麻生首相が内定の取り消しが続くことへの対応として、財界のトップに雇用を守るように指示だかお願いだかをしたそうだ。

お願いであれ、指示であれ、何の罰則もメリットもなければおいそれと聞くわけがない。

今、麻生氏が人気を回復する方法がひとつだけあるとすれば、自民党政治とは逆になるが、日本版のニューディールをやってみることだ。

ニューディール政策というと公共投資ばかりが引き合いに出されるが、労働組合に対する規制の緩和で労働者を強くした上で、最低賃金の引き上げと所得税と相続税の最高税率の引き上げをやって貧富の差をなくし、中流階級を作る政策だった。

1920年代に最高所得税率はわずか24%だったのが、ルーズベルトが就任すると63%にあがり(2期めには79%にしたという)、50年代の半ばになるとなんと最高所得税率は91%になったという。

そして、今年のノーベル経済学賞学者クルーグマンによると、アメリカがもっとも輝かしく発展したのはその時期だったという。実際、貿易に頼らず内需だけでアメリカの強さが発揮された。一般国民が金持ちだと車も家電品も飛ぶように売れて、安くなったところでお古を輸出すればいい。私の見るところ、80年代にはアメリカは貧富の差がついて、国民が貧乏になったところで、日本の国民が金持ちになった。当時は、日本もさほど貿易に依存しなくても、日本で「高いがいいもの」を作って、大量生産が可能になったところでアメリカに輸出できた。

ディールのしなおし(トランプの配りなおし)がニューディールなのだ。

オバマがやるかと思ったら、結局、クリントン時代(民主党の伝統と違う金持ち優遇政策の人たちだ)の経済ブレインなので、おそらくアメリカは中流が増えず、自動車も売れるようにはなるまい。日本の政治家が気づくべきだ。外国からの投資をあてにしないでいいなら、これほど税法をいじりやすい時期はない。
(仮に税金が高くても、その国の人間に購買力があるなら、外国企業が喜んで進出するのは、かつてのアメリカと日本をみれば自明なことだが)

もう一つは、雇用に協力したり、中流を増やすことに協力した会社にインセンティブを与えるか、逆にそうでない会社に罰を課すかである。

結局、会社が人を斬ったり、正社員比率を減らしたりすると、国がその人たちの保険料や年金料の心配をしないといけなくなる。だったら、その負担を企業にさせるべきだ。

正社員比率の低い会社やリストラをする会社に増税できたり、それを守る会社に減税したりすればいい。

外国に遠慮せず(日本の政治家は国内の金持ちのほうに遠慮するのだろうが)に、税金の取り方はいくらでも変えられるのだ。それがいやで外国に逃げていくような会社があれば(これも昔ほどの恩恵は得られないだろう)、国内でものを売った分に課徴金や税金がかけられるようにすればいい。

私の案ももちろん仮説だ。しかし、ない知恵をしほらないと、国内消費までどんどん落ちていって、せっかくファンダメンタルのいい国なのに、つられて沈んでいくことになる。