財産評価基本通達24では、私道の用に供されている宅地の価額は自用地としての価額の30%で評価し、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは評価しない(=評価額はゼロ)とされています。
この解釈にあたり、例えとして【通り抜け私道】とか【行き止まり私道】という用語で説明されますが、私道の評価にあたっては、
[不特定多数の者の通行の用=通り抜け私道や、特定の者の通行の用=行き止まり私道]という単純な当てはめをするのではなく、
[通り抜けできるか行き止まりかにかかわらず、不特定多数の者の通行の用に供されているかどうか]が評価の分かれ目となります。
行き止まり私道であったとしても不特定多数の者の通行の用に供されているものには、地域等の集会所や地域センター、公園などの公共施設や商店街等への出入りに利用されている場合や、私道の一部に、公共バスの転回場、停留所が設けられている場合などが該当します。
また、特定の者の通行の用に供される通り抜け私道としては、公道から分岐しているものの、その合流地点が同一の公道であり、通り抜けのように見えるものの、結果、その私道が公道と【他の】公道とを接続している状況にない(=特定の者以外にとっては近道にもならない)場合が該当します。
さて、これだけインターネット環境が整っていると、事務所にいながら登記情報提供サービスを利用して謄本や公図、地積測量図、建物図面も入手できますし、地図や航空写真も検索できます。
まず、土地評価の準備として、名寄帳や課税台帳を用意して評価対象地の一覧がわかるようにしておきます。そして、所在地を確認するため住宅地図を入手してみると上空からみた評価対象地をイメージできるのですが、更に、その住宅地図と別に入手した公図を突き合わせてみると分かることがあります。例えば【位置指定道路】です。
住宅地図や実際には評価対象地の南側に道路があるにもかかわらず、公図では、該当する【道】がない・・・。ここで『評価対象地はこんな形をしているんだ』と気づくのですが、公道であれば通常、地番が付されていないところ、私道のため当然のように地番が付されていて、視点を変えて近隣の細切れの土地を繋げてみると、それが道を構成していることが分かります。私道です。
このとき、評価対象地が分筆されていればより簡単なのですが、評価にあたっては、1筆の土地を宅地と私道部分に分ける作業が必要になります。ようやく、前述の不特定多数の者の通行の用かどうかの判定を盛り込むことができるのですが、目で確認し思い浮かべた土地の形状と登記されている形状が一致していないことは少なくありません。
土地の評価も随分と楽になりましたが、評価の原則である【課税時期の現況】を知るには、現地調査と役所調査は欠かせません。この点、ストリートビューとか、地域によっては行政地図情報サービスなどで色々と公的な値を知ることも可能なため、中々、机から動かない、土地評価ソフトも多機能になったし、現地に行かなくてもそれなりの評価ができてしまうのが現状です。
殆どの依頼者が【税金を安くしたい】と思っていて、土地の評価であれば【減額要因を見落とさない】ことができるかどうかで、評価額はガラッと変わることもあるため現地調査と役所調査は省略できない筈ですが、机上調査だけで満足している方もいるようです。中には、時間をかけて評価額が多少下がったとしても、大幅に納税額が変わらないのであれば細かな調査を希望しない、少しでも早く片づけたいという気持ちの方もいるようです。ただ【過大評価であってはならない】【1円であっても必要のない税金は納めない】といった考え方の立場としては、そこの時間は覚悟して欲しいと感じます。
机上調査での気づきは大事で、現地調査や役所調査に繋げるためには机上調査で終わらせないこと、机上調査は万能ではないことを理解することが重要です。
今回は、私道の評価にあたり基本的な内容を確認しましたが、私道の評価は一筋縄ではいきません。次回は、さらに細かい論点をお伝えしたいと思います。
私が、初めて土地の評価に携わったのは今から25年くらい前になります。この業界に身を投じた最初の事務所所長のお手伝いということで、ただ、巻き尺の端を言われた部分にあてて、計測中は動かないように集中するだけの簡単な作業です。この時、境界確認とか間口距離とか、所謂、現地調査デビューをした訳ですが、当時は相続税のしくみも土地の評価も全く分からない素人でした。
その時から10年経って、別の事務所に転職して土地の評価をすることになったのですが、その事務所の所長は『現地調査はいらない。机上の計算でいい。お客さんは早く税額を知りたがっているんだ』・・・と。インターネット環境も整備してくれない事務所なのに、よくもそんな言い方ができたものです。本心だったのか、その後方針を改めたのかを知ることはできませんが、反面教師、今となればよい経験をしたことになります
<参考>財産評価基本通達1、24、建築基準法第42条第1項第5号