名作 同人ゲーム『ひまわり』 iPhone版レビュー | ぐうたら学生目録

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批評もある種文学なので一応文学としてカテゴライズしました。

そんなわけで、お久しぶりです。
今回は言わずと知れた名作同人ゲーム『ひまわり』のレビューを行いたいと思います。
※ネタバレ注意!※











…星五つを最大とすると、4.5ぐらいかなと思いました。
ストーリーも秀逸で夜更かししながら進めてました。
他作品にありがちな過去の男をあっさりと捨ててしまうような、そんなこともなく、各キャラクターの個性も良く描けていたと思います。

ただ……陽一だけは……
過去を本気で取り戻したいと思わなければ、選択肢によって根底にある自身の問題を放置してしまったのにはちょっと残念というか…


明香ルートENDは、確かに前に進めていたと思いますが、他はどうも、モラトリアムの中に閉じ込められてたのでは? と…
そしてアリエスが不遇すぎて…メインヒロインじゃなかったっけ?

アクアアフターを見ると、彼はどの選択肢をとっても最終的に宇宙へと向かいます。アリエスエンド後の話では8年と長いですが、他はだいたい5年後ぐらいです。その後のアリエスも見たかったですね。ちょっと残念……。
アクアは間違いなく僕の好きなキャラですね。人間なら、孤独は誰だって嫌いです。そして彼女は不器用ですが、他のどのヒロインよりも人間臭いものを感じました。まあ、不満があるとするならば、注射の前に陽一にもちゃんと覚悟を伝えようぜ…。子供ってのは母親だけのものではないと思ったのですが。
そして明香。明香シナリオは深いですね。大人になりたい少女と子供のままでいたい少年。どのエンドよりも陽一は幸せだったと思えます。その代わり、その他の問題は放置されるわけですが……
アクアアフターでのことですが、銀河と最終的にくっつくエンドもありそうですね。
アオイエンドは、陽一にとっては最も楽な終わり。彼もまた、孤独を恐れていたことを痛感させ、逃げたいと思っていたことを象徴していたように思えます。



ここからは僕の個人的な考察とかです。

どのエンドも、誰かの幸せを対価に誰かが不幸になる。こういう三角関係の多いゲームではありがちな話ですが。
幸せってなんでしょう。陽一の人生はアオイに出会い、そして別れ、銀河によって救われます。様々な人間が重たい過去を持ちますが、その全てを変えていったのは陽一でした。人は気づかないうちに様々な影響を周囲にもたらしているものです。
アクアアフター後は多分仲睦まじく幸せなことでしょう。初夜から生だったり毎晩幸せに営んでたぐらいですから、子作りぐらいまたしそうですからね。
明香エンドで垣間見る明の本性。そこには家族想いの一面が見えました。彼もまた、不器用な人です。
大吾と明日香。大吾はアクアに対する気持ちは確かになかった(浮気性だが宇宙に来る以前に妻に指輪を作っていたから)。アクアの好きという感情が大吾に受け止められることは決してなかったでしょう。でも、最期にアクアの名前を呼んであげれば、アクアの心の鎖は静かに溶けていったことでしょう。
明日香もまた、弱い人です。ただ、彼女は過ちを犯した。成長する選択をしなかった。狂気も、そんな彼女への罰のようにも思えました。彼女自身が、自らに下す罰。嫌われることで明が宇宙を目指せるように。
アオイは? ……物語の最大の犠牲者、それは彼女です。彼女は選択を与えられないまま死ぬことになります。彼女が陽一の手を取ろうとも取らずとも。そして、奪われることとなる。
アクアルートであらわれたアオイの幻覚は、同じことを繰り返そうとしていた陽一への忠告だと僕は解釈しました。アクアの本質を知るからこその、陽一への忠告。

さあ、そして陽一。アクアが大吾への気持ちを変わらず持ち続けているのに対し、陽一はアオイを過去の事実として受け止め、前に進む決意をしました。仮にアオイがまた現れたとしても、アクア、明香の手を引くだろうと思います。
どちらが大人でしょう。きっと、どちらも大人です。大人になるということはいつまでも過去に囚われないことではない。進み続ける時間の中で確かに自分の選択をし、その責任を全うできることです。最後に下すアクアの決意は、過去の自分を超えるほどに、固いものです。

ちょいちょい出てくる指輪のくだりも良かったと思いました。あの指輪が入らなくなった時、あるいは抜けた時…、確かに成長した、という証です。





――キャラについてはまあここまでにしておいて
不満点としては
・テンポがやや悪い(日常パートが長い感覚に陥ってしまう)
・幾つかの問題が回収し切れていない
・時折シナリオが雑になる
・ミニゲームの難易度がやや高い


ですかね。音声? 声はおまけ。
キャラクター関連については参考にしたいほどよく考えられてるなと思いました。
そのうちシナリオ追加のリメイクでも出したらどうでしょうか。多分売れますよ(笑)




最終評価『泣きゲー好きはプレイ必須!』


万人受けする必要はない
もしあなたが、どうしようもない孤独を抱えているなら…
今一度『ひまわり』の物語の扉を開けて見ることをお勧めします。