林真須美被告に死刑判決が出た。

私自身、カレー以外の保険金殺人も含めて、心証としては林被告がやった気はしている。

だからといって、この事件で簡単に死刑判決を出すことには、とくに裁判員の時代には抵抗がある。

動機が解明されなかったからではない。私は、傷害致死も死刑にすべきという結果責任論者で、動機など犯行が立証できれば同でもいいと思っている。

しかも、死刑以上の重罰も用意すべきだし、レイプ犯のペニスは切るべきだという重罪論者だ。

だからこそ、冤罪はあってはならないのだ。

それに対して、この事件は、おそらくアメリカでなら、無罪になるくらい和歌山県警の立証がずさんだからだ。

心理学者の立場から言わせてもらうと目撃証言が一致しすぎているという点がある。

エリザベート・ロフタスなど多くの心理学者が実験で明らかにしているが、人間の目撃証言というのはかなりあてにならない。

私も、よく講演会の最中に、スーツの襟でシャツを隠して、「今日の私のネクタイの色やシャツの色を覚えている人はどのくらいいますか?」と聞く。(これは目撃証言があてにならないという文脈でなく、人というのは、自分が気にするほど、自分のことを見ていないから、あまり人目を気にしなくていいというたとえに使うのだが)

すると答えられる人は100人中数人しかいないのが常だ。それを何日も覚えている人がどれだけいるだろうか?

講演会の主役でさえそうなのだ。祭りの中の一人で、最初から疑ってじっと見ていない限り、おそらく当日の林被告の服の色やいた場所などを目撃者がみんな覚えているわけがない。

こういう風に目撃証言が一致するケースは、ほぼ間違いなしに警察の誘導尋問と考えるのが心理学者の立場だ。

これを含めて、今回の事件は、砒素の鑑定を含めて、立証が甘い。

ゲームとしては、警察は負けている。証拠が足りないのだ。だから、アメリカでは無罪判決が出る可能性が強い(ただし、弁護士が優秀だった場合の話だが。貧乏人はクズの弁護士がつくから、この手のことですぐ有罪になるのもアメリカだ)

これを心証だけで通すのに抵抗がある。

前にも触れたが、代用監獄があるのも先進国では日本だけ。マスコミが、弁護側からの情報を流さず、警察・検察情報のみを垂れ流すのも日本の特色だ。

これは、まさに野蛮国そのものだ。韓国でも判決がでるまで、被告の実名報道をしないのが原則だ。

昨日も、DNA鑑定の結果、犯人のものでないという冤罪の可能性の鑑定結果がでた。

プロの裁判官は、ある確率での冤罪はおりこみ済みかもしれないが、裁判員が冤罪判決を出せば、一生の心のトラウマになるかもしれない。

取調べのビデオテーピングや、代用監獄の廃止など、冤罪の防止にもっと努めるべきだし、マスコミも中立報道をすべきだ。

その上で、犯行の立証ができたら、早く北朝鮮と国交を結んで、北朝鮮の監獄送りにすればいい。そうすれば、犯罪者の収容コストがずっとさがるし、犯罪の抑止力にもなるだろう。