キャノンの施設工事の発注で、鹿島が十数億円の裏金を作っていたのが発覚した。

こういう話も今だから発覚するのだろう。昔はどのくらい裏金があったかわからなかったようだ。

確かに昔の大企業の社長は表向きの年収は3000万円とかで、当時は累進課税が厳しいので手取りが1000万チョイくらいのはずなのに、大豪邸に住んでいたことが多かった。本社ビルとか、工場を建てる際に裏金がいっていたのだろう。税務署もいい加減なものだ。なんでこんな豪邸が建てられるのか、ちょっと調査すればわかるはずなのに。

ただ、これは民間の話だから許せるとして、公共事業はもっとひどかったようだ。民間が坪八十万円で発注する仕事を官公庁からだと平気で百二十万円くらいになっていたらしい。それだけでも税金の無駄遣いなのに、そこから裏金がいくら出ていたかわからない。

税金をとりそびれたり、税金を無駄遣いしながら、一方では、人の命にかかわることでも税金を使うほうにはケチなのが日本の役所だ。

年間二百万円にも満たない生活保護費をなかなか出そうとしないから自殺は絶えない。鹿島かキャノンの裏金にちゃんと課税をすれば、300人ほどの保護費が出るというのに。これが日本中でちゃんと調べて、1000件くらいわかれば、30万人分である。生活保護費の4分の1がまかなえる計算だ。

金持ちの脱税に甘く、貧乏人の生活保護に厳しいというのがダブルスタンダードだ。国の財政が厳しいから命にかかわる生保を締めるというのなら、金持ちやパチンコ屋の税務調査もしっかりやってもらえないとつじつまが合わない。貧乏人が泣き寝入りし、またマスコミも金持ちがスポンサーになっているからだろう。

同じように金をつけてもらえないから、いのちの電話の相談員が不足して、24時間対応ができないところが半数もあるという。

人間死にたくなるのが夜中が多いから、これは意外に深刻な話だ。

もちろん、いのちの電話もきちんとトレーニングを受けていない相談員が多いから、ひどい対応を受けたという話も聞くが、自殺の専門家に聞く限り、あるほうがはるかに予防効果があるのも事実だ。

きちんと予算をつければ、相当の抑止効果は期待できるのだ。

大した金が要らないはずなのに、なぜ、この程度の金が用意できないのか?ちゃんと相談員に金が払えれば、定年退職者やリストラをされた人の有効活用もできるのに。

日本の場合、失業率が1%あがると3500人自殺が増えるという統計がある。来年失業率が2%上がれば、自殺が4万人に増える可能性もあるのだ。

なんかの事件や飲酒死亡事故などでは大騒ぎをするが、いっぽうでは自殺者の命は本当に粗末にされる。

飲酒死亡事故が減れば、東京の損保の会社はそれだけ儲かる。自殺が増えても、お上や企業は損をしないと思っているのだろう。

でも、自殺遺児が教育を受けられないと、将来、生活保護の対象になったり、年金や保険料を払えない存在になるかもしれない。悲しいことに犯罪を犯す確率も一般人口より多い。

ついでに言うと、大々的な自殺報道の後には、自殺が増えるだけでなく、無謀な運転も増えるというデータがある。自棄になったときの行動はいろいろな形をとるのだ。それによって損害保険の会社も実は損をする。

そういうエビデンスを踏まえて、生保や損保の会社がいのちの電話のスポンサーになる程度のメセナ活動ができないのだろうか?