ジギルとハイドとかいう番組を見ていると、長寿遺伝子の話が出てきた。

で、長寿遺伝子は誰にもあるのだが、それを活動させるか、活動させないかで若さや長寿が決まるという。

そこに出ていた大学教授(どう見ても、理論学者で、高齢者の臨床をやっているように見えなかったが)が、この長寿遺伝子を活動させる方法として、カロリー制限とブドウの皮に含まれる成分を挙げていた。

確かにワインファンの私としてはうれしい話だし、私も歳より若く見られることが多いし、肌などはすべすべで不思議がられるので、ワインのおかげとか言っているのだが、本当のところはワインの大消費国フランスのほうが、日本より平均寿命も短いし、フランス人の中年の人をみると、日本人よりはるかに皺も多くて老け込んでいる。

動物実験では、ちょっと飢え気味のほうが長生きするのは、いろいろな動物で確かめられているし、人口冬眠のようにして栄養をろくに摂らせないほうが長生きするのもわかっている。だから、老化の研究者は口々に、栄養制限の大切さを訴える。

しかし、人間で疫学調査をすると、実はBMIが23-25(この番組でも22が理想といっていた)のちょい太目の人がいちばん長生きしているし、見てくれも同年代と比べて若々しい。

むしろ低栄養の人のほうが若死にするのは、臨床家なら誰でも知っている。栄養状態がいいほうが長生きできる。少なくても、日本人の平均摂取カロリーが一日2000Kcalを切っている現在、栄養不足のほうが寿命に悪影響を与えるし、年寄りではカロリーが足りていない人のほうが多い。

いくら動物実験をしていても、人間は理屈どおりに行かない。

そこが医学の面白いところだし、だから人間の研究が必要なのだ。

それがわかっている医学部の教授がほとんどいないから、今でも医学博士をとるための博士論文の8割以上が動物実験で、獣医の練習をしてきたような奴が医学博士と言っていばっている。

(アマゾンの私の本の書評で、精神科の研究でさせ、人間でできるような実験は意味がないと言い切った自称--私は偽医者であってほしいと願っている。そこまで日本の精神医学はダメになっていないと思いたいーー精神科医がほざいていたのを思い出す)

データ不足のために、体にいい納豆に、やらせの理屈をつけるほうが、実際の疫学調査にあたらずに、理屈だけで、国民の体に悪いことを、真顔で垂れ流すほうが、よほど危険なことである。