【第2回】 28代遡ると先祖は1億人を超える!? 家系図、記し方の基本 | 家系図作成7つのポイント

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「家系図」作成する前に知っておきたい7つのポイント

 

28代遡ると先祖は1億人を超える!? 家系図、記し方の基本 

 

 

自分を取り巻く親類縁者との関係が明確になることから、相続について考える富裕層を中心に「家系図」への注目が高まってきているんです。きっかけがなければ難しい作業であるかもしれませんが、やり方次第では、江戸時代の先祖まで遡ることも可能なのです。本記事では、家系図作成代行センター株式会社代表の渡辺宗貴氏が、家系図作成の前に知っておくべき「戸籍」事情を解説致します。今回は、家系図を作る際に時代を遡るに従ってねずみ算式に増えていく先祖を、どのように記していけばいいか見ていきましょう。 

 

 

 巻物、掛け軸、冊子…家系図の様々な体裁

 

前回、家系図作成のポイントの説明に入る前に、「家系図を作成するなら今だけ」という話をいたしました(関連記事:『人知れず廃棄される!? 手遅れになる前に知るべき「戸籍」事情』)。今回から、いよいよ家系図の作成に入っていこうと思います。
 
筆者は、この仕事を始めるまでは家系図を目にする機会がありませんでした。既に家系図をお持ちの方に、家系図を巻物や掛軸に仕立てる依頼を受けることも多いのですが、代々伝わる家系図をお持ちの方が本当に羨ましく思います。

筆者の家には家系図というものが残されておらず、家系調査は戸籍に頼るしかなかったのです。自分の家系図を作ってみるとさらに興味が沸いて来て楽しくなりました。ただ、「先祖が残してくれてればよかったのになぁ」とも正直思ってしまいます。

特に筆者の地元である北海道では、明治時代あたりに本州から移住してきたケースが多く、本州に比べて家系図の残されている家が少ないケースが多いようなのです。これは人の移動が多い東京などの都心部にも当てはまることなのです。
 

■家系図の形式に特に決まりはない

 

家系図には「こうじゃなきゃだめ!!」というような決まった形はありませんので、直感的にイメージしていただければいいと思います。横向きなのが横系図(図表1)、縦向きなのが縦系図(図表2)といいます。巻物や掛軸に表装する場合はそれに応じて横か縦に表記しますが、どちらを使ってもかまわないのです。
 

 

[図表1]横系図のイメージ

 

 

[図表2]縦系図のイメージ

 

 

横系図は巻物にすることのほうが多いです。巻物は長さに制限が無く、子孫の代までどんどん書き足していけます。代々の保存まで考えた場合、横系図の巻物が用いられることが多かったようです。徳川家代々のように後の子孫が書き続けてくれるかもしれません。そして掛軸に表装するために便宜上作られたのが縦系図なのです。横系図よりも親族の相関関係が一目でわかりやすいというメリットもあります。見やすさでは掛軸にかなわないのですが、巻物を開いていくワクワク感も捨てがたいですね。
 

[図表3]親族の相関関係がわかりやすい縦系図

 

 

開いていくワクワク感がある横系図

 

 

■巻物にするべきか掛軸にするべきか

実際には、巻物にする方が7割以上です。昔から家系図といえば巻物というイメージが強いのでしょうね。また、掛軸を飾るような和室が少ないという事情もあるかと思われます。

 

巻物・掛軸の本来の用途ですが、
 
巻物……保存が主な用途。本紙(家系図などの作品)が空気に触れにくく、傷みにくい作り。また、仕立て直しをすれば紙を継ぎ足していくことができ子孫まで使うことができる
 
掛軸……装飾が主な用途。作品を補強し、飾って楽しむことが目的。またぱっと見で先祖がわかる
 
どちらにするかは目的や好みで決めて結構です。あえてアドバイスをするとすれば、普段は保管しておいて気が向いたときにちょくちょく見たいのであれば巻物の方が便利ですね。掛軸をちょくちょく広げるのは結構大変でしょうから・・・。また、和室など掛軸を飾るスペースがある場合や、親族が集まる日に飾りたいという場合は、掛軸にするといいのでしょう。
 

筆者は巻物も掛軸も両方持っていますが、猫を飼っているため残念ながら自宅には掛軸を飾っておくことができないのです。本当は、居間か廊下に飾っておいて毎日眺めたいのですが……・・・・。時々気が向いたときに巻物を開いて眺めたり、友人が来たときに見せびらかしたりしていますかね。

 

■巻物をさらに便利にした折本

折本(おりほん)、または折り帖(おりちょう)という表具方法もあります。巻物のよさである保存に向いた作りでありながら、パタパタと見開きで見ていけます。巻物は保管しておいて、普段は折本を見るという使い方が便利でしょう。

 

[図表4]折本なら本を見る感覚で家系図を楽しめる

 

 

■冊子製本という方法も

系図だけではなく、家族の歴史を文章にしたり、住んでいた土地の歴史を調べてまとめたりし、冊子にして複数冊を親族間で共有するのもいい方法だと思います。もちろん家族写真なども入れたいですね。近年ではパソコンやスマートフォンなどの普及で、より詳細なものも作れるようになりました。タブレットでいつでもみれるのもいいですね。

 

[図表5]冊子製本なら家族アルバム感覚で家系図が楽しめる

 

 

 膨大な人数の先祖…家系図でどう記せばいいのか?

 

■家系図の表記方法の基本的なルール

「こうでなければならない!」という決まりはありませんが、最低限だけのことだけは知っておくようにしましょう。

 

・夫婦は右に男性、左に女性
※夫婦を「妻=夫」というように横二重線でつなぐ書き方があります。横二重線は昭和以降に生まれた近年の表記方法です。
・養子縁組は二重線でつなぐ

 

[図表6]上:夫婦の書き方の基本 下:養子縁組の書き方

 

・その他、複雑になる部分は見やすいようにケースバイケースで書いていきます。

 

[図表7]上:後妻がいる場合 下:前妻・後妻それぞれに子どもがいる場合

 

■人物の記載範囲について

さて、自分から見てどういう続柄にあたる方を記載するかについてですが、こちらについても特に決まりはありません。家系に関わる人物には、自分、子ども、孫、父母、祖父祖母…(いわゆる直系尊属および卑属)の他に、自分の兄弟姉妹、兄弟姉妹の子ども(甥・姪)、父母の兄弟姉妹(おじ・おば)、父母の兄弟姉妹の子ども(いとこ)……・・・・などなど様々です。すべてを二次元の紙に書くのは物理的に限界があるので、直系に当たる方とその兄弟姉妹を記載するのが一般的ですね。今はパソコンを使ったソフトでかなりの人数を書き出せることもできるようにはなりましたが。

ところで、「直系」とか「尊属(そんぞく)」「卑属(ひぞく)」という言葉が出てきましたが、自分からみて親子関係の続く上の代の方が「直系尊属」で、自分からみて親子関係の続く下の代の方が「直系卑属」となります。 

 

 

 

[図表8]尊属か卑属か

 

上記が直系に当たる方々ですが、対して直系に当たらない親族を「傍系(ぼうけい)」といいます。自分の兄弟姉妹、兄弟姉妹の子ども(甥・姪)、父母の兄弟姉妹(おじ・おば)、父母の兄弟姉妹の子ども(いとこ)・・・・・・・などなどのことです。

※たとえば父母の兄弟姉妹である「おじ・おば」ですが、厳密には同じ読み方でも父母の兄は「伯父」姉は「伯母」、父母の弟は「叔父」妹は「叔母」と書くなど様々です。「いとこ」にも「従弟」「従兄弟」「従妹」「従姉妹」「従兄」「従姉」「従兄妹」・・・・・・・などいろいろとあります。

ちょっとややこしい「直系」「傍系」の話。最低限これだけ抑えればOKでしょう。詳しくは後述しますが、戸籍による家系調査を行う場合には、除籍簿の取得範囲が法律で定められていますので、直系とか傍系の知識が多少必要ですが、「自分からみて親子関係が続くのが直系尊属および卑属で、それ以外の親族が傍系」と、いうことだけを知っていただければOKですよ。
 

■調査範囲・記載範囲の決め方

前述の通り、家系図には決まった形はありませんので、調査範囲も好きなように設定していただければと思われます。

※ですが、戸籍だけはすべて取得しておかないと、いつか後悔してしまいますのですべての系統の戸籍を取ることをおすすめ致しますよ。

家系図を紙に書く場合は、複数の系統※1や家系に関わる膨大な人数※2のすべてを記載するのは物理的に困難なので、ある程度調査範囲や記載する人物の範囲を決める必要があるのです。

※1複数の系統とは?
自分に関わる直系の家系は際限なく広がります。まずは父母で2人、父母の父母で4人、父母の父母の父母で8人…と無限に広がります。これを28代続けると1億人を越えてしまうのです。

 

 


[図表9]ねずみ算式に増えていく先祖

 

 

こう考えると「人類みな兄弟」というのはあながち荒唐無稽な話ではないんだなぁ~と思いますね。

※2家系に関わる膨大な人数とは?
上記の複数の系統を傍系まで含めて考えてみます。たとえば自分の兄弟姉妹だけ見ても、兄弟姉妹とその配偶者と子ども、さらに配偶者の両親や兄弟姉妹や子どもの配偶者やその子どもや両親や………とキリがありません。こう考えると「人類みな兄弟」というのはますます荒唐無稽な話ではないのだなぁ、と思いますよね。

 

 

■調査範囲・記載範囲について

家系図を紙に書くことを考えると書く場合は、物理的な理由で一族のすべての系統や傍系の人物全てを記載するのはなかなか困難です。「こうしたらいいのでは?」と、いうおすすめをお伝えしたいと思います。それぞれ詳細を見ていきましょう。

【その1.「戸籍調査」はすべての家系・全ての範囲で】
とにかくこれは絶対やっておいた方がいいと思います。すべての家系の「戸籍調査」とは、両親で2人祖父母で4人、曾祖父母で8人…16人…と倍々に増えていくすべての戸籍をとっておくということになります。

【その2.簡易の系図ですべての家系を把握】
直系だけ抜き出すと下記のような感じになる。

 

[図表10]直系のみを記した家系図

 

右半分の父方に注目すると、筆者の(宗貴)の父が北海道北斗市茂辺地の「渡辺家」なんですが、4代前の荘兵衛さんは秋田県の「加藤家」から養子に来ておりまして、荘兵衛さんの妻マサさんも秋田県の「渡辺家」。ひいおじいさん荘太の妻は青森県の「田中家」。筆者のおばあさんユミさんは秋田県の「長﨑家」と青森県の「須藤家」との間に生まれて、北海道函館市の「村上家」の養子に入っており・・・・・・・、と、父方だけでも一人の人間からすべての家系をたどると、すごいことになるのです。

 

[図表11]図表10の父方のみを抜き出した

 

直系とその兄弟姉妹を書くと下記のような感じになります。複数系統を書く場合は、基本的に見やすい縦系図にします。

 

[図表12]複数系統記す場合のイメージ

 

 

【その3.メインの系統を詳細な系図に】

人物に情報を入れていくのですが、これも見やすい縦系図がおすすめですね。大きな方眼紙に書いてもいいですし、パソコンソフトで家系図を作成してプリントアウトしてもいいでしょうし、また、マスに名前を埋めていくタイプの家系台帳のようなものも市販されているみたいです。

人名を大きめに書き、「続柄」「生没年」は必ず。その他、判明していれば「戒名」も入れます。1~3行でその他「相続」等の情報や、なにか「事績」を入れるのもいいと思いますよ。

 

[図表13]メインの系統に詳細を書き入れた例

 

 

【おまけ 毛筆で筆耕し巻物や掛軸に!】

毛筆で筆耕し、巻物や掛軸に表装する場合を前提に話します。毛筆で筆耕する場合に使う紙は、これも特に決まりは無いので自由なのですが書道用紙の規格でいう「半切(はんせつ)」という紙のサイズが主になります。半切サイズとは35cm×135㎝の大きさで、巻物にするか掛軸にするかによって紙を横向きあるいは縦向きにして使います。半切の紙に家系図を書く場合は、たいていは自分の苗字をたどる父方一系統の調査結果で、人物の記載範囲は直系に当たる方とその兄弟姉妹です。筆者の場合は、父方渡辺家となります。

 

 

[図表14]自分の苗字をたどる父方一系統の家系図の例

 

毛筆で筆耕する場合は複数家系の調査結果や、全ての傍系を記載するのは物理的にほとんど不可能です。ですが、最大限バランスや文字の大きさを工夫すれば、二家系まででしたら半切の紙に美しく収まります。筆者の場合は、父方渡辺家と母方葛西家となります。

 

 

[図表15]2家系まで記した家系図の例(筆者のの父方渡辺家と母方葛西家)

 

 

あるいは、筆者の父方渡辺家と、妻の父方(奥さんの旧姓)玉置家という選び方もあります。縦系図にする場合も、全紙(半切の紙の倍の大きさ)を使えば二家系までちょうど美しく収まります。

 

 

[図表16]2家系まで記した家系図の例(筆者のの父方渡辺家と筆者の妻の父方玉置家)

 

 


[図表17]全紙を使った家系図の例

 

 

 

渡辺 宗貴
家系図作成代行センター株式会社代表