「家系図」作成する前に知っておきたい7つのポイント
先祖の秘密が暴露されることも…家系調査、依頼の心構えとは?
自分を取り巻く親類縁者との関係が明確になることから、相続について考える富裕層を中心に「家系図」への注目が高まってきています。きっかけがなければ難しい作業であるかもしれませんが、やり方次第では、江戸時代の先祖まで遡ることも可能なんです。今回は、家系調査を依頼する際の注意点について説明しようとおもいます。
家系図作成は「どこに」頼めばいいのか?
家系図の作成を請け負う業者には、家系図に関する専門知識がある業者と、ない業者があります。そのため、家系図作成を業者に依頼する際は、いくつか問い合わせて、目的に応じて上手に利用することをおすすめしまね。
では、目的とは何でしょうか?
たとえば、「とにかく保管期限が切れる前に戸籍だけ集めておきたい」という場合は、最安値の業者に戸籍集めだけをどんっ!と任せてもいいとおもいます。
「戸籍の収集」は法律により戸籍の取得できる範囲が決まっているので、どこの業者に頼んでも、ミスによる取得漏れがない限りはまったく同じです。どの業者でも最終的に依頼人に渡す戸籍の量は変わらないのです。ただミスによる取得漏れの可能性は少なくないので、問合せや資料請求を通じて、ある程度業務に精通した信頼できる業者を選んだほうがよとおもいます。
また、「戸籍調査だけじゃなく、もっと深い調査がしたい!」「巻物が欲しい!」など、目的がはっきりしていれば、それが得意な業者を探すのも一つの手です。「できることは自分でやりたいから、できないところだけやってほしい!」という場合は、専門知識がある業者に「戸籍調査」だけ頼み、「戸籍以上の調査」はアドバイスのみお願いしたり、深い専門知識がないとできないものは業者に頼み、郷土誌を読み込んだり現地に足を運んだりと、自分でできることは自分で行ったりなど、上手に使い分けることがいいでしょう。
家系図の筆耕だけを頼みたいという依頼はよくありますが、家系図の筆耕業者を探すのはとても大変なんです。家系図作成業者の他、電話帳などで代筆業や書家の先生を探し、「家系図の筆耕をやられているか?」、または「やってもらえるか?」「やってもらえるとしたらねだんはいくらくらいになるのか?」を聞いてみるといいでしょう。また、書道店に行けば書道家の先生を紹介してもらえるかもしれません。
さらに表装業者を探す場合は、インターネットで検索すれば、たくさんの表装店が見つかります(書道店でもたいてい扱っています)。表装については、普段馴染みのない場合が多いので、なるべく近くの店を探して直接行くか、電話やメールで表装に付いて詳しく聞いてから選ぶことをおすすめいたします。その際、機械表装・本表装の違いについても、詳しく聞いて検討します。「筆耕」も「表装」も可能であれば、実物の見本か、はっきりと写った写真を見せてもらうといいでしょうね。
「先祖のことを知る」のが、家系調査の醍醐味だが……
家系調査を行うと、それまで知らなかったことが判明し、喜ばれることが多々あります。その一例を紹介したいとおもいます。
ある日連絡をもらったのは、筆者の母の友人からでした。筆者の家に遊びに来たときに、サンプルの巻物を見てほしくなり、家系図の筆耕と表装の依頼を受けたのです。
家系図作成はすでに始めていて、自分で戸籍を取得し、家系図を作っていました。筆耕に入る前に自宅に伺い戸籍を見せてもらったところ、奥様の家系でもう1つ原戸籍が取得できる可能性があることが判明しました。その旨伝えて、請求してみると、うれしいことに取得することができました。
それにより、奥様のお父様に新たに二人の兄弟がいたことが判明しました。お父様の下に二人の兄弟がいたのですが、その二人は幼くして亡くなっており、奥様もお父様も、この事実を知らされずに今日まで来たようです。おそらくお父様は、幼いころに亡くなった兄弟のことを両親から聞かずにいたのでしょうね。
今まで知らなかった親戚がわかって、奥様も喜んでいました。
この時筆者は、依頼主に喜んでもらえて良かった、と思う反面、本当に良かったのかという複雑な思いも正直ありました。家系について知らされていなかった事実があるということは、なそれなりに理由があったはずです。しかし結果的に調査によってそれを暴いてしまったことになります。
こんなケースもありました。
家系調査を終了して、報告に依頼主の自宅に伺った際に、調査結果と親族から聞いていた話がまったく違う、ということがありました。特に依頼主の祖父が全国各地を転々として結婚と再婚を繰り返していた事実には驚いていました。依頼主は「あの馬鹿がぁ~」と怒りながらも、楽しそうにしていまいた。
これは、半分笑い話にもできることですが、やはり家系調査は慎重に行わなければならないと、再確認した事案のひとつでした。
昔は役所への届出が今より大雑把で、事実と戸籍の記載が違っていることがあります。未婚の娘の子供を両親の子供として届けることは、珍しくありませんでした。また役所が遠く、転籍など他の届出のついでに出生届をしたなど、正確な生年が記載されていないこともありました。
戸籍が事実なのか、伝え聞いた話が事実なのかは、わからない面もあります。しかし戸籍調査をしていると、「亡くなった母親に前夫がいた」とか、「兄妹間に子供がいた」とか、「祖母が祖父の兄弟との間に子供をもうけていた」とか……。家系調査の醍醐味は、今まで聞いたことがなかった事実を知ることですが、反面、先祖が知らせたくなかった非常にプライバシーな記載が出てくることもあるんです。
家系調査は、先祖が隠したかっただろう事実が判明するケースがあることを認識し、親族とも相談しておくことをおすすめしますね。また筆者のような業者側の心構えとしては、依頼主以外には間接的であっても調査結果は伝えないなどの、最大限の配慮が必要になると考えております。