小学校から大学まで付属の学校を出て、親のコネと思しき形でテレビ局(もちろん、普通に受けたら東大出ててもそう簡単に入れない難関である)に入って、世襲で議員になり、その選挙区が北朝鮮型の世襲歓迎選挙区のおかげで、全国の小選挙区の中で1位の得票と2位の得票の差がもっとも大きい選挙区で当選を重ね、最年少で大臣をやっているお嬢様(本当はその取り巻きのプロジェクトチーム)が、少子化対策のために消費税を1%のっけるという提言の骨子をまとめたそうだ。

金を使って少子化対策というのは何をする気なのだろう。国立社会保障・人口問題研究所の大規模調査によると、2005年現在で、完結出生児数(結婚持続期間15~19年初婚の夫婦の平均出生子ども数)は、2.09で平均二人以上は産んでいる。これは1972年の調査以来、大きな変化がなく、2002年の調査までは大体2.2で推移していたから、若干の減少とは言えるだろうが、ものすごい減り方ではない。

ところが、その2005年における合計特殊出生率は1.26となっている。

結婚が15-19年続けば二人以上産むのに、一人の女性が一生涯に産む子供の平均数である合計特殊出生率が1.26なのは、ひとえに非婚化、晩婚化と離婚の増加で、子供が産める期間に15-19年夫婦が続いている人の割合がそれだけ少ないことを意味する。

非婚と晩婚と離婚の対策をしないで、結婚した夫婦についてもっと子供を産ませる形の少子化対策をやろうとするなら、人口が減らない合計特殊出生率を2にしたいなら理論的には、完結出生児数を、2.09×2/1.26で、3.31人の子供を15-19人続いた夫婦に産ませないといけないことになる。3人では足りず、すべての夫婦が3人産んだとして、3家族に1件は4人に産まないとこの数字にはならない。二人しか産まない家の分だけ4人産む家族を増やさないといけないし、一人っ子の家の数だけ5人産まないといけない。

こうなってくると少子化対策というのは保育園などの問題だけでなく、家の増築費用とか、教育補助とかを本格的にやらないといけないことになる。これでは、消費税1%ではとても足りないだろうし、そんなことに莫大な金をかけても、日本という国が簡単に3人兄弟、4人兄弟が当たり前の国になるとは思えない。

少子化対策をするなら、非婚・晩婚・離婚問題を何とかしなければいけないのは、数字の上からは当たり前のことなのだが、中学受験も高校受験も大学受験もしたことのない人の算数の力ではわかりっこないだろうし、そういう人間を大臣にする首相も中学受験も高校受験も大学受験をしたことのない人だ。

実は、非婚、晩婚問題にしても個人の自由のように思われるが、金の問題である。というのは、生涯未婚率は女性より男性のほうがずっと高い。なんと6人に一人になっている。そして、結婚できない男性のかなりの部分がお金の問題が原因なのである。

ついでに言うと、少子化対策でよしんば、3人兄弟が当たり前の国になったとして、教育レベルをどう保つというのか?今の少子化担当大臣は、自分の子供にも親と同じ大学までつながっている小学校に入れることは可能だろう(そのくらい親子関係、兄弟関係の入試が有利になっている)。大学まで受験をしないでも、テレビ局や新聞社に入れて、あげくは世襲で政治家にもなれるだろう。だから、ホイホイと何の心配もなく大臣の任期中でも子供を作れる。公教育がぼろぼろの今、次の子供の先のことを心配する親の気持ちなどわかるのだろうか?

そして、産めよ増やせよで子供の数だけ帳尻あわせをして、教育レベルが低いままだと、その子供たちが将来、出稼ぎや売春で食わないといけなくなってしまうことがわかっているのだろうか?

お金のある人だけがいい教育を受けられる社会になった今、お金のない人にえさをつけて子供を産ませるのは、無責任な詐欺行為とさえいえる。

全盲のピアニストが国際的な賞をとったのは、本当に喜ばしいことだが、実家が有名な産婦人科医であるという経済的なバックボーンがあったことは忘れてはならない。

昔は経済的なバックボーンがなくても、音楽家にはなれなくても(そういう点では砂の器は外国の音楽家がみるとびっくりされるくらいありえない絵空事だと渡部昇一先生から聞いたことがあるが)、東大に入ることはできた。

貧しい家庭の人間から教育のチャンスを奪っておいて、少子化対策もへちまもない。教育が伴わない少子化対策は治安の悪化や、若年者の失業対策など、新たな火種のもとだということは、お嬢様にはわかるまい。