを維持しながら、今よりよくできる制度が必要なのだ。

あるいは、私立のほうでも金儲けより名誉をほしがる財界人が、巨額の寄付をして大学を作るという発想をもてば、国立よりいい私立の名門大学を作れる(スタンフォード大学などそのいい例だ)。こういうものができれば、私立間でも競争原理でもっといい大学を作ろうという流れができる。

学生数を絞り、いい教授を集め、多額の奨学金で高校生を釣れば、東大よりいい大学が300億くらいの寄付で作ることができる(作り方は私に聞きにきて欲しい)

こういうライバルが現れれば東大にも危機感が生まれる。東大が今よりよくなる期待もできる。その寄付した人の名誉も100年くらいはもつ。

でも、日本は相続に必死でも、このようなスケールの大きな財界人は現れないだろう。FORBESを見る限り、その程度の寄付ができる人間は100人はいるはずなのだが。