東京の酒井醫院々長ドクト ル酒井廣作氏、同弘子夫人は毎年夫婦連れの狩獵家として名を知られ、今年も獵期の近づくと共に準備おさ〃怠りなく、自慢の愛犬チヤーリーはすでに九月中旬から府下西多摩郡東秋留村小川獵師澤井傳二方へ委託して訓練中、去る八日佛暁突然行方不明となつた。
この報に驚いた酒井夫妻は百方手をつくして捜査中、十二日にいたり前記東秋留村の山林内に撲殺されて痛ましい姿となつて發見され、夫妻は十五日の初獵に出かける氣持も打くだかれ悲歎に暮れてゐる。
府下五日市署では撲殺被疑者として米澤某を檢擧取調中であるが、同人は同家の養兎のわなにかゝつたのを名犬とは知らず撲殺、遺棄したと申立てゐる。
『罠禍』より