NHKスペシャルで、うつ病治療の問題をやっていた。

予想通りひどいものだった。

脳外科の医者が、何の精神科のトレーニングも受けずに精神科で開業する話などは聞いていたが、へぼな精神科医が薬を出しまくる話も十分あり得る話だ。

なかでも、仙台の医者はひどい医者が多いらしく、患者が開業医のマップを作り、薬が多すぎるとか、たくさん殺しているとか、カウンセリングなしとか評価をしている。

仙台というと、もちろん東北大学のお膝元である。

ここの教授はひどかった。

私が老人科の教授の勧めで、落とされることがないからといわれて学位論文を出したら、その学年で100人ほど出した中で、私の論文だけが落とされた。

理由がふるっていた。統計処理をしていないから、これは、論文でなく論説だそうだ。

でも、その論文を、コフート学派の精神分析の国債年鑑に投稿したら、日本人で初めて掲載された。

要するに、精神科の教授でもカウンセリングや精神療法の論文は通したくないのだろう。もちろん、これは統計処理はできない。こういう形でカウンセリングをやる人間を弾圧している教授がいる地域の住民は悲劇だ。カウンセリングを習えないまま、開業するのだから。確か、私の精神分析のセミナーの同期で、仙台から東京まで通っていた人がいるが、そこまでしないとカウンセリングは習えない。日本で初めて、精神分析を大学で教えたのは東北大学だというのに。

その教授の人事権にびびってか、その論文の副査をやっていた粟田とかいう講師も同じ意見だった。

そんなことをしていたら、いちばん被害を受けるのは患者さんなのに。

精神科は医者がへぼでも死なないと思えば大きな間違いだ。去年は医者にかかっているうつ病の患者さんだけで7000人近くが自殺で亡くなっている。

ただ、この番組は、NHKらしく大学の偉い教授にしか話を聞いていないから、日本の精神科のクリニックではほとんどカウンセリングをやらない現状には目をつぶり、うつ病が薬だけで治るように思わせている。抗うつ剤の副作用で自殺のリスクはむしろ飲まないときより増えるのだから、薬だけでは危険なのに。

日本中で、精神療法を専門とする精神科の主任教授は一人か二人しかいない。岐阜大学も、精神分析が専門の教授の後任はやはり生物学的精神医学の人間になった。

そんなことは大学教授しか取材しないNHKにはわかるまい。

この権威主義が治らない限り、NHKでは、日本の医療を変えることはできないだろう。