北海道では橇を曳き、獨逸では盲人の手引をし、又内地に於ても肉屋へ便に行くのやら小児車を曳くのやら、主人の御弁当を勤め先へ持つて行く犬もありと聞くが、之等は今の處雑種犬に多い様である。
然るに我等の軍犬は如何。
仕事の方面が違ふ、生れが高尚に出来て居る。品性が違ふわいと云へば夫れ迄だが、我々民間のアマチユアでは、番犬が本職で訓練各技は一の愛嬌に過ぎない。
此の立派な軍犬を何とか利用の途はないものか、そこで思ひ付いたのが犬の自用車だ。
と云つてまさか、乞食の真似はしたくない。然し何とか大人が充分に乗り得る小型軽便車を作り、之に乗つて市街地を立派に操縦し、一般が乗用に供する様になれば、相當スピードも出るし、又どんな小路へでも自由に這入れて昔の人力車より便利かもしれない。
今後研究を重ね、斬新なる犬曳自家用車を案出し、警察当局にも其の使用を公認して貰ひ、一般人も亦之を認識して嘲笑しない様になれば軍犬の利用は都会から先づ発展するのではあるまいか。
愚論を不顧諸君のお笑ひ迄に。

鷹取閑山「使役犬礼賛」より 昭和12年