文部省の天然記念物指定と日本犬保存運動によって消えゆく日本犬が救われた頃、外地の在来犬たちも消滅の危機に瀕していました。

朝鮮半島を訪れた日本犬保存会の板垣四郎教授は、現地の状況について下記のように伝えています。

 

朝鮮總督府の朝鮮報國畜産大會の講師に招かれ、約三週間朝鮮各地の畜産を視察して十一月下旬歸京した。

犬は釜山から自動車で慶州を訪づれた際に自動車の窓から地犬らしいものを多數見かけたが、中には體高一尺六七寸の中型犬の身體のガツチリした却々優秀らしい犬もゐた。

しかし土地の人はもう純粋の朝鮮犬は山中に行かねば殆んど見られないと云つてゐたとのことである。

「人の噂・犬の噂」より

 

朝鮮総督府が珍島犬と豊山犬を「朝鮮宝物古蹟名勝天然記念物第53号」に指定したのは、昭和13年のことでした。

しかしこれは逆効果となり、「高値で売れる」と珍島へ押しかけたペット商が犬を買い漁る騒ぎになったとか。