大川小裁判。

 

石巻市や宮城県が控訴したことについて、石巻市民や宮城県民から多くの怒りの声が挙がっています。

 

その声は、被災者の苦しみを無視し、学校や行政を守ることを優先している市や県に対する怒りです。

 

私はこうした怒りはもっともだと思います。

この控訴は、学校は子供たちを必ず守る責任はないと行政が言っているようなものです。

 

また、防災の研究者として客観的に見た場合も、控訴はすべきでないと考えます。

 

私は、大川小の事故検証報告書や、遺族と学校や市とのやり取りの資料、市の防災対策資料など、関連するほとんどすべての資料を読み、現地での検証、遺族からのヒアリングを行いましたが、判決の通り、遅くとも15時半には切迫した危機が迫っていることが認識でき、裏山に逃がさなくてはならなかったわけですし、逃げられました。

 

川に向かって逃げたわけですが、川を津波が遡上することは常識で、津波からの避難で川に近いところに逃げるということはそもそもあり得ません。

 

裏山はがけ崩れの危険があったというのは後付けの理屈で、結局裏山は何ともなく、子供たちも安全に簡単に登っていた山でした。

 

仙台地裁の判決は、極めて限定的に学校や行政の責任を認定しており、高裁でひっくり返る可能性自体が薄いのではないかと考えます。これは過去のこうした裁判の判例から言えます。

 

となると、控訴はいたずらにご遺族の苦しみを強めるだけです。

 

 

『大川小訴訟、県も控訴へ』(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/20161031-OYT1T50065.html