痴漢冤罪について最高裁まで争っていた大学教授が無罪を勝ち取った。

大学教授の痴漢の無罪判決と聞いてU教授かと思ったが、確かに善良そうな大学教授だった。

テレビで、「こんな判決が出ると泣き寝入りが増える」とコメントした人間がいた。

こういう刑事裁判の基本がわかっていない人が堂々とテレビコメンテーターをやる国で裁判員の制度が成り立つわけがない。

疑わしきは被告人の利益、推定無罪というのが刑事訴訟法の基本精神である。

確かに、そのために疑わしいとか、本当にやった奴が無罪になることがあるだろう。しかし、罪を立証できない人間を有罪にしていたのでは冤罪の数もおびただしいものになる。

だから、そのために民事訴訟がある。逆に民事で、不法行為に対する損害賠償の場合は、疑わしいだけで十分勝訴できる。痴漢の冤罪裁判の場合、示談金の相場が30万円くらいとのことだから、民事で裁判をするなら100万円くらいはとれる。これで十分な抑止力になるはずだ。おびただしい数の冤罪事件を起こしていいわけがない。

ついでにいうと、OJシンプソンの事件で刑事と民事で判断が分かれたことが日本では問題になったが、別におかしなことでもなんでもない。刑事罰というのは、原則推定無罪で、警察や検察が犯行を立証できない限り無罪で当たり前、民事のほうは疑わしいだけで「訴えてやる」とできるのだ。これを一致しないといけないと考えるほうがおかしい。

だから、この女子高生も判決に不服なら民事で訴えたらいい。

逆に、この大学教授が女子高生を誣告罪で訴えたり、損害賠償を起こすと、確かに、泣き寝入りが増えるという問題があるかもしれない。しかし、模試無実だったならやられたことを考えると当然の市民の権利とも言える。現実に、痴漢冤罪で小遣い稼ぎをしている女子高生もいる。

裁判員の場合、重大犯罪だけにこの制度を用いるようだが、実際は庶民がかかわるこの手の痴漢事件のようなものこそ庶民の感覚での裁判員の導入が必要なのではないか?

日本というのは、結果責任より、泣き寝入りをするような人間がひどい目にあう、罰のシステムが多い。たとえば飲酒運転の人だって、99.9%は事故を起こしていないのに、人をはねて殺すより罪が重いくらいになっている。少年犯罪のリンチ殺人だって、従犯だと傷害致死だと、平気で執行猶予がつくが、酒を飲みすぎて翌朝の検問にひっかかったくらいで懲戒免職になってしまう。

いちばんはちゃめちゃなのはレイプ事件だ。

レイプのときは、犯行を立証するために、加害者が辱めを受けることも多いし、和姦という話になって無罪になることも多い。初犯だと執行猶予がつくこともあるし、慶応の集団レイプ事件みたいに、不起訴になったうえ、主犯が医者になることさえある。

ところが、今回の痴漢冤罪事件では、否認しているという理由で、実刑判決を2審まで受けていた。

痴漢がレイプより罪が重い国というのはほかにあるのだろうか?

痴漢の場合、どちらかというといじめられっ子的な気弱な人がつかまることが多いのだろう。

レイプの場合は、「こいつ気持ちよがってましたで。腰ふっとったがな」なんか被害者に平気で言える人間が裁判にいるらしい。

いじめっ子タイプなのかもしれない。

泣き寝入りしそうな人には、平気で冤罪や重い罪をきせて、強い奴は許すという日本の罰のシステムは見ていて情けない。