今年も半分が過ぎてしまい、関連各社の株主総会に参加するも健闘している場合はシャンシャン総会で円満に散会できるのですが気息奄々状態の場合は地獄のような空気にいたたまれなくなり、経営陣への責任を問いたいけれど意気消沈している姿に追い討ちをかけるのも如何なものかと悩んだり。

各業界でイロイロとヒアリングしても、今以上に状況が悪化しそうな情報ばかりです。数年間は五里霧中暗中模索が続くのでしょう。弊社も遭難しなければよいのですが。

あちこちのM&A仲介会社から毎日のように届くメールを迷惑フォルダへ叩き込みながら、これだけの数の企業が事業継承に悩んでいるんだなと暗い気持ちになる今日この頃。

 

庭を掘ったら石油でも湧いてこねえかなー。的な心境のイメージ図

狂犬病豫防注射の異状に就いて

質問者・中野區 醫學士 尾形興

 

【問】

収容中の畜犬が三週間程前に狂犬病の豫防注射を受けた處が、その後異状を呈し狂犬病のやうな疑もあります。豫防注射の爲、狂犬病が發生しその犬が人間を嚙傷した場合、人間に狂犬病の傳染する事がありますか。その他狂犬病に關する御意見を伺い度いと思ひます。

 

【答】

犬が狂犬病豫防注射を施行した爲、注射後元氣無く食慾が不振となり、或は非常に興奮したり又歩行が困難となり、漸次痩衰ろへ、腦神經衰弱の如き症状を起こすやうな場合もある。

之は注射に依る特殊の反應に起因する爲であるが、多くの場合その犬に寄生蟲、例へば蛔蟲、十二指腸蟲、條蟲等の寄生してゐる爲めその寄生蟲が毒素を分泌する爲、以上のやうな色々の症状を起こす場合がある。

そういふやうな害蟲の寄生してゐるのを知らずに豫防注射をした場合、以上のやうな症状が突發したと云ふ場合が多いのである。

この症状も注射に依る反應に過ぎないので、狂犬病が發生したのではない。

然し乍ら狂犬病の豫防藥そのものに中毒する場合もあるから、狂犬病に似よつた症状を呈してゐる場合が多いのである。

時には人間が狂犬病の豫防注射を施して施行後、特異体質の爲め中毒し鬱狂性の狂犬病のやうな症状を呈する場合もある。

畜犬でも警視廳に於て春季狂犬病豫防注射を行ふ四萬頭の畜犬の中から五、六頭乃至十頭位そういふ症状を起す場合を見受けるのでありますが、狂犬病の豫防注射をした爲め發生したとか、傳染したとか云ふ事は學理上無い事である。

然し乍らこういふ場合も又考へられる點である。

或る犬が病毒をもつてゐてそれを感染し、潜伏して居つた場合、偶然その豫防注射を受けた爲め發病を早く誘發したと云ふ場合もあるやうであります。

その場合は狂犬病が潜伏してゐて注射の爲め誘發されて發病したのであるが、之は前に嚙傷された時に傳染したものと見做さなければならない。

然し乍ら動物は狂犬病發病後は一週間乃至十日間で必ず死ぬものである。

假りに狂犬病の疑ひある犬に嚙傷された場合もその後十日以上二週間も其の犬が死ななかつた場合は、其の犬は狂犬病で無かつたことを斷言する事が出來るのである。

そしてその嚙傷された動機が被害者が惡戯した場合であるか又不注意に依る場合か、或は交通中突然嚙傷せられたものであるかどうかと云ふ事を良く考へる必要がある。

それに依つても畧、狂犬病であるかどうかが素人でも想像つく事と思ひます。

 

回答者 警視廳獸醫師 荒木芳蔵「?おたづね―おこたへ!」より

「満州事変を機に関東軍の軍犬配備が拡大し、調達窓口として帝国軍用犬協会が設立された」という史実について、何で陸軍省が犬の配備なんかに少なからぬ国家予算を割き、シェパードの国内繁殖へ注力したのか?そのカネと手間は軍馬の補充に回せばいいじゃないか。……という部分に関する説明はなされていません。

当初はハンドラーの育成施設もなく、調達システムも確立されておらず、軍馬のオマケ程度の存在だった日本の軍犬。

満州事変後に民間ペット界を調達資源母体化し、本格配備へと舵を切るその過渡期における陸軍省の意向はどのようなものだったのか。荒木貞夫陸軍大臣と日本シェパード倶楽部の接近を仲介し、軍犬報国運動を企画立案した築山砲兵大尉による「軍事機密だから口外できないよ」的な思わせぶりのアレコレをどうぞ。その口調から、歩兵学校軍犬育成所と関東軍軍犬育成所の設立、日本シェパード倶樂部の調達窓口化計画は水面下で進んでいたようですね。

 

 

「軍用犬に對する軍部(主として陸軍省)の意嚮」は誰しも聴き度いところであらう。小生亦其一人である。

既に大臣賞牌や陸軍賞を與へられた一事でも犬の軍用的價値を認識せられたる事は百パーセント確かである。然るに軍部に於ける施設其他に於て未だ具體化したるものが尠い。

之を以て再び認識の程度を疑ふ説さへ生ぜんとして居る。

抑々有事の日、國軍に必要なる犬(主としてシエパード)の頭數は開戰と同時に一萬頭内外を戰場へ送るを要すると愚考する。一萬頭の良き犬を得んがためには少くも十萬頭を國内に存在せしめ置くを要す。

之れがためには平時より次の如き方法を以て補充、訓練をなしあるを要す。

一、軍部に於ける研究、補充、訓練機關(例へば軍用犬補充訓練所、或は各聯隊に軍用犬班)の設置。

二、民間の飼育訓練を保護奬勵。

之れが實現については前者は豫算を必要とし、後者は必ずしも豫算を必要としない(必要とするも極めて僅少にて足る)。豫算を必要とするものは軍部のみが立案しても議會の協賛を經なくては實現し得ざる事申す迄もないのであるが、豫算を特に必要としないものは直に着手し得る如く想はれる。

然るに實現しないものあるは今尚愼重に研究せられつゝあるものと察するより外は無い。

次に(一)の場合に就いて理論的に考jへて見れば、研究を主としたる機關を設くる案と直に軍隊に軍用犬班を設置せんとする案とがある。その何れに就て立案せられつゝありや、或は兩者共立案せれあらざるや。

換言せば何等實現性なきや等、一切は未だ軍事の機密に属し吾人の知る能はざるところである。

而し乍ら愚見を述ぶれば、今日我が國軍に於ては既に大部の研究を遂げ、今や軍隊に飼育訓練せしむる時に到達せるに非るか、歩兵學校の軍用犬研究の結果は如何、世界大戰の實績は如何。又今日世界各國に於ける定説は如何。

之等を總合せば、何種の犬が軍用に最も適し、其飼養、管理、訓練等は如何にすべきや等は殆んど明瞭である。勿論研究は必要である。

故に軍隊に補充すると共に研究機關をも併せ設くる事は最も歡迎しなくてはならない。

私は我が國軍に於ては殆んどシエパードと定めるがよいと思ふ(前述の十萬頭と申したのも主としてシエパードを指すのである)。

その理由には二つある。

即(一)シエパードは軍用犬として最適なる事は既に折紙付きある。

(二)我が國の在來種にて軍用適種犬は無い。どうせ新しく輸入するものならば試驗済みのものがよろしい。

外國に在りてはその國に存在する在來種が直に軍用適種犬たるものが尠くないので、我が國とは状況を異にして居る事を忘れてはならない。

シエパード以外の種類も私は排斥はしない。而し特に推奬もしない。

軍用犬としてシエパード以外のものが混つても差支はないと思ふ。

以上記したところを讀んで見ると結局「掴みどころ」が無い。而し近い將來に於て何か實現した事項があつたならば、夫れが小生の記述のどの部分に當つて居るかを玩味して戴いて「ハハア」と思はれる節があれば、それが即ち此記事の「掴み所」なのである?

 

NSCの發展は即ちシエパードの發展を意味するので、誠に御同慶に堪へない。五月二十二日甲子園ホテルに於ける茶話會に、久保理事長と伊藤理事が御出席になつた機會に「關西支部」を設置せられし由、又朝鮮にも青島にも追々支部設置の機運に在るとの事。話だけでも愉快である。

斯うなつて來ると、益々メンバー諸氏の御自重を祈らなくてはならない―政友會の三百三名とならない様に―又理事諸氏の責務は一層加重せられたる事を僭越乍ら想ふのである。

次は日本國内のみならず世界的に活躍せられむ事を切望する。之れがため先づ獨逸のSV、DFH、PVZ等や英、米のケネルクラブ等と密接なる連絡を保つ様にし、將來はNSCの標準を以て所謂「日本式シエパード」を作り、本家本元の連中を「アツ」と云はして貰ひ度い―、恰も今日の總ての文化の如く。

以上は何處かで聞きかじつた一部分です。妄言多謝。

 

築山博一砲兵大尉「感想(昭和8年)」より

今春當地に流行せしデイステムパーは、熾烈なる傳染力を有し、病勢亦相當に強く、當地に於て未だ嘗て見ざりしところにして、少數ながら、死の轉歸を見たるものを出した。

凡そ傳染病は大流行の初期に於て病勢強きものなるを以て、當地は數年來流行を見ざりし爲め、特に傳染力の強かりしものと思はるる。

今流行の状況を見るに、本年一月三十日に初發患犬を發見し、越へて二月二十六日第二の患犬を見、三月中旬に至て猖獗を極め、四月中旬に及んで殆んど終熄を見た。

最初よりの發生頭數は、余に診斷を托されしもののみにても九十九頭に達し、其内死亡したるもの十頭、即ち一割に及ぶ。

右九十九頭を病の輕重に依り區分すれば

二―七日 一〇頭

重症

一ヶ月位 恢復 三頭

中等症

二―三週間 同 三〇頭

輕症

五―十日位 同 五六頭

計 九九頭

 

死亡率は從來本症の死亡率五〇パーセントと稱されたるに比すれば、好成績なりしが、今回の實驗に依れば初期に方つて適當の處置を講ずることを得たらんには二、三頭を除くの外は全部治癒せしむるを得たるべしと信ず。

 

病型

今春のデイステムパーを病型に依り分てば

皮膚型 三 他型合併

神經型 五(死二)同

顎下淋巴線型 二(死二)同

呼吸器型 大部分 同

消化器型 約半數 同

鼻出血型 一 同

 

右は何れも二、三種類を併合したるものにて單獨に發生したるものにあらず。其内顎下淋巴線系と稱するは、余の初めて見たるものにして、最初テムパーと氣附かざりしが、解剖の結果判明し、尚其後一頭發生したるによりテムパーなることを明かにするを得たり。

今春のテムパーに皮膚型少く、僅に三頭を見たるのみ。又神經型の少なかりしは幸なりき。眼デイステムパーとも稱すべき甚しき症状を呈するもの少く、約二十頭の眼症を見たり。鼻漏を出すものも少く、多くは一見テムパーにあらざるやと思はるゝ如く、鼻漏なく眼も亦變状なきもの多かりき。

呼吸器型は多くは輕度の氣管支加答兒位のもおんいして、毛細氣管支炎、又は肺炎に至りたるものは極めて少し。

消化器型も消化不良程度のもの多く、血便粘液便を出すもの少數なり。鼻出血型とせしは呼吸器消化器は冒され居るは勿論なるも、鼻出血及鼻漏の甚しきものありたる爲め、珍しき症状と認め殊に一型として擧げたるものなり。

今回のテムパーに依て死に至りたるは、殆んど肺炎を發症したる場合に限り、其病型を見るに左の如し。

 

一、最初より肺炎を起したるもの 

一頭(約二日の經過)

二、肺炎と腸出血と同時に發せしもの 

一頭(約六日間)

三、呼吸器消化器神經型を發したるもの 

二頭(約一週間)

四、呼吸器消化器を冒され、慢性の經過を取りたるもの。即ち從來の典型的テムパーにして最後に肺炎を發生せり 

五頭(約一ヶ月)

 

治療法に就て

本病の病原體は、未だ適確に發見せられざるが故に、免疫血清は確實ならず、藥液としてはバイエルのトリパンフラービン又はトリパンブラウ称用され、最近目下留學中の釜山血清所赤澤技師に依り、バイエルのオムナヂン称用せられし爲め、余も亦之を試用したるに、其効力は從來の藥品中最良なることを實驗したり。

最初は餘り高價なる爲め少量を用ひしが、結果面白からず。相當の量を數回に應用すれば殆んど治癒すると稱するも不可なるべし。今後安價にして之に劣らざる國産品の出現を望むや切なり。

次にトリパンブラウも相當効力ありと信ず。治療と同時に豫防に効力あるものゝ如し。トリパンフラービンはピロピラズマ症に使用したことあるも、本病には試用せざりし爲、遺憾ながら其効果に就き知ることを得ざりき。

茲に面白き事實の存するは、昨年ダニ熱に罹りて治癒したる犬にして、今回のテムパーに冒されたるもの無きを知り得たる事にして、今回テムパーの犬を解剖するに脾臓甚しく腫張し約三倍にして、ピロプラズマ症の場合に於ける脾臓と同様なり。

或はダニ熱により脾臓に抵抗力を生じたる結果、テムパーに罹ることなきを得たるにあらざるか。

然らざればダニ熱に對して施したるトリパンブラウの注射が今効果を存するにあらずやとも考へらるゝも、斯くては餘りに効力の大なるに不信を抱かしむ。

近時トリパンフラービンに於ては治療のみならず、相當長期の豫防に効あることを發見せられ、斯界の問題となるに見て、或はトリパンブラウも亦長期に渉つて豫防の効あるにあらざるか、兎に角興味ある研究問題にして、今後の實驗報告を待つ次第なり。

 

青島シェパードドッグ倶楽部・最上達夫「青島に流行せしデイステムパーに就て」より

ドイツから来た牧羊犬については「アルセイシャン・ウルフドッグ」「独逸番羊犬」「セッフェルフンド」「セファード」などと名称が大混乱していたものの、昭和3年の日本シェパード倶樂部設立を機に「ジャーマン・シェパード・ドッグ」へ統一。

しかしその後も、名称を巡ってイロイロなクレームがありました。

 

 

近來會誌上にも、他の雜誌上にも、シエパードのことをS犬とか、シエパード界のことをS犬界とか書かれてゐるのを見るが、随分面白くない言葉を使つたものだ。

如何に急テンポの世の中でもシエパードはシエパードと書いたらどんなもんでせう。

過般甲子園ホテルで關西茶話會が開かれた節、この話が持ち上がつたが、實際この位耳ざわりの言葉はないから以後は相戒めて使ふことを止めやうと申合せたが、集會されない方にも御同意を願いたいものです。

NSCが創設當初にこの犬種のことをシエパードと呼ぶことに申合せてあるのですから、NSCの會員だけでも變な呼び方をすることは愼しまれたいものであります。

 

日本シェパード倶樂部「近頃耳ざはりのこと」より

誰もが直視したがらない、不要犬の殺処分問題。その世界にも歴史があり、試行錯誤と紆余曲折を経てきました。

昭和初期に農商務省から内務省へ移管された狂犬病対策は、傘下である警察の畜犬行政へと統合されます。地域の警察は駆除業者への委託で野犬狩りを実施し、駆除野犬の遺骸は三味線皮としてリサイクルされていました(ちなみに猫の三味線皮はペット泥棒が供給源で、「犬釣り」「猫釣り」と呼ばれたペットの大量盗難事件がたびたび報道されています)。

野犬狩りは極めて危険な作業で、犬に咬まれたのが原因で狂犬病感染による殉職者が続出。また、戦時体制下のペット毛皮献納運動にも利用されるなど、社会の暗部を押し付けられる業務でもありました。

しかも遺骸の処理過程で犬肉の横流しが相次ぎ、それが戦後も繰り返されたことで厚生省は昭和42年に遺骸の焼却処理を義務化。野犬狩りも業者委託から行政職員へ業務移管し、欧米のマスコミが問題視したのを機に撲殺処理から炭酸ガス安楽死措置へ移行。現代へと至ります。

戦前の野犬狩り制度について、警察側の解説をどうぞ。

 

捕獲野犬に就て

質問者・東京日日新聞記者 K生

 

【問】

野犬捕獲に使用するところの經費に就いて伺ひ度いと思ひますが。

【答】

野犬を捕獲すると云ふ目的は狂犬病を豫防する爲でありまして、現在では内務省の所管としてその運動をやつて居ります。その經費に就いても内務省と東京府とが犬の税金を徴収してゐる關係上、兩方から毎年相當の經費を支出して狂犬病豫防に努めて居ます。

 

【問】

野犬を捕獲するに就いての方法及びその處置に就いて……。

【答】

現在警視廳に於て用いてゐる方法は、毎日個々の組の人夫が東京の新市及び舊市に亘つて各方面を分擔して廻つております。

人夫の捕獲方法については縄の捕縄を以てするのと針金の輪をもつて首にひつかける方法とある。

捕獲した犬は滿三ヶ日繋留箱の中に繋留して置いて、それ迄に飼養主の出て來ない場合は三ヶ所の化製所(※家畜処理施設)に分配して撲殺するか、或は學術研究の爲病院や大學に送つて使用せしめる事を許してゐる。

最も捕獲の際には必ずその所轄警察署の衛生掛り或は受持巡査立會の下に捕獲するのであるから、畜犬票の住所の判明して居る犬は無斷で持つて來る事は絶對に無いのである。

その捕獲した犬は一ヶ年を通じて二萬四、五千頭に上つてゐる。

それ以外に春秋二季の野犬狩り、或は廢犬(※飼育放棄されたペット)の買上げを行つておる。その買上げ値段は成犬四十錢、小犬十錢として、各警察署で之を買上げ帝る。それを全部三ヶ所の化製所に送るのであります。

捕獲された犬の住所の判つた場合は何時でも無償で下渡すことになつてゐる。

捕獲した野犬の處置に就いては畜主の無いものは病院亦は學校の研究用に供し、それ以外のものは全部撲殺しておりますが、それは余り悲惨なやり方であると云ふので、人道會のバーネット夫人(※在日アメリカ大使館付武官・バーネット大佐の夫人)その他の方から殺犬用の箱を寄附されたので、現在はその箱の中に燃料用の瓦斯を通して窒息せしめる方法を採つておりますが、然し瓦斯の窒息方法は二、三分から五、六分はどうしてもかゝるが、棍棒で一撃を與へて處置する方が忽にして殺すことが出來るので、却つてらくに死ねると思ひます。

※バーネット夫人が警視庁へ寄贈した炭酸ガスチャンバーは、経費上の問題で夫人のアメリカ帰国後に廃止されました。

 

【問】

屍体の皮、肉骨等の利用方法並にその價格等に就いて……。

【答】

殺したその皮は三味線の皮となり、製造所に於ける値段は大体六寸四方の二枚で三味線一丁分となり、それが一丁分約十五錢から二十錢位である。

大きい犬になると五、六丁分はとれ、その中は小犬もあるから平均三丁分位はとれるやうである。

それを一ヶ年約三萬頭の犬を捕獲したとしても一萬参千五百圓の金高となり、今では三味線の皮は殆ど野犬の皮で餘程良いもので無いと猫の皮を使用しない。

皮を取つた後の肉からしぼつた脂肪は石鹼の材料と成り、之が一頭平均十錢位となり、これ丈けでも一ヶ年三千圓位となる計算である。

脂肪を採つた肉や骨臓物類は全部肥料會社に送つて肥料に製造しておる。

 

【問】

捕獲人夫の収入額に就いて……

【答】

人夫は一組三人づゝとなつており、警視廳の直營で平均一日二圓宛の日當を拂つてゐる。二人で捕獲して一人は箱車を引くのである。

こういふ組が八組もあり、之等の人夫は何れも三ヶ所の化製所の方から雇はれて、それを警視廳の方で身許調査をして其の上で使用してゐる。

人夫一ヶ月の収入は警視廳よりの手當一圓と、捕獲一頭毎に十錢づつ奬勵金を與へられて居り、皮の収入共合計して少い月でも五、六十錢、多い月は百圓位になるのである。

 

野犬は何れも斯くの如く致しますが、お金持の家に飼はれた恵まれた犬等は死んだ後も多摩に犬の埋葬墓地がありまして、そこに埋葬されるのであります。

この墓地も多摩と板橋の志村と大泉の三ヶ所があり、何れも埋葬員が鄭重に埋葬し供養をしてゐる(※大泉動物霊園は火葬施設も保有していました)。

その供養料の如きも一頭について小さいのは一圓五十錢位から、大きいのになると五圓位迄あり、特別となると十圓位のもある。

春秋二季の彼岸には僧侶が丁寧に供養し、中には五十圓或は百圓もかけてミカゲ石の立派な墓をつくり、愛犬ジヨンの墓等と彫まれてゐるのもある。

殊に花柳界の方等は自分の子供や兄弟にでも別れたやうな氣持ちとなり、月一、二回は必ず自動車でお参りに來て、線香をあげてゐると云ふやうなことをしば〃聞いて居ります。

 

回答者 警視廳獸醫師 荒木芳蔵「?おたづね―おこたへ!」より

生年月日 大正10年頃

犬種 不明

性別 不明

地域 東京府

飼主 元内務部長 山本理一氏

 

ジステンパーやフィラリアの治療法がなかった時代、関東大震災も経験しながら14歳の長寿を全うしたのですから、ホシは大切に飼われていたのですね。

 

【問】

畜犬ホシ號十四才にて老齢の爲め死去せるも、該犬は長年家族の一員として忠實に畜犬としての任務を果したるため、家族一同が是非自宅の庭園の一隅に一部改葬を願出で朝夕燒香して愛犬の靈をなぐさめ度く希望し居れば、一部改葬願出の儀許可せられ度し。

 

【答】

一旦埋葬した屍獸も其事情に依つては之を改葬し得ることが出來るのであります。

之は大正十二年三月警視廳令第一號獸取締規則第十二條第二項に基き所轄警察署長の許可をへた場合は差支無い事に成つてゐる。

それは本人の意志が動物愛護に依り愛犬が、永年家族の一員として忠實に任務を果して居つたと云ふ實に愛情のこもつて居る事であり、又之を許す事に依つて人類自然の愛情を發揚し、風教上から見ても最も良い點であると思ひますので、早速その旨所轄警察署長の衛生係に申出られたい。

そうすると衛生係の方では早速一部改葬許可方を取りはからいます。

 

警視廳獸醫課 荒木芳蔵(昭和9年)

第5回展覧会でイロイロ注意事項を周知していたけど全然守れていないやんけ、今年はちゃんとしろよ的なクレームについて。

 

 

毎日お寒いでは御座いません?

いくら寒くても嬉々としてたわむれる愛犬を見ては寒さも、あまり感じません。

さて、昭和八年の展覧會も日一日と近くなつております。どうぞそれに先だち、血統書のなき犬は、出陳を許さぬようにしていたゞきたい。

これは前から、そんな話は會報によく書いてありますが、なか〃實行が出來にくいらしいです。惡く思えば、たゞあんな事を會報に書いて金を取るたくらみかと思われます。

第五展の時も二月、三月になると又してもこんなような事が書いてあるので、ほんとかと思つて、急いで手配して、當日になれば血統書の血の字もでません。

どうぞ今年は是非とも血統書なる物を出陳犬の横にでもかけたなら、どれだけ皆さんの爲に参考になりわすまいかと思ひます。

展覧會こそ犬なり、主人なりの、一生の晴になるのであるから堂々とそれくらいの事はNSCとしても、やつてよかろうと思ひます。

せつかく活動(※活動写真。映画のこと)に行くのをしまつしてためた五十錢を拂つて行くものの爲に取つて、たゞ犬の顔ばかりをながめていては、なんの事やら一寸わかりません。

血統書でもかゝげてあれば非常に参考になると思ひます。

審査も内地産、未成犬、成犬と、輸入犬は格別に審査をしていたゞきたい。なるたけ早く審査にかゝつて、早く、發表をして、皆様の前で入賞犬だけならべてともに喜んでもらつたら、よいでしようか。

いつも發表がおそいので、どの犬がどんなになつたのかは會員外の愛犬家は、非常に困ります。どうぞこれは一寸かんじた事がありましたから筆を執りました。

NSCとしてもう少し權威があつてほしいと思ひます。

 

東京 一メンバー

 

満州事変後に開催されたNSCの展覧会は、陸軍省の後援をうけた初のイベントとなりました。これを機にNSC内部の親軍派が台頭、内部分裂の果てに帝国軍用犬協会の設立へと至ります。

 

會報十二月號で豫告してありました通り、來る三月二十日(日曜日)に上野公園兩大師(※開山堂)側約千坪を區劃して之に會場を設け、NSC第五回展覧會を開催することに決定いたしました。

實は上野動物園側の廣場を會場に當てる豫定でしたが、目下不忍池の浚渫土を盛つておりますので、それまでに乾かないと困ると思つて前記兩大師と決定いたしました。

併しその當日までに其場所が用ひられるやうなれば動物園前に變更いたします。其節は御通知いたしますが、大體兩大師側と御承知を願ひます。

會場の兩大師側は上野驛公園入口を見晴臺に出て線路に並行して眞直に鶯谷の方面へ進んだ所です。

今年は昨年の通り久邇宮朝融王殿下の優勝盃が下賜されます。又朝倉文夫氏作のトロフヰーも入賞犬に授與されます。

殊に今回は軍用適種犬の保護奬勵の爲に、陸軍大臣が臨場されまして賞牌を下附されることに略當局との諒解が出來て居りますから、決定次第御通知いたします。

會員は奮つて御出陳を願ひます。萬一雨天の際は翌二十一日(春季皇靈祭)に延期します。翌二十一日は晴雨に拘らず斷行いたします。

◆申込はお早く

第五回展へ出陳される方は御手許へ差上げました申込書へ適當に御記入の上、至急事務所へ御申込下さい。申込順にベンチの順序を決めることゝなりますからお早く申込まれる方が都合のよい所へ出陳されるやうになると思ひます。

◆出犬者は血統書を

出犬される方は至急血統を登録して、血統書を御持参なさるやうにして下さい。會員はNSC登録の血統書を持ことが義務であるといふお考を持つて頂きたいと思ひます。

尚本年は審査の前に一應血統書を拝見することゝなりませう。

出犬されない方も、此際至急系統を登録して下さい。今の中に系統を明かにして置かないと、取り返しがつかないやうに混雜してしまゐます。

◆時間を勵行して下さい

當日は午前九時から開場します。出犬者はその時間前に入場するやうにして下さい。一時間以上遅れた方は申込順は先でもベンチの順序を取り換えられることがあります。

審査發表後も閉會までは出陳犬を連れ歸らないやうにして下さい。例へ入賞しなくとも他の會に見られるやうに醜い態度がないやうに御願ひいたします。

NSCのメンバーは最後まで紳士的態度でありたいものです。

◆御願

三月二十日の展覧會に對する御感想を、是非お伺ひいたし度いものです。假令十行でもよろしい。

四月五日までに御投稿を願ひます。

 

狂犬病とは如何な病か

狂犬病とは名前が示す通り傳染病で、吾々人間を始め牛、馬、羊、豚、猫、鳥類にも傳染し、一旦發病したときは一週間位で必度死ぬと言ふ極めて恐ろしい病である。

人が此の病に罹ると水を恐れるから、一名恐水病とも謂ふ。

 

病原及傳染經路

此の病は現代の顕微鏡では見る事の出來ない微生物で、狂犬の唾液の中にあつて狂犬に咬まれると其の傷口からはいるのである。

狂犬に咬まれて豫防の手當をしないときは、通常小供では二ヶ月位、大人では三ヶ月位で發病する。

 

人が狂犬病に罹つたときの症状

人が狂犬に咬まれると、發病に先立つて傷口に疼痛、痒痛を感じ、輕い熱が出て心が沈み、一兩日經つと咽喉筋に痙攣を起こし唾液を嚥下ことが出來なくなり、水を非常に恐れて水を見たり水の音を聞くのさへ恐がり、聲は嗄れて犬の吼える様な聲になる。

此の症状が半日か二、三日續くと全身が痲痺て昏睡状態となり、結局心臓麻痺で死ぬのである。

 

犬が狂犬病に罹つたときの症状

犬が狂犬に咬まれると、通常三週間位經つてから急に性質が變り、何となく落付かず怒り易くなり、食慾は減じて却つて草、紙、木片、土石等の異物を喰ふ様になる。

段々病が進むと眼は恐しく輝き、聲は嗄れ、人畜の區別なく咬付き全く狂躁状態になり、それから二、三日經つと全く疲れ切つて痩せ衰へ、舌を口外に垂らして涎を流し、腰が拔けて終に死ぬのである。

 

狂犬病の發生と被害の状況

東京府下で最近三年間に狂犬病に罹つた犬の數と狂犬に咬まれた人の數は次の通りである。

年度・狂犬病に罹つた犬の數・狂犬に咬まれた人の數

大正十三年 七二六・九五三

大正十四年 六〇一・七〇〇

大正十五年/昭和元年 三八五・四五五

同二年 九六・九六

 

狂犬病の豫防

それならどうしたら此の恐ろしい狂犬病が豫防出來るかと言へば「注射しない犬を無くすこと」である。それがためには、無届の畜犬と野犬とが居なくなる様にしなければならぬ。其れ故警視廳では届出の取締や、畜犬の豫防注射の普及を圖り、又仔犬の買上げや野犬の捕獲など色々勵行して居るが、御互に次の事を守つて頂きたい。

イ、届出をすること

犬を飼つたとき、仔犬が生れたときは速かに警察署に届出て貰ひたい。

ロ、豫防注射を受けること

犬を飼つたら直ぐ豫防注射を受け、其の後も毎年一回は受けなければならぬ。届出のしてある犬には毎年春秋の一回警視廳から獸醫師が各署を廻つて無料で注射を行つてゐる。

豫防週間中には各署で無料で行つてゐるから、進んで注射を受けて貰ひたい。

ハ、繋いで置くこと

繋ぎ飼ひは犬が狂犬になる原因などゝ誤解をして居る人があるが、畜犬は狂犬に咬まれなければ決して發病はしない。放ち飼ひは狂犬に咬まれる原因である。

ニ、犬の様子に氣を付けること

常に畜犬の様子に氣を付けて、少しでも異状があれば附近の獸醫師に診て貰はねばならぬ。

ホ、捕獲の邪魔をしないこと

野犬は狂犬病の原因であるから、警視廳では毎日各所に捕獲人夫を廻して居るのであるが、可愛想だなどゝ言つて犬を隠したり逃がしたりしてはならぬ。

ヘ、仔犬を放棄ぬこと

仔犬を放棄ることは野犬を増加することになるから絶對にすてゝはならぬ。飼ふ心算のない仔犬は警察署に相談して早く處置して貰ひたい。

犬に咬まれた時の心得

イ、人が咬まれたとき

人が犬に咬まれたときは、直ぐに醫師の手當を受けなければならぬ。醫師が遠い様な場合には傷口を酢、夏蜜柑の汁又はクレヲリンの五十倍液で充分に消毒をして置いてから醫師の手當を受けたがよい。

右の手當をすませたら直ぐに警察署か派出所又は駐在所へ咬まれた事を届出て貰ひたい。そうすると警視廳では其の犬を檢診した上で狂犬であるか否かをお知らせする。

咬んだ犬が狂犬であると定つたときには直ぐに豫防注射を受けねばならぬ。此の注射は十八日間連續して一日も缺かさないで受けなければ効果がない。

豫防注射は傳染病研究所(芝區金臺町電車日吉坂上)、北里研究所(芝區白金三光町電車光林寺前下車)で毎日施行して居る。又場合によつては附近の開業醫師に頼んでもよい。

ロ、畜犬が咬まれたとき

畜犬が他の犬に咬まれたときは、附近の獸醫師で豫防注射を受け、獸醫師が遠い場合は其の傷口を酢又はクレヲリンの五十倍液で消毒をして置いてから豫防注射を受けたが良い。此の注射は二、三日置きに二、三回受けなければ効果がない。

 

附記

前記の通り狂犬病は官の取締に依つて甚だ喜ばしい成績を表す様になりました事は、愛犬家一同の感謝致し居る所と存じます。

然しながら例へ少數にても被害があると云ふ事は、未だ極味の徹底を缺いて居る爲かと思ひます。

吾人は將來一頭にても此の如き病犬の爲に被害を蒙らぬ迄に發達せしめたいと思ふのであります。愛犬家は相互に協力し、其實現の一日も速かなる様勉められん事を切に御願ひいたします。

 

警視廳「狂犬病の豫防に就て」より