PHPのVOICEという雑誌の取材で、岡山の朝日塾小学校を見に行った。

全員が中学受験をし、そうそうたる実績を残し、先日の全国学力テストでも全国平均を各科目で15点程度上回ったという日本一といわれる小学校だけあって、授業を見学しても、私でもびっくりという感じだった。

基本的に検定教科書は使わず(低学年の間は、1学年上のを使うそうだが)、四谷大塚の教科書を使っている。小学校1年生から英語を始めるのだが、Oxfordのネイティブが小学校1年生で使う教科書を使っている。

いちばん強調しておきたいのは、それでもおちこぼれができないということだ。

確かに入学試験をして入ってきた生徒であるし、親も教育熱心なのだが、小学校の受験はそれほどあてにならない。現実に、日本一難しいとされる慶応の幼稚舎などでも、一定数の落ちこぼれはでている。

8割くらいの子供は当たり前についてくるし、そうでない子供もわからなくなり始めた時点で、担任や教科担当の教師が気がつくので、その時点でフォローしてやれば、まず落ちこぼれることはないとのことだ。

あとは、習熟度別クラスも有効に機能している。

できる子供には灘中受験レベルの特訓をさせ、できない子供には丁寧に教える。

それでも四谷大塚レベルの6年範囲なら、ほぼ全員が習得できるというのだ。

子供というのは、その能力を信じてやらせれば、8割くらいの子供はできるものなのだ。今、日本中の子供は、本来伸びるはずの能力を伸ばしてもらっていない。下の2割の子供のために、本来の能力の2学年下くらいのことをやらされている。しかも、その2割の子供の多くは、今の減らしたカリキュラムでもついていけないから、今のカリキュラムに準拠した全国学力テストをやっても、悪い点をとる子供がかなりの数でいるのだ。

仮に全国で朝日塾なみのカリキュラムをやれば、8割の子供の学力は大きく上がる。残りの2割だって、その半分以上は1学年下のことをやれば、ついていけるだろう。それでも、今より1学年上のことがマスターできることになる。残りの子供は2学年下げたり、小人数で指導すれば、やはりついていける。
限りなく落ちこぼれはゼロに近くできる。

現在の学習指導要領を最低基準というなら、通常の子供にはその2学年上のことをやらせるべきだ。

そうすれば8割の子供が2学年上のレベルになり、最低基準に到達しない子供はほとんどいなくなる。

子供の能力を見限ってはいけない。

ついでにいうと、この学校で驚いたのは、みんなが生き生きしていたことだ。

確実に自信をもたされ、確実に賢くなれるのだから、生き生きもしてくるのだろう。

子供が勉強嫌いだと決め付けることや、子供がバカだと決め付けるのは許されない。

官僚も審議会の委員になるような文化人も、どこかで庶民をバカだと思い込んでいる。

秀才で東大に入ったからだろう。私のように非才で、勉強法の工夫でやっとこさ東大に入った人間は、人間の能力を素直に信じられるのにもったいない話だ。