日テレの不妊治療の保険適用に対するこのところの報道は、取材不足で不十分な内容。誤報に近い受け取られ方をする内容。

私も多くのニュースリポートを作ってきたが、記者の力量が問われる。

 

日テレの報道は、保険適用で負担が増えたという方々が中心に取り上げられており、

このリポートでは、「貯卵」が取り上げられ、「“貯卵”とは複数の受精卵を凍結保存しておくことです。保険治療ではすぐに移植せず、将来の妊娠のための凍結保存はできないため自費になるのです」とコメントがなされているが、そもそも不妊治療にあたり、複数の受精卵を凍結保存することが出来る。もちろん保険適用である。

 

ここで言う“貯卵”とは、何年か先の、将来いつ開始するか分からない不妊治療に向けて受精卵を凍結保存することとみられるが、これはオプション的な治療であり、標準的な不妊治療とは異なる。だから保険の適用外となる。

 

これが混同される内容となっている。

 

このオプション的な部分を取り上げて、「保険適用外で負担も増えた」との内容をリポートの中心にするのであれば、もっと丁寧な説明が必要。

これでは、不妊治療の保険適用全体が、「実際は負担が増えた」とのミスリードにつながる。

 

ニュースリポートは、特別な事例を取り上げるのであればそれを明確に示すべきであり、全体の中に紛れさせてしまうと、伝わる内容がおかしくなる。

 

この記者の取材力と構成力は乏しいと言わざるを得ないし、こうした内容で放送した日テレの報道力も問われる。

 

「医療現場に戸惑いの声」とのタイトルだが、このリポートが放送されて以降、「内容が偏っており不妊治療の現場に悪影響を及ぼす」と、医療現場で怒りの声が上がっている。

 

なお、“貯卵”や卵子凍結に対して、どのように支援するかは課題であり、私は支援策を取るべきとの姿勢である。

 

不妊治療の保険適用を実現できた今、議論を深めていかなくてはならない。

 

 

『不妊治療の“保険適用”で初調査 負担減のはずが…治療費が増えた人も 医療現場にも戸惑いの声』(日テレ)

https://news.ntv.co.jp/category/society/78a6cccdd9724405b04fe6980f03fd40